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秋の食卓を囲む三世代の家族

歯ぎしり・くいしばりとマウスピース
効果と限界

歯ぎしりやくいしばりは、ご本人が気づかないことも多いものです。マウスピースで守れることと、研究でわかっていることをお伝えします。

①歯ぎしり・くいしばりとは

寝ている間の歯ぎしりと、日中のくいしばりがあります。
成人の5人に1人前後に見られます。

夜の寝室で、40代の女性が眠りながら歯を食いしばり、少し顔をしかめている
寝ている間のことは、気づきにくいものです

寝ている間に歯をこすり合わせるものと、日中に無意識に噛みしめるものがあります。

成人の睡眠時の歯ぎしりは約21%でした(2024年の分析)[1]。女性に多い傾向があります [1]。

確かめ方
こんなサインがあれば

  • 朝、あごがだるい・こめかみが重い
  • 家族に歯ぎしりの音を指摘された
  • 歯の先がすり減って平ら
  • 冷たいものがしみる、かぶせ物がよく欠ける
  • 気づくと上下の歯をくっつけている

②歯やあごに何が起きるか

歯のすり減り、しみる症状、かぶせ物の欠け、あごの疲れにつながることがあります。

下の奥歯を横から写した写真。歯の先がすり減って平らになり、中の黄色い部分が少し見えている
歯の先がすり減り、しみやすくなります

寝ている間は力の加減ができず、大きな力がかかります。

困りごとが出ない方も多くいます。顎関節症は歯ぎしりだけでなく、ストレスや姿勢なども重なって起こります [2]。

③原因
関係する習慣

飲酒・カフェイン・喫煙・一部の薬・逆流性食道炎との関係が報告されています。

夕方の机の上に、コーヒー、白ワインのグラス、灰皿のタバコ、開いたノートパソコンが並んでいる
見直してみる習慣

一貫して関係するのは、飲酒・カフェイン・喫煙、一部の向精神薬、逆流性食道炎です [2]。

仕事での画面作業が長いほど、顎関節症の症状が多いという調査もあります [3]。

見直してみる習慣

  • 寝る前の飲酒・カフェイン歯ぎしりとの関係が複数の研究で報告されています[2]。
  • 喫煙歯ぎしりの関連因子として一貫して挙げられています[2]。
  • 胸やけ・逆流性食道炎歯ぎしりとの関係が報告されています。内科での治療もご相談ください[2]。
  • 日中の「歯を離す」習慣気づいたときに上下の歯を離し、肩の力を抜きます。付箋などで思い出す工夫を。
  • 画面作業の合間に休む仕事での画面作業が長いほど、あごの症状が多いと報告されています[3]。
出典:Melo ら 2019(アンブレラレビュー)[2]、Zaitsu ら 2022(日本の勤労者調査)[3]。関係が報告されているものであり、原因と結果が確かめられたわけではありません。飲んでいる薬は、続けたまま主治医にご相談ください。

④マウスピース(スプリント)の効果と限界

マウスピースは、歯のすり減りやかぶせ物の欠けから歯を守ります。
歯科でお口に合わせて作ることで、安心して使えます。

上の歯の列に、透明なマウスピースがかぶさっている側面の図。下の歯はマウスピースに触れている
歯を守る道具としての役目は、確かです

歯を守る
これは確か

歯と歯の間に入って、歯のすり減りやかぶせ物の欠けを防ぎます。

歯ぎしりそのものへの効果
研究が続いています

マウスピースが無治療や他の方法より優れるとする根拠は不十分でした(2021年のレビュー)[4]。回数を減らす傾向はあっても、他の装置と差はありませんでした [5]。

顎関節症にも「弱い推奨」です。自然に軽くなる分と区別しにくいためです [6][7]。

マウスピースに期待できること・研究が続いていること

期待できること
  • 歯のすり減りを防ぐ
  • かぶせ物・詰め物の欠けを減らす
  • あごの関節・筋肉の負担を一時的に軽くする
研究が続いていること
  • 歯ぎしりそのものを治すこと[4][5]
  • 顎関節症への効果(推奨は弱い)[6]
  • 腰痛・アトピーなど体の不調への効果(RCTでは未確認)[7]
出典:Hardy 2021[4]、Minakuchi 2022[5]、日本顎関節学会ガイドライン 2010・2023[6][7]。向き不向きがあり、効果には個人差があります。

安心して使うために
お口に合わせて作る

合わない装置はかえって負担になり、睡眠中の呼吸を妨げることもあると、学会は明記しています [6]。歯科でお口に合わせて作ると、安心して長く使えます。

「腰痛やアトピー、体のバランスも改善する」という効果は、RCTではまだ確かめられていません [7]。

⑤ボトックス注射という方法

噛む筋肉にボトックスを注射して、歯ぎしり・くいしばりの力をやわらげる方法です。
マウスピースと組み合わせることもできます。

エラの筋肉(咬筋)やこめかみの筋肉(側頭筋)に注射して、噛む力を一時的にゆるめます。

  • 噛む力や、筋肉の痛みが軽くなったという研究が多くあります [11]
  • 効果は数週間で出はじめ、5〜8週ごろにいちばん強くなり、半年ほど続くとされます [10]
  • 痛みの改善の程度は、マウスピースと同じくらいでした [12]

マウスピースとの使い分け

マウスピースは歯を守ることが目的で、ボトックスは筋肉の力をゆるめることが目的です [12]。お悩みに合わせて選んだり、組み合わせたりします。

費用と注意点

  • 自費診療です。
  • 効果は少しずつ薄れるため、続ける場合は4〜6か月ごとを目安に注射します
  • 妊娠中・授乳中の方、一部の持病のある方には、ほかの方法をご提案します

くわしくはボトックス治療の記事をご覧ください。

参考文献(12件)
  1. Zieliński G, Pająk A, Wójcicki M. Global Prevalence of Sleep Bruxism and Awake Bruxism in Pediatric and Adult Populations: A Systematic Review and Meta-Analysis. J Clin Med. 2024;13(14):4259.PMID: 39064299
  2. Melo G, Duarte J, Pauletto P, et al. Bruxism: An umbrella review of systematic reviews. J Oral Rehabil. 2019;46(7):666-690.PMID: 30993738
  3. Zaitsu T, Inoue Y, Oshiro A, et al. Association of visual display terminal time with prevalence of temporomandibular disorder among Japanese workers. J Occup Health. 2022;64(1):e12370.PMID: 36350045
  4. Hardy RS, Bonsor SJ. The efficacy of occlusal splints in the treatment of bruxism: A systematic review. J Dent. 2021;108:103621.PMID: 33652054
  5. Minakuchi H, Fujisawa M, Abe Y, et al. Managements of sleep bruxism in adult: A systematic review. Jpn Dent Sci Rev. 2022;58:124-136.PMID: 35356038
  6. 日本顎関節学会『顎関節症初期治療診療ガイドライン 2023 改訂版』(Minds c00780)。自己開口訓練と上顎型スタビリゼーション口腔内装置を弱く推奨(確実性「非常に低」)、3か月で改善しなければ専門医へ、装置は適切に作らないと害があり睡眠中の呼吸を悪化させる可能性
  7. 日本顎関節学会『顎関節症患者のための初期治療診療ガイドライン 1(2010 スプリント)』。自然経過との差が小さいこと、「腰痛・アトピー・体のバランスも改善する」にRCTは存在しないことを同意説明に含めるよう求めている
  8. 島田明子. 顎関節症の治療の変遷と現在. 日本補綴歯科学会誌 2024;16(2):239-244.(装置より運動療法・認知行動療法が第一選択になりつつあるとする整理。推奨度は弱い)
  9. Guo H, Wang T, Li X, Ma Q, Niu X, Qiu J. What sleep behaviors are associated with bruxism in children? A systematic review and meta-analysis. Sleep Breath. 2017;21(4):1013-1023.PMID: 28396971
  10. Chen Y, Tsai CH, Bae TH, Huang CY, Chen C, Kang YN, Chiu WK. Effectiveness of Botulinum Toxin Injection on Bruxism: A Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Controlled Trials. Aesthetic Plast Surg. 2023;47(2):775-790.PMID: 36694050
  11. Coelho MS, de Oliveira JMD, Polmann H, et al. Botulinum Toxin for Bruxism: An Overview. Toxins (Basel). 2025;17(5):249.PMID: 40423331
  12. Aldosari LIN, Chauhan E, Kaur K, et al. Occlusal splints versus botulinum toxin for the management of clinical sequelae associated with adult sleep bruxism: A systematic review and meta-analysis. Cranio. 2026:1-17.PMID: 42274300
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