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インプラント・ブリッジ・入れ歯、何が違うのか

歯を1本失ったときの3つの治療を、研究の数字で比べます。あなたに合う方法を選ぶ手がかりにしてください。

①歯を失ったままにすると、何が起きるか

抜けた場所の骨は最初の1年で大きく変わり、
残った歯に負担が集まります。
早めのご相談で、残った歯と骨を守りやすくなります。

歯が1本抜けたままの歯並びの断面。両隣の歯がすき間に向かって傾き、向かい合う歯が伸びてきている様子
抜けたままだと、隣の歯が傾き、向かいの歯が伸びてくる

骨は、最初の1年でやせる

歯を失うと、支えていた顎の骨は少しずつやせます。
大きな変化は最初の1年に起きたと報告されています [1]。

残った歯に、負担が集まる

噛む力が残りの歯に集まり、隣の歯が傾く・向かいの歯が伸びることがあります。早めに補うと、歯並びと噛み合わせを保ちやすくなります。

期限はありませんが、変化は進みます。迷っている段階でのご相談が、選択肢を残しやすくします。

②インプラントとは
骨と結びつく人工の歯根

チタン製の人工の歯根を骨に埋入し、接合してから白い歯をかぶせます。
隣の歯を削る必要がないため、まわりのご自身の歯を守りやすい治療です。

チタンの人工歯根が骨と結びついていく様子を3コマで示した断面。埋入した直後から、骨が根のまわりを包んでいく
あごの骨の断面に埋入したインプラントと、その上にかぶせた歯の立体のイラスト。両隣は自分の歯
骨に埋入した根の上に、歯をかぶせる

顎の骨にチタン製の人工の歯根(インプラント体)を埋入します。骨と直接接合することを示した1960年代の報告が、治療の出発点です [2]。

上にかぶせる歯は、点検しながら使う

かぶせる歯(上部構造)は人工物のため、欠けやねじのゆるみが起きることがあります。定期的に確かめ、必要なときは修理して長く使います [3]。

天然の歯との、いちばん大きな違い

天然の歯にあるクッション「歯根膜」が、インプラントにはありません。

お手入れと定期的な確認を続けることで、長く守っていける治療です。

天然の歯とインプラントの、構造の違い

天然の歯
  • 根と骨のあいだに歯根膜(クッションとセンサー)がある
  • 歯ぐきの線維が歯に結びつき、細菌の侵入を防ぎやすい
  • 噛む力の微調整が効きやすい
  • むし歯になる
インプラント
  • 歯根膜がなく、骨と直接結びつく
  • まわりの粘膜の結びつきが弱く、炎症が骨に進みやすいため、お手入れで守る
  • 触れた感覚の手がかりが天然歯より鈍い(研究では8倍超の力で感知 [4])
  • むし歯にはならない。周囲炎はお手入れと定期検査で防ぐ
Hämmerle ら 1995 年の研究[4]をもとに作成。どちらが優れているかではなく、性質の違いを示したもの。感じ方には個人差があります。

③3つの治療法のメリット・デメリット

隣の歯を削らず、骨のやせを抑えやすい治療です。
手術を伴う自費の治療のため、条件が合う方におすすめしています。

同じ1本のすき間を補う3つの方法を並べた断面。インプラント、両隣を削って支えるブリッジ、金具をかける部分入れ歯
同じすき間を補う3つの方法(優劣ではなく、形の違い)

3つの特徴を表に並べます。

インプラント・ブリッジ・入れ歯の比較(優劣ではなく、特徴の違い)

インプラントブリッジ入れ歯
噛む力・噛み心地天然の歯に近いとされる。ただし感覚の手がかりは鈍い [4]固定式で違和感は少ない天然の歯より弱くなりやすい。慣れるまで少し時間をみる
隣の歯への影響削らない両隣の健康な歯を削って支えにするバネをかける歯に負担がかかる
顎の骨への影響骨に力が伝わるため、やせを抑えやすいとされる失った場所の骨はやせていく失った場所の骨はやせていく。長く使うと合わなくなる
手術必要。骨が足りなければ骨を増やす処置が加わることも不要不要
治療期間の目安数か月(骨と結びつくのを待つ)数週間数週間〜1か月ほど
費用自費(料金は料金表のとおり)保険が使える場合と自費がある保険が使える。自費の入れ歯もある
日々のお手入れ天然の歯と同じく毎日。1〜3か月ごとのメンテナンスで守るつなぎ目の下に汚れがたまりやすく、専用の道具が要る外して洗う。夜は外すのが基本
主なリスクインプラント周囲炎、神経の損傷、かぶせる歯の破損 [3]支えの歯のむし歯・歯周病・歯の根の破折破損、粘膜の炎症、支えの歯の負担
向かない場合顎の骨や全身の状態によっては難しいことがある。お手入れが続けにくい方両隣の歯がない、または支えにできないほど弱い違和感に慣れられない方。噛む力を強く求める方
研究の報告[3][4]をもとに整理。どの治療が合うかは、お口の状態・全身の状態・ご希望によって変わります。

インプラントを選ぶ理由

  • 隣の歯を削らない
  • 取り外しがなく、自分の歯に近く噛める
  • 顎の骨がやせにくいとされる
  • 入れ歯のバネやずれの悩みが少ない

あらかじめ確かめておきたいこと

手術を受けられる体の状態と、入れたあとのメンテナンスの通院。この2つを先に確かめておくと安心です。

難しい場合も、ブリッジや入れ歯で安定して噛めることがあります。合う方法を一緒に考えます。

まず、その歯を残せないか

他院で抜歯をすすめられた歯でも、残せる場合があります。
かけがえのないご自身の歯を、まず残せるかどうか一緒に確かめましょう。

④10年後に、どれだけ残っているか

インプラント体の10年残存率は研究で約96%です。
快適に使い続けられるよう、定期的に確かめます。

長い年月を表す四季の木が並ぶ前に、インプラントの歯が1本と、お手入れの歯ブラシと手鏡が置かれている絵
長く残すのは、年月とともに続けるお手入れと確認

世界の研究をまとめた数字で、。

インプラント体は、約96%が残る

研究をまとめた報告では、10年後に96.4%が残っていました [5]。

  • 追跡できなかった人を含めると、やや下がる [5]
  • 65歳以上では、やや低い [5]
  • 条件のよい研究ほど高く出やすい

トラブルの種類と手間は、違う

5年でトラブルがあった人は、インプラントで支えるブリッジで38.7%と、従来のブリッジより多い報告です [6]。

  • インプラント:欠け・ねじのゆるみ
  • 従来のブリッジ:支えの歯のむし歯・神経の問題

10年後に残っている割合(研究の数字)

インプラント体(骨に埋入した部分)93〜96%
インプラントの上の歯(1本)83〜94%
従来のブリッジ(歯を削って支える)89%
インプラントで支えるブリッジ87%
80%100%

幅は、研究が示した推定の範囲(95%信頼区間)または計算方法による違い

出典:[5] Howe ら 2019(インプラント体 96.4%、追跡できなかった人を考慮すると 93.2%)、[3] Jung ら 2012(1本の歯 89.4%、95%信頼区間 82.8〜93.6%)、[6] Pjetursson ら 2007(従来のブリッジ 89.2%、インプラントで支えるブリッジ 86.7%)。いずれも世界の研究をまとめた数字です。お口の状態やお手入れで大きく変わります。

入れ歯は、同じ物差しでは比べにくい

入れ歯は同じ基準の研究が少なく、確かな数字がありません。教科書では10年で60%以下とされますが、比べにくい数字です。

「残っている」と「快適に使えている」は少し違います。どの治療も、定期的な確認で快適さを保ちやすくなります。

参考文献(6件)
  1. Schropp L, Wenzel A, Kostopoulos L, Karring T. Bone healing and soft tissue contour changes following single-tooth extraction: a clinical and radiographic 12-month prospective study. Int J Periodontics Restorative Dent. 2003;23(4):313-23.PMID: 12956475
  2. Brånemark PI, Hansson BO, Adell R, et al. Osseointegrated implants in the treatment of the edentulous jaw. Experience from a 10-year period. Scand J Plast Reconstr Surg Suppl. 1977;16:1-132.PMID: 356184
  3. Jung RE, Zembic A, Pjetursson BE, Zwahlen M, Thoma DS. Systematic review of the survival rate and the incidence of biological, technical, and aesthetic complications of single crowns on implants reported in longitudinal studies with a mean follow-up of 5 years. Clin Oral Implants Res. 2012;23 Suppl 6:2-21.PMID: 23062124
  4. Hämmerle CH, Wagner D, Brägger U, et al. Threshold of tactile sensitivity perceived with dental endosseous implants and natural teeth. Clin Oral Implants Res. 1995;6(2):83-90.PMID: 7578785
  5. Howe MS, Keys W, Richards D. Long-term (10-year) dental implant survival: A systematic review and sensitivity meta-analysis. J Dent. 2019;84:9-21.PMID: 30904559
  6. Pjetursson BE, Brägger U, Lang NP, Zwahlen M. Comparison of survival and complication rates of tooth-supported fixed dental prostheses (FDPs) and implant-supported FDPs and single crowns (SCs). Clin Oral Implants Res. 2007;18 Suppl 3:97-113.PMID: 17594374
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