①「合わない」の原因は、入れ歯の形だけではない
噛み合わせの位置のずれ、骨の出っ張りや動く歯ぐき、高さの上げすぎが隠れていることがあります。

調整しても合わないときは、入れ歯の形より前の段階に原因があることがあります [1]。
見直す4つのこと
何度作っても合わないときに、確かめること
- 噛み合わせの位置上下のあごの関係がずれたまま作ると、形を整えても噛むたびに動くため、まず位置を確かめます。
- あごの土台骨の出っ張り、ぶよぶよ動く歯ぐき、残った根が、入れ歯の安定を邪魔していることがあります。
- 噛み合わせの高さ高すぎても低すぎても、しゃべりにくさや噛みにくさ、くいしばりの原因になります。
- 入れ歯で補う範囲ブリッジやインプラントで補える場所まで入れ歯にしていると、力の受け方に無理が出ることがあります。
②噛み合わせの位置を、治療用の入れ歯で直してから作る
位置がずれているときは、先に仮の入れ歯で噛む位置を整えます。

位置がずれている場合は、先に治療用の入れ歯で位置を直すことが勧められています(推奨グレード B)[1]。
治療用の入れ歯とは
調整しやすい仮の入れ歯です。使いながら噛む位置や高さを整え、落ち着いた形を本番に写します。
- 本番の前に、噛む位置と高さを試せる
- 痛いところを、使いながら直せる
- あごと筋肉が慣れる時間がとれる
- 期間は数週間〜数か月で、お口の状態で変わる
③噛み合わせの高さは、少しずつ上げる
上げすぎると強いくいしばりが出ることがあるため、少しずつ上げます。

すり減って低くなった噛み合わせも、少しずつ上げることが大切です [2]。
高すぎるときのサイン
臨床書では、1〜2週間ずつ3〜4回に分けて上げるとしています [2]。経験にもとづく目安です。
噛み合わせの高さを上げるときの考え方
- 少しずつ、段階的に上げる1〜2週間ごとに様子を見ながら。慣れた段階で次へ進みます。
- 唇を閉じたときのすき間の範囲でこの範囲を超えると、強いくいしばりが出ることがあります。
- 一度に大きく上げる2.7mm 上げて症状が出て、1.6mm に戻しても治まらなかった症例があり、段階的に上げる理由になっています。
- 「噛みにくい」を我慢して使い続ける高さが原因なら、調整で変えられます。早めにお伝えください。
④骨の出っ張り・動く歯ぐき・残った根
調整で改善できないときは、土台を整える処置を行うことがあります。

調整で改善できない場合は、必要に応じて取り除くことが勧められています(推奨グレード B)[1]。
- 骨の出っ張り:縁が当たって痛みが繰り返す
- ぶよぶよ動く歯ぐき:入れ歯が沈んだり浮いたりする
- 残った根:支える面を狭め、炎症の原因にも
処置には負担もあるので、必要な場合に限ってご相談のうえで行います。
ブリッジで補える場所は、ブリッジに
前後に歯がある3本程度までの欠損はブリッジで補い、入れ歯は残りだけにする考え方があります [2]。
補う範囲が小さいほど、入れ歯は小さく、動きにくくなります。
条件が合えば、インプラントも選択肢です。手術と費用の負担があり、向かない方もいます。
Q&A
参考文献(2件)
- 日本補綴歯科学会『有床義歯補綴診療のガイドライン(2009 改訂版)』日本補綴歯科学会誌 1(2), 2009。義歯調整(B)、治療用義歯(B)、外科処置(B)、定期検診(顎堤の吸収と噛み合わせの変化は無症状で進む。B)、順応期間(A)
- 丹羽克味『部分床義歯の設計と咬合 ─インプラントより義歯で治す31提言─』学建書院, 2013年。提言5・6・20

