硬い歯も、酸には注意が必要です
歯は硬いのに、どうしてむし歯になるのでしょうか?
その答えは、歯をつくる成分にあります。
歯の表面では、
食事のたびに成分が溶け出したり、
戻ったりしています。
この仕組みを知ると、
歯みがきや食べ方、
フッ素を使う意味が分かりやすくなります。
歯の硬さを支える小さな結晶
歯の頭の表面を覆う硬い層を「エナメル質」、
その内側で歯の大部分をつくる組織を「象牙質」といいます。
どちらにも、カルシウムとリン酸を主な材料とする
「ハイドロキシアパタイト」という小さな結晶が含まれています。
結晶とは、原子などが規則正しく並んだ固体のこと。
歯の硬さを支える土台だと考えるとよいでしょう。
「無機質」はカルシウムなどのミネラルに関係する成分の呼び名です。
エナメル質と象牙質は同じ結晶を含んでいても、
成分の割合や構造が異なります。
象牙質はエナメル質より軟らかく、
歯ぐきが下がって根元が露出した部分は、
むし歯に注意が必要です。
「脱灰」と「再石灰化」は反対の働き
歯に付く「プラーク(歯垢)」は、
単なる食べかすではなく、
細菌が集まったものです。
その中の細菌が糖を利用して酸をつくると、
歯の結晶からカルシウムやリン酸が溶け出します。
これを「脱灰(だっかい)」といいます。
一方、唾液は酸を中和する方向に働き、
溶け出した成分が歯に戻るのを助けます。
この修復の働きが「再石灰化(さいせっかいか)」です。
歯の表面では、この二つが繰り返されています。
甘い物を少しずつ長時間食べたり飲んだりすると、
酸の影響を受ける時間が増え、
修復が追いつきにくくなります。

フッ素は、歯の修復を助ける味方
歯みがき剤でおなじみの「フッ素」は、
むし歯予防では主に「フッ化物」として使われます。
フッ化物から生じる「フッ化物イオン」は、
マイナスの電気を帯びた小さな粒子で、歯の結晶に作用します。
その働きの一つが、
結晶の一部を、酸に溶けにくい「フルオロアパタイト」などへ変えることです。
加えて、再石灰化を助けたり、
細菌による酸の産生を抑えたりします。
歯全体が一度で別の物質に変わるわけではなく、
毎日のケアで歯の表面に届け続けることが大切です。
元に戻せる範囲には限界があります
穴になる前の初期のむし歯は、
清掃やフッ化物の利用によって進行を止めたり、
改善したりできる場合があります。
しかし、できてしまった穴や欠けた歯の形が、
歯みがき剤だけで元どおりになるわけではありません。
白く濁った部分やしみる症状があっても、
原因を見た目だけで判断するのは難しいものです。
歯科で状態を確認し、
予防を続けながら経過を見るか、
治療が必要かを判断します。
今日からは「回復する時間」も意識して
年齢に合ったフッ化物入り歯みがき剤を使い、
歯ブラシとフロスなどで清掃しましょう。
甘い飲食物はだらだらと口にせず、回数や時間を見直すことも予防につながります。
受診時には、
普段の間食や飲み物の種類・頻度、
使っている歯みがき剤、などを伝えてください。
磨き方だけでは気づかなかった、
を守る工夫を一緒に考える手がかりになります。
参考資料
- フッ化物利用(概論)(厚生労働省 e-ヘルスネット)
- ライフステージ別にみたむし歯の特徴(厚生労働省 e-ヘルスネット)
- The Tooth Decay Process: How to Reverse It and Avoid a Cavity(米国国立歯科・頭蓋顔面研究所(NIDCR))
- フッ化物によるむし歯予防(日本歯科医師会 テーマパーク8020)
- 「歯の生化学/4 歯の無機質成分」170頁(提供資料。書籍名・著者・発行年は未確認)。


