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保険の入れ歯と自費の入れ歯、何が違うか

保険と自費に、どちらが上という答えはありません。向く場合と、修理のしやすさで考えます。

①保険と自費の入れ歯の違い
材料・厚み・費用

違うのは材料・厚み・設計の自由度と費用です。
噛めるかは、種類より設計と調整で決まります。

上あごの入れ歯の断面2つ:厚めのプラスチックの土台と、薄い金属の土台
保険は厚め、金属床は薄くできる

保険の入れ歯は、材料と設計に決まりがあります。土台はプラスチック(レジン)で、厚みが出やすく、熱が伝わりにくくなります。

自費は材料と形を選べる分、費用がかかります。種類の優劣を示した長期の研究は少なく、お口に合うかで選びます [1][5]。

保険の入れ歯と自費の入れ歯の違い

保険の入れ歯自費の入れ歯
土台の材料プラスチック(レジン)金属・プラスチックなどから選ぶ
厚み厚めになりやすい薄くできるものがある
バネ金属のバネ見えにくい留め方を選べる
修理・裏打ちしやすい種類によってしにくいものがある
費用保険が使える全額自己負担(相談時にご説明)
日本補綴歯科学会のガイドライン [1] をもとに整理。噛める・慣れるには個人差があります。

どちらでも変わらないこと

②保険の入れ歯のメリット・デメリットと、向く場合

費用を抑えたい方、初めて作る方に向きます。
修理や裏打ちがしやすいのも利点です。

明るい食卓で、70代の男性が湯のみを両手で包んで、ほっとした表情で座っている
多くの方を支えている方法です
  • 費用を抑えて、まず慣れたい方
  • 初めて入れ歯を作る方
  • 先に治療用の入れ歯で噛み合わせを直す方 [1]
  • 近いうちに作り直しが見込まれる方

国の調査では、80〜84歳の47.8%が部分入れ歯を使っています [2]。

知っておきたいこと

厚みが気になる方には、金属床もあります。

慣れる期間が要り、発音や異物感は数か月で減っていきます [1]。

保険で作り直せる時期には決まりがあります。調整や裏打ちで足りることも多くあります [1]。

③自費の入れ歯の種類
向く場合・向かない場合

金属床、磁石、二重冠、シリコーン裏打ちなどがあり、向く方と修理のしやすさが違います。

自費の入れ歯の4つの型のアイコン:金属床、磁石で留める、バネの見えないやわらかい樹脂、やわらかい裏打ち
自費の入れ歯は、向く場合がそれぞれ違います

自費の入れ歯の種類と、向く場合・気をつけること

向く場合気をつけること修理・裏打ち
金属床厚みや熱の伝わりが気になる方あごは変わるため、長く安定するとは限らない [5]内面の樹脂部分は裏打ちできる [5]
磁石で留める残った歯の根を使える方根の治療と金属の土台が要る。根を支点に動き、破折しやすい [5]定期点検と裏打ちを続けて使う [5]
二重冠残った歯が少なく、バネを見せたくない方歯を削ってかぶせる。5年超で支えの歯を失う割合が上がる [4]作り直しは大がかり
シリコーン裏打ち歯ぐきが薄く、当たって痛みが出やすい方汚れやすく、硬い裏打ちより持ちが短い [7]定期的に張り替えて使う [7]
バネの見えない前歯のバネが目立って困る方やわらかい型は奥歯に向かない。数年で劣化 [5][6]しにくい [6]
出典:部分入れ歯の臨床書 [5](対照試験ではありません)、日本補綴歯科学会の見解 [6]、系統的レビュー [4][7]。順位ではありません。

金属床

金属で土台を作ります。薄くでき、熱が伝わり、たわみにくいのが特徴です。

金属床でもあごは変わり、約5年で裏打ちでは対応できなくなった例もあります。点検を続けます [5]。

磁石で留める入れ歯

上は入れ歯を入れた前歯の口元、下は金属の枠に留め具が付いた部分入れ歯
留め具で留める部分入れ歯

残った歯の根に磁石を付けて留め、バネが見えません。そのために根の治療と金属の土台が要ります [5]。

根を支点に動いて破折しやすいため、点検と裏打ちで支えます [5]。

二重冠とシリコーン裏打ち

総入れ歯の内側の図。歯ぐきに触れる面が生体用シリコーン、その外側がレジン(プラスチック)であることを文字で示している
シリコーンの裏打ち

二重冠は、残った歯の冠に入れ歯側の冠をはめて留めます。5年生存率は91.7%で、バネ式と差はありません [3]。

シリコーン裏打ちは、痛みが出にくい場合があります。汚れやすく持ちが短いため、張り替えて使います [7]。

バネの見えない入れ歯と白いバネ

やわらかい樹脂の入れ歯は前歯に向き、奥歯には向かず、数年で劣化します [5][6]。白いバネを金属の枠と組み合わせる型もあります [6]。

日本補綴歯科学会は、やわらかい型を最終的な入れ歯としては勧めていません(金属アレルギーなどを除く)[6]。

④部分入れ歯で、種類を問わず起きること

バネをかけた歯は、抜歯になるリスクが約2倍です。
どの種類でも、残った歯を点検で守ります。

部分入れ歯のバネがかかった歯の断面:バネが歯に沿い、歯と歯ぐきの境目に汚れがたまりやすい
バネをかけた歯には、負担がかかります

46研究のレビューでは、部分入れ歯の5年生存率は95.1%でした [3]。当院の成績ではありません。

部分入れ歯の5年生存率(研究のまとめ)

金属のバネで留める

5年後も使えている95.1%

二重冠で留める

5年後も使えている91.7%
出典:Drummond ら、46研究・4,359床の系統的レビュー [3]。両者に統計的な差はありません。

バネをかけた歯は、5年後に抜歯になるリスクが約2倍でした [3]。

  • むし歯・歯周病を定期的に点検 [1][3]
  • 残った歯をどう守るかも一緒に考える
参考文献(7件)
  1. 日本補綴歯科学会『有床義歯補綴診療のガイドライン(2009 改訂版)』日補綴会誌 2009;1(2)。義歯調整(Grade B)、定期検診(顎堤の吸収は無症状のまま進む。Grade B)、治療用義歯(Grade B)、患者指導(Grade A)
  2. 厚生労働省『令和4年(2022)歯科疾患実態調査 結果の概要』表14。80〜84歳の補綴物の装着:部分入れ歯 47.8%、総入れ歯 30.2%
  3. Drummond LB, Bezerra AP, Feldmann A, Gonçalves TMSV. Long-term assessment of the periodontal health of removable partial denture wearers: A systematic review and meta-analysis. J Prosthet Dent. 2024;134(5):1664-1685.PMID: 39043477
  4. Oh WS, Oh JY, May K. Loss of abutment teeth for double crown-retained removable partial dentures compared to clasp-retained removable partial dentures: a systematic review and meta-analysis. Quintessence Int. 2021;52(5):412-424.PMID: 33491387
  5. 丹羽克味『部分床義歯の設計と咬合 ─インプラントより義歯で治す31提言─』学建書院, 2013年。提言21・23・25・28・30
  6. Fueki K, Ohkubo C, Yatabe M, et al. Clinical application of removable partial dentures using thermoplastic resin-part I: definition and indication of non-metal clasp dentures. J Prosthodont Res. 2014;58(1):3-10.(日本補綴歯科学会のポジションペーパー)PMID: 24461323
  7. Hasegawa Y, Minakuchi H, Nishimura M, et al. Effect of soft denture liners on complete denture treatments: A systematic review. J Prosthodont Res. 2024;68(4):493-510.PMID: 38382972
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