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抜歯のあとに起こりうる偶発症について

抜歯のあとに起こりうる「しびれ」や「ドライソケット」。どのくらい起こるのか、起きたときにどうするのかを、わかりやすくお伝えします。

①抜いたあと、どんなことが起こりうるか

抜いたあと、約3人に1人に一時的な症状が出ますが、多くは時間とともに落ち着きます。
この集計では、しびれは0件でした。

下あごの断面の模型を2つ並べた写真。左は抜いた穴が赤い血のかたまりで満たされ、右は血のかたまりが取れて穴の底に白っぽい骨が見えているふつうの治り方ドライソケット
穴にできる血のかたまりが、治りのもとです

大学病院で下の親知らず199本を抜いた集計では、7日目に31.7%の方に何らかの症状がありました [1]。

  • 主な症状は、痛みが長引く・口を開けにくい・ドライソケット・感染 [1]
  • ドライソケットは7.0%(199本中14本)[1]
  • 唇や舌のしびれは0件でした [1]

ドライソケットとは
症状と、なりやすい人

抜いた穴にできる血のかたまりが取れて骨が出てしまい、強く痛む状態です。

年齢、以前の感染、抜くのが難しい歯などで、起こりやすくなります [7]。

うがい薬(クロルヘキシジン)を使うと、16.8%から9.58%に減ったという報告があります [2]。抗菌薬では防げないとするまとめもあります [7]。

ドライソケットの治療

抜いて2〜3日目から強い痛みが出て、においを伴うことがあります。ふつうの抜歯では1〜5%、歯ぐきを開いて抜く親知らずでは30%を超えることもあります [15]。

  • 穴をきれいに洗い、痛みをやわらげる薬を詰めるのが一般的です
  • どの薬がいちばんよいかは、まだはっきりしていません [15]
  • 痛み止めが効かないほど痛むときは、次の予約を待たずにご連絡ください

②しびれはまれで、多くは一時的

神経に近い歯でも、1週間後にしびれがない方が約94%です。
しびれが出ても、多くは3か月ほどで回復します。

親知らずの根と神経の管の位置関係を2つ並べた断面。左は離れていて、右は接している
しびれの数字は、神経との近さで変わります

下の親知らずの近くには、下唇やあごの感覚を伝える神経(下歯槽神経)と、舌の感覚を伝える神経(舌神経)が通っています。

しびれの割合は、どんな歯を調べたかで変わります。下の図は、研究ごとの数字です。

しびれが出なかった人の割合(研究ごと)

神経に近い歯だけを調べた研究(268人)

長く残らなかった98.8%

条件を限らない研究(2,330本)

下唇・あご95.9%
舌98.1%
論文の数字で、当院の成績ではありません。1週間後はオランダの多施設試験(神経に近いと判定された歯だけ)の6.3%[3]、長く残らなかった割合は神経に近い歯を集めた16研究のまとめの1.18%[5]、下唇・あごと舌は2,330本の研究の4.1%・1.9%[4]から計算しました。しびれが出ても、多くは時間とともに回復します。

回復の見通し

しびれが出ても、多くは3か月以内に回復します [4]。長く残るのは、神経に近い歯でも約1%です [5]。舌の神経で長く残るのは、平均0.07〜0.28%です [6]。

年齢との関係

年齢が上がるほど起こりやすいという研究と [13]、30歳を境に差はないという研究があります [14]。

まれな合併症

ごくまれに、抜いて2〜4週間後にあごの骨が折れることがあります。35歳以上の男性や、深く埋まった歯で報告されています [8]。

③CTで分かること、分からないこと

CTでは神経と根の位置を立体で確かめられ、安全な抜き方を選ぶ手がかりになります。

神経に近い親知らずの2つの方法。左は歯をすべて取り出したあとの穴、右は根を残して頭だけ取ったあとの断面
根を残して頭だけ取る方法もあります
歯科用CTの断面画像。下あごの骨の中の神経の管を丸で囲み、矢印で示している
歯科用CTの断面。丸が神経の管です

レントゲンでは重なって見えても、CTで見ると実は離れていると分かることがあります。

CTの役割は、神経との位置を見極めて、抜き方を選ぶことです [3]。撮るだけでしびれが減るわけではないため、分かったことを抜き方に生かします [3]。

歯冠切除術(コロネクトミー)という選択肢

根が神経に接している歯では、根を残して頭の部分だけを取る方法もあります [9]。

通常の抜歯と歯冠切除術(神経に近い歯の場合)

通常の抜歯
  • 歯をすべて取り出す
  • 神経に近い歯の16研究で、しびれ6.53%・永続1.18%[5]
  • 基本的に一度で終わる
歯冠切除術
  • 根を残し、歯の頭だけ取る
  • しびれの危険性が約1/7〜1/10[9][10]。ドライソケットも減る[10]
  • 残した根が動くことがあり、再手術が3.63%(3,055本中111本)[10]
観察研究のまとめ[9][10]。向き不向きは歯と神経の位置関係で決まり、優劣ではありません。

この方法ができるか、病院をご紹介するかは、歯の状態によって決めます。

④持病や薬がある方
薬はそのままで、ご相談ください

血をさらさらにする薬は、飲み続けたまま抜くのが原則です。
飲み続けたまま、ご相談ください。

相談室で、60代の男性が小さな手帳を歯科医師に見せ、歯科医師がそれを見ながら話を聞いている
お薬は、自己判断で止めないでください

血をさらさらにする薬(抗血小板薬・ワルファリン・DOAC)は、飲み続けたまま抜歯し、血を止める処置で対応します [11]。

続けるのは、やめた場合に脳梗塞などが0.3〜0.57%に起き、重くなりやすいとされるためです [11]。ワルファリンの方は、PT-INR 3.0以下が目安です [11]。

お薬はそのまま続けて、お薬手帳をお持ちください。歯科医師と主治医が相談して決めます。

骨粗しょう症の薬

骨粗しょう症の薬(ビスホスホネートなど)を飲んでいる方は、抜いたあとにあごの骨が治りにくくなること(顎骨壊死)があります [12]。

飲んでいる期間が長いほど、また下あごの奥ほど起こりやすいとされます [12]。主治医と連携して、抜く時期と準備を決めます。

初めにお伝えいただきたいこと

  • 飲んでいる薬のすべて(お薬手帳、市販薬・サプリも)
  • 糖尿病・心臓病・骨粗しょう症などの持病
  • 以前、出血が止まりにくかった経験
参考文献(15件)
  1. 山田浩之ほか(鶴見大学)「抜歯後合併症の発症危険因子の探求」平成23年度 8020公募研究報告書抄録。下顎智歯抜歯199部位、術後7日目:合併症31.7%、ドライソケット7.0%、神経麻痺0件
  2. Pahlevi MR, Istadi D, Arindra PK. Chlorhexidine reduces the incidence of alveolar osteitis in the absence of systemic antibiotics. Swiss Dent J. 2026;136(2):49-63.PMID: 42454528
  3. Ghaeminia H, Gerlach NL, Hoppenreijs TJ, et al. Clinical relevance of cone beam computed tomography in mandibular third molar removal: A multicentre, randomised, controlled trial. J Craniomaxillofac Surg. 2015;43(10):2158-67.PMID: 26596360
  4. Jain A, Merchant Y, Jadhav P. Beyond the white line: a multicentre retrospective analysis of radiographic and clinical predictors of inferior alveolar and lingual nerve injury following mandibular third molar surgery. Oral Maxillofac Surg. 2026;30(1).PMID: 41945197
  5. Rico-Barroso L, Barroso-Medel M, Gutiérrez-Pérez J, Serrera-Figallo M, Torres-Lagares D. Coronectomy as an alternative technique to complete extraction of mandibular third molars with risk of nerve injury. Med Oral Patol Oral Cir Bucal. 2026;31(1):e19-e30.PMID: 41108767
  6. Lee J, Feng B, Park JS, Foo M, Kruger E. Incidence of lingual nerve damage following surgical extraction of mandibular third molars with lingual flap retraction: A systematic review and meta-analysis. PLoS One. 2023;18(2):e0282185.PMID: 36848347
  7. Taberner-Vallverdú M, Sánchez-Garcés MÁ, Gay-Escoda C. Efficacy of different methods used for dry socket prevention and risk factor analysis: A systematic review. Med Oral Patol Oral Cir Bucal. 2017;22(6):e750-e758.PMID: 29053647
  8. Pires WR, Bonardi JP, Faverani LP, et al. Late mandibular fracture occurring in the postoperative period after third molar removal: systematic review and analysis of 124 cases. Int J Oral Maxillofac Surg. 2017;46(1):46-53.PMID: 27688170
  9. Peixoto AO, Bachesk AB, Leal MOCD, Jodas CRP, Machado RA, Teixeira RG. Benefits of Coronectomy in Lower Third Molar Surgery: A Systematic Review and Meta-analysis. J Oral Maxillofac Surg. 2024;82(1):73-92.PMID: 37925166
  10. Kang FW, Yuan XR, Li GC, Yang YFZ, Zhang XM, Hou GY. Coronectomy in Lower Third Molar Surgery: A Systematic Review and Meta-Analysis. J Oral Maxillofac Surg. 2025;83(5):601-615.PMID: 39956152
  11. 日本有病者歯科医療学会・日本口腔外科学会・日本老年歯科医学会『抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドライン 2020年版』(Minds c00616)。抗血小板薬・ワルファリン・DOACは継続下に抜歯、休薬時の血栓・塞栓症0.3〜0.57%、PT-INR 3.0以下
  12. Dioguardi M, Di Cosola M, Copelli C, et al. Oral bisphosphonate-induced osteonecrosis complications in patients undergoing tooth extraction: a systematic review and literature updates. Eur Rev Med Pharmacol Sci. 2023;27(13):6359-6373.PMID: 37458653
  13. Vranckx M, Fieuws S, Jacobs R, Politis C. Prophylactic vs. symptomatic third molar removal: effects on patient postoperative morbidity. J Evid Based Dent Pract. 2021;21(3):101582.PMID: 34479679
  14. Dudde F, Giese M, Schuck O, Krüger C. Impacted third molar surgery in older patients-Is patient's age really a risk factor for complications? Clin Oral Investig. 2024;28(11):576.PMID: 39375233
  15. Daly BJ, Sharif MO, Jones K, Worthington HV, Beattie A. Local interventions for the management of alveolar osteitis (dry socket). Cochrane Database Syst Rev. 2022;9(9):CD006968.PMID: 36156769
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