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部分入れ歯と、バネをかける歯の寿命

部分入れ歯は、残った歯で支えます。バネをかけた歯に何が起きるかを知ると、守り方が変わります。

①部分入れ歯は、残った歯で支える

バネをかけた歯には負担がかかり、むし歯や歯周病にもなりやすくなります。
毎日のホームケアと定期検診で守れます。

古い木の柱に、支えるように手を添えている70代の女性の手元
残った歯が、入れ歯を支えています
金属のバネが付いた部分入れ歯。人工歯・床・バネの位置を文字と丸で示している
部分入れ歯のつくり:人工歯・床・バネ

部分入れ歯は、バネ(クラスプ)を残った歯にかけて固定します。噛む力は、その歯と歯ぐきで受けます。

80〜84歳の47.8%が部分入れ歯を使っています(国の調査)[1]。

歯に負担がかかる、という意味

バネをかけた歯は、噛むたびに揺すられます。汚れもたまりやすく、むし歯と歯周病が起きやすくなります [2]。

だからこそ学会のガイドラインは、お手入れの指導を最も強く勧めています [2]。

②バネをかけた歯に、何が起きるか
研究の数字

バネをかけた歯は、抜歯のリスクが約2倍と報告されています。
入れ歯を長く使う鍵は、この支えの歯を守ることです。

部分入れ歯のバネがかかった歯の断面:バネが歯に沿い、歯と歯ぐきの境目に汚れがたまりやすい
バネをかけた歯には、負担がかかります

46研究のメタ解析では、バネをかけた歯は5年を超えると抜歯のリスクが約2倍でした [3]。

神経を取った歯は、さらに高くなります [3][4]。

バネをかけた歯のうち、失われた歯(100本あたり)

神経のある歯4人

神経の無い歯13人

失われた残った

出典:Oh ら 2021(8研究)[4]。追跡が長いほど、失われる割合は増えます。

歯のぐらつきや歯周ポケットは、変わらなかった

ぐらつきと歯周ポケットは変わらず、歯ぐきの炎症が少し増えていました [3]。歯周病が急に進むわけではないので、落ち着いてケアを続けられます。

842床の研究では、うまくいかなかった例の95.6%が、バネをかけた歯を失ったためでした [5]。裏を返せば、この歯を守ることが長持ちの近道です。

バネをかけても、多くの歯は長く残ります。神経のある歯なら、5年で9割以上が残っています [4]。

③なぜ歯が傷むのか
設計の考え方

歯と歯ぐきの沈む量は一桁違います。
そのため、設計と手直しで歯の負担を減らします。

奥に歯が無い部分入れ歯の側面:噛む力で入れ歯の奥が歯ぐきに沈み、バネをかけた歯が引っぱられて傾いている
歯と歯ぐきでは、沈む量がひと桁違います

臨床書による力の仕組みの説明です(一人の臨床家の理論)[6]。

  • 噛むと、歯は数十ミクロン、歯ぐきは0.4〜2mm沈む [6]
  • 骨がやせると、力はバネの歯に偏る [6]
  • 奥に歯が無いと、力をバネで止めきれない(著者の計算)[6]

だから、設計と手直しで守る

バネや床の形で、横揺れの力を減らせます。骨がやせたら早めの裏打ちで、力の偏りを防ぎます [6]。

ブリッジで補える部分はブリッジにして、支えの歯の負担を減らす考え方もあります [6]。

④残った歯を守るために、できること

バネの周りを毎日みがき、定期検診で歯と入れ歯を診ます。

診療室で、歯科衛生士が部分入れ歯の模型と小さなブラシで、バネの周りのみがき方を70代の女性に見せている
バネの周りを、毎日ていねいに

バネをかけた歯を守る、5つのこと

  1. バネの周りを、ていねいにみがくバネが当たる面と歯ぐきの境目に汚れがたまります。入れ歯を外して、小さめのブラシやフロスで。
  2. 入れ歯も毎日洗うブラシと洗浄剤の両方で。汚れた入れ歯は、残った歯のむし歯と歯周病の原因になります。
  3. 寝るときは外す。長く外したままにしない夜は原則外します。何日も外したままにすると残った歯が動いて入らなくなることがあるため、日中は着けて過ごします。
  4. 定期検診で、歯と入れ歯の両方を診るバネをかけた歯のむし歯・ぐらつき、入れ歯のすき間と噛み合わせ。骨のやせは症状が出にくいため、検診で早めに気づけます。
  5. 調整は、歯科医院にお任せくださいバネのゆるみ、痛み、浮き。ご自分で曲げたり削ったりせず、そのままお持ちいただければ調整します。
ガイドライン[2]と臨床書[6]をもとにした一般的な目安です。検診の間隔はお口の状態で変わります。

インプラントで支える、という選択肢

奥に歯が無い部分入れ歯を、インプラントで支える方法があります。満足度と噛む力の改善が報告されています [7]。

手術と自費の費用が要るため、条件が合う場合の選択肢です。

参考文献(7件)
  1. 厚生労働省『令和4年(2022年)歯科疾患実態調査 結果の概要』表14。補綴物の装着状況(年齢階級別)。80〜84歳の部分入れ歯 47.8%
  2. 日本補綴歯科学会『有床義歯補綴診療のガイドライン(2009改訂版)』日本補綴歯科学会誌 1(2), 2009。患者指導(Grade A)、定期検診(Grade B)、p.14-15 の着け外し・夜の扱い・清掃、部分入れ歯を長く外すと残った歯が動く
  3. Drummond LB, Bezerra AP, Feldmann A, Gonçalves TMSV. Long-term assessment of the periodontal health of removable partial denture wearers: A systematic review and meta-analysis. J Prosthet Dent. 2024;134(5):1664-1685.PMID: 39043477
  4. Oh WS, Oh JY, May K. Loss of nonvital abutment teeth for removable partial dentures: a systematic review and meta-analysis. Quintessence Int. 2021;52(3):210-219.PMID: 33117998
  5. Brandt S, Winter A, Lauer HC, Romanos G. Retrospective clinical study of 842 clasp-retained removable partial dentures with a metal framework: survival, maintenance needs, and biologic findings. Quintessence Int. 2024;55(9):704-711.PMID: 38985439
  6. 丹羽克味『部分床義歯の設計と咬合 ─インプラントより義歯で治す31提言─』学建書院, 2013年。原則3、提言2・5・6・7・9・10・15〜19・30
  7. Park JH, Lee JY, Shin SW, Kim HJ. Effect of conversion to implant-assisted removable partial denture in patients with mandibular Kennedy classification I: A systematic review and meta-analysis. Clin Oral Implants Res. 2020;31(4):360-373.PMID: 31945212
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