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寝るときは入れ歯を外す
肺炎のリスク 2.3 倍

「外すと心細い」「朝が面倒」。そんなお気持ちもふまえて、寝るときは外すとよい理由を、ガイドラインと日本の研究からお伝えします。

①着けたまま寝ている人は、肺炎のリスクが約2.3倍

日本の85歳以上の研究で、着けたまま寝ていた人は肺炎の危険性が約2.3倍でした。
外して寝ることは、今夜からできる備えです。

横になって眠る人の上半身の輪郭と、口から気管・肺へ続く道。口のそばの小さな汚れの点が気管のほうへ流れている
寝ている間に、汚れが気管へ入りやすくなります

日本の85歳以上524人を3年間追った研究では、入れ歯を使う人の40.8%が着けたまま寝ていました [1]。

寝るときも入れ歯を着けている人(100人あたり)

着けたまま寝ている41人

外して寝ている59人

着けたまま寝ている外して寝ている

出典:Iinuma ら 2015[1]。研究の数字で、当院の患者さんの数字ではありません。

着けたまま寝ていた人は、外していた人に比べて肺炎の危険性が約2.3倍でした [1]。

3年間に肺炎で入院または死亡する危険性(外して寝る人を1としたとき)

外して寝る

危険性1倍

着けたまま寝る

出典:Iinuma ら 2015[1]。飲み込みにくさや持病などを調整したあとの数字。年齢の違う方に当てはまるかは確かめられていません。

なぜ肺炎につながるのか

着けたまま寝ていた人は、舌と入れ歯の汚れ、歯ぐきの炎症、カンジダというカビが多い傾向でした [1]。

寝ている間に、その汚れが気管へ入ると考えられています [1]。

この2.3倍は、同じ研究の脳卒中の既往(約2.5倍)と同じ程度でした [1]。

②粘膜の炎症(義歯性口内炎)が増える

入れ歯の下の粘膜の炎症は使用者の約28%に見られ、着けっぱなしの人で特に多くなります。

上あごの断面2つ:健康な粘膜と、入れ歯の下で淡く赤みを帯びた粘膜
入れ歯の下の粘膜に、炎症が起きることがあります

入れ歯の下の粘膜が赤く腫れる炎症を、義歯性口内炎といいます。痛みが無いことも多いため、検診で確かめます。

米国の調査では、総入れ歯を着け続けている人で、上あごで約6倍多く見られました [2]。

  • 喫煙でも増える [2]
  • 主な原因は、着けっぱなし・合わない入れ歯・清掃不足 [3]
  • 夜に外すと、粘膜の異常が減る [4]

粘膜を休ませ、入れ歯と粘膜を清潔に保つことが基本です [4]。

③原則は外す。ただし、例外がある

原則は「夜は外して水中に保管」です。
歯ぎしりなどの例外は、相談のうえ着けて寝ることもあります。

朝の洗面台の棚に置かれたガラスのコップと、窓からの光
寝るときは外して、水の中へ

学会ガイドラインは、夜は外して水中に保管するとしています [4]。

外さないほうがよい場合

着けたまま寝たほうがよい例外もあり、その場合はお手入れを十分にして着けて寝ます [4]。

寝るときの入れ歯の原則と例外

原則:外して寝る
  • 粘膜を休ませ、炎症と汚れを減らす
  • 外したら洗い、水の中で保管する
  • 高齢の方では肺炎の危険性を下げることにつながる
例外:相談のうえ着けて寝る
  • 歯ぎしりで、残った歯に過剰な負担がかかる
  • 残った歯が、向かい側の歯ぐきを傷つける
  • 顎関節に負担がかかる
  • ぐらつく歯を固定する目的がある
  • いずれも清掃を十分にしたうえで
出典:日本補綴歯科学会ガイドライン(2009)p.14[4]。例外に当たるかどうかは、歯科医師と一緒に確かめましょう。

部分入れ歯で「着けて寝たほうがよい」という意見

部分入れ歯の臨床書には、歯ぎしりで残った歯が揺すられるため、着けたまま寝ることを勧める意見があります [5]。

対照試験で確かめたものではなく [5]、ガイドラインの例外として個別に判断します。

肺炎の2.3倍は、85歳以上の方の全体の数字です [1]。例外でもお手入れが前提です。着けて寝るかは、歯科医師と一緒に決めましょう。

④外した入れ歯の保管方法と、寝る前のお手入れ

ブラシで洗って洗浄剤に浸し、水の中で保管します。
歯ぐきと舌も清掃します。

入れ歯の手入れの3つの場面:水を張った洗面器の上でブラシで洗う、洗浄剤の入ったコップに浸す、水の中で保管する
ブラシで洗い、夜は洗浄剤に浸します

入れ歯とお口の両方をきれいにしてから寝ます。入れ歯の汚れからは、呼吸器の感染につながりうる菌が見つかっています [4]。

入れ歯のお手入れ

  • 入れ歯用のブラシで、汚れを落とす [4]
  • 寝ている間、洗浄剤に浸す [4]
  • 水を張った洗面器の上で洗う(手がすべっても割れにくい)[4]
  • 保管は水の中で(乾燥で変形する)[4]

お口のお手入れ

  • 残った歯は、ふだんどおり歯ブラシで [4]
  • 歯ぐきと舌は、やわらかいブラシでやさしく [4]

洗浄剤の種類や使い方は、相談時にお伝えします。

参考文献(5件)
  1. Iinuma T, Arai Y, Abe Y, et al. Denture wearing during sleep doubles the risk of pneumonia in the very elderly. J Dent Res. 2015;94(3 Suppl):28S-36S.PMID: 25294364
  2. Shulman JD, Rivera-Hidalgo F, Beach MM. Risk factors associated with denture stomatitis in the United States. J Oral Pathol Med. 2005;34(6):340-6.PMID: 15946181
  3. Perić M, Miličić B, Kuzmanović Pfićer J, Živković R, Arsić Arsenijević V. A Systematic Review of Denture Stomatitis: Predisposing Factors, Clinical Features, Etiology, and Global Candida spp. Distribution. J Fungi (Basel). 2024;10(5):328.PMID: 38786683
  4. 日本補綴歯科学会『有床義歯補綴診療のガイドライン(2009 改訂版)』日本補綴歯科学会誌 1(2), 2009。p.14 夜の扱い(一般に夜は外して水中に保管。夜間装着は残存歯の歯肉炎・義歯性口内炎と有意に関係。例外4つ)、p.15 清掃(機械的+化学的、洗面器の上で洗う、歯ぐきと舌の清掃、義歯の汚れから呼吸器感染の原因菌)、患者指導(A)、デンチャープラークコントロール(B)
  5. 丹羽克味『部分床義歯の設計と咬合 ─インプラントより義歯で治す31提言─』学建書院, 2013年。提言29
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