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隅田川沿いの桜並木で、桜を見上げて微笑む女性

持病やお薬がある場合

持病やお薬があっても、多くは準備と連携で進められます。お薬はご自身で止めずに、そのままご相談ください。

①まずは、お薬手帳をお持ちください

持病やお薬があっても、受けられることは多くあります。
すべてお知らせいただき、お薬はご自身で止めずに続けることが安心につながります。

受付カウンターごしに、患者さんがお薬手帳を手渡し、スタッフが両手で受け取っている場面。手帳の横に錠剤のシート
飲んでいるお薬はすべて、お薬手帳で教えてください

持病があっても、進められることが多い

持病やお薬で出血・傷の治り・感染のしやすさは変わりますが、一律に受けられないとは決まらず、準備を整えて進められることが多くあります。

お薬は、ご自身で止めずに続けるのが安心

お薬を自己判断で止めると、脳梗塞などが起きやすくなることがあります。続けるかどうかは処方した医師と歯科医師が一緒に決めますので、安心してご相談ください。

お薬は止めたり減らしたりせず、いつもどおり続けたままご相談ください。市販薬やサプリメントも含め、お薬手帳でお知らせいただくと安心です。

持病やお薬がある方の、治療までの流れ

  1. 持病とお薬をすべて伝えるお薬手帳、血液検査の結果(糖尿病の方は HbA1c)、持病の治療状況がわかるものをお持ちください。
  2. 必要に応じて主治医に照会歯科から主治医の先生へ手紙で、治療の可否やお薬の調整について伺います(対診)。
  3. お薬の扱いを医師が決める続けるか、一時的に調整するかは、処方した医師と歯科医師が決めます。ご自身で止める必要はありません。
  4. 状態を整えてから手術へ血糖や血圧が安定していることを確かめたうえで、手術の日程を決めます。
  5. 手術中は全身の状態を確認血圧・脈拍・血中酸素濃度を生体モニターで確認しながら進めます。
  6. 入れたあとも医科と歯科で見守る持病のある方はインプラント周囲の炎症が起きやすい場合があるため、定期的なメンテナンスを続けます。
一般的な進め方の例です。流れは持病の種類や状態によって変わります。

②血液をサラサラにするお薬(抗凝固薬・抗血小板薬)

抗凝固薬や抗血小板薬は、多くの場合止めずに手術できると報告されています。
お薬は続けたまま、まずご相談ください。

歯科医師と内科の医師が、手紙をはさんで向かい合い、お薬の扱いを相談している絵。中央にお薬手帳と錠剤
お薬を続けるか調整するかは、医師と歯科医師が相談して決める

どんなお薬か

  • 抗凝固薬:ワルファリン、DOAC など(心房細動、脳梗塞の予防など)
  • 抗血小板薬:アスピリン、クロピドグレルなど(心筋梗塞の予防など)

続けたまま手術しても、出血の危険は大きく増えない

止血の処置をきちんと行えば、出血の危険は大きく増えないと報告されています [2][3]。

  • 飲んでいない方と出血の危険に差はなかった [2]
  • 出血は圧迫や止血剤で対応でき、命に関わる出血の報告はなかった [4]

注意の度合いは、お薬と手術の大きさで変わる

ワルファリンは新しいタイプより出血しやすく、大きな手術ほど出血は多いとされます [2][4]。お薬と手術の大きさに合わせて、止血の準備を整えます。

血液をサラサラにするお薬と、インプラントの手術

医師と相談して、続けたまま受ける
  • 出血の危険は大きく増えないと報告されている[2][3]
  • 止血の処置(圧迫・止血剤・縫合)で対応できることが多い[4]
  • 脳梗塞などの予防が途切れない
自己判断で止める
  • 脳梗塞・心筋梗塞などの危険が高まることがある
  • 歯科の出血より重い結果につながることがある
  • 止める・調整するかは、処方した医師と歯科医師が決める
抗血栓薬とインプラント手術の出血に関する系統的レビュー[2][3][4]をもとに作成。お薬の種類・手術の大きさ・持病の状態で判断は変わります。

処方している医師に、歯科から確認を取ることがあります。手術後に血のにじみが長く続くときは、そのまま歯科へご連絡ください。

③骨粗しょう症のお薬(ビスホスホネート・デノスマブ)

一部は、まれに「薬剤関連顎骨壊死」と関係します。
割合は低いとされ、休薬するかは医師と歯科医師が連携して決めます。

下あごの骨の全体像を中央に置き、左に飲み薬の錠剤シート、右に注射のお薬の小瓶を並べた絵
骨のお薬は、飲み薬も注射も、必ずお知らせください

どんなお薬か

ビスホスホネート製剤(飲み薬・注射)やデノスマブ(注射)など、骨が溶けるのを抑えるお薬です。

まれに顎の骨が露出して治らなくなる「薬剤関連顎骨壊死」が起きることがあり、医科と歯科の連携が求められています [5]。

どのくらい起きるのか

  • インプラント後の顎骨壊死:研究のまとめで0.5% [6]
  • 低い量なら、失敗は使わない方と変わらないとする報告も [7]

起きる割合は低いものの、ゼロではないというのが現在の見方です。結論が定まっていない部分もあるため、慎重に見守ります [6][8]。

とくに丁寧に計画したい方

  • がんの骨転移の治療で、高い量の注射を使っている [5][7]
  • 飲み薬を3年以上使っている [7]
  • ステロイド・糖尿病などをあわせ持つ [5][7]

周囲炎がきっかけになることもあるため、入れたあとのお手入れで守ります [8]。

骨粗しょう症のお薬と顎骨壊死:わかっていること

はっきりしていること

  • ビスホスホネート・デノスマブは、まれに顎骨壊死と関係する[5]
  • 骨粗しょう症の方のインプラント後の顎骨壊死は、まとめて0.5%と報告されている[6]
  • 医科と歯科が連絡を取り合って進めることが大切[5]

注意が必要とされる方

  • がんの治療で高い量の注射を使っている[1][7]
  • 飲み薬を3年以上使っている[7]
  • ステロイドや糖尿病をあわせ持つ[7]

まだ結論が出ていないこと

  • 手術の前にお薬を休む(休薬)ことで危険が下がるかどうか[5]
  • デノスマブのインプラントへの影響。研究がまだ少ない[7]
日本の顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2017[5]と、骨粗しょう症のお薬とインプラントに関する系統的レビュー[6][7][8]をもとに作成。個人差があります。

骨粗しょう症のお薬は、飲み薬・注射を問わず必ずお知らせください。休薬するかは処方した医師が判断しますので、ご自身で止めずにそのままご相談ください。

④糖尿病:血糖を整えてから進めます

血糖がコントロールできていれば、糖尿病のない方と変わらないとされます。
血糖を整えてから進めます。

野菜の多い食事の皿、ウォーキングシューズ、血液検査の結果をイメージした白い用紙が並び、血糖を整える日々を表す絵
血糖を整え、歯周病を治してから、手術に進む

研究の結論は、ひとつではない

糖尿病は傷の治りや感染に影響しますが、インプラントの研究の結果は分かれています。

  • 差はなかったとするまとめ [9]
  • 失敗の危険が約1.8倍とする報告 [10]

鍵になるのは、血糖のコントロール

研究が一致して示すのは、血糖のコントロールの大切さです。

  • コントロールがよいと、周囲炎が起きにくく骨の減りも少ない [11]
  • 2型でコントロールされていれば、生存率は糖尿病のない方と変わらない [12]
  • それでも出血や骨の減りがやや多い報告もある [13]

糖尿病の方が、手術の前に整えておきたいこと

  • HbA1c の値を共有する最近の血液検査の結果をお持ちください。歯科から主治医に照会することもあります。
  • 血糖を安定させてからコントロールが不十分な場合は、まず内科での治療を優先し、安定してから手術の日程を決めます。
  • 歯周病の治療を先に糖尿病があると歯周病は悪くなりやすいことが分かっています。お口の中の炎症を減らしてからインプラントに進みます。
  • 手術の日の食事と薬食事を抜いて薬だけ飲むと、低血糖になることがあります。当日の食事と薬の取り方は、事前に一緒に決めておくと安心です。
  • 入れたあとのメンテナンス糖尿病のある方は、インプラント周囲炎が起きやすいことがあります。定期的なチェックで一緒に守ります。
糖尿病とインプラントに関する系統的レビュー[9][10][11][12][13]をもとに作成。血糖の目標値は主治医の判断によります。

⑤高血圧・心臓病・そのほかの持病

降圧薬を飲む方も血圧が安定していれば成績は変わらないとされます。
ステロイドや放射線治療はより慎重に進めます。

手術中に使う生体モニター。血圧・脈拍・血液中の酸素の数値と波形が画面に出ている
手術中は、血圧・脈拍・酸素を生体モニターで確かめながら進める

高血圧

降圧薬を飲む方と飲まない方で、生存率に差はなかったとされます。ただし研究は少数です [14]。

大切なのは、手術の日に血圧が安定していることです。

心臓病

病気そのものは生存率を下げないとされます [1]。準備が変わるのは次の場合です。

  • 血液をサラサラにするお薬を飲んでいる
  • 人工弁や、心内膜炎の既往がある
  • 主治医に手術の可否や抗菌薬の予防投与を伺ってから進める

ステロイド・免疫抑制剤・がんの治療

ステロイドや免疫抑制剤は、感染しやすく傷の治りが遅れる傾向があります。顎の周りの放射線治療や、高い量の骨のお薬も、合併症の危険が高いとされます [1]。

受けられないとは限らず、主治医と相談しながらより丁寧に計画します。

歯周病

歯周病を先に整えると周囲炎を防ぎやすいため、まず歯周病の治療から始めます。

ここに書いていない持病も

腎臓病、肝臓病、甲状腺の病気、リウマチなども、お知らせいただければ一緒に確かめます。

参考文献(14件)
  1. Schimmel M, Srinivasan M, McKenna G, Müller F. Effect of advanced age and/or systemic medical conditions on dental implant survival: A systematic review and meta-analysis. Clin Oral Implants Res. 2018;29 Suppl 16:311-330.PMID: 30328186
  2. Zou L, Hua Y. Risk of bleeding with dental implant surgery in patients on anticoagulant or antiplatelet drugs: a systematic review and meta-analysis. Acta Odontol Scand. 2022;81(2):98-104.PMID: 35763663
  3. Miziara LNB, Sendyk WR, Ortega KL, Gallottini M, Sendyk DI, Martins F. Risk of Bleeding during Implant Surgery in Patients Taking Antithrombotics: A Systematic Review. Semin Thromb Hemost. 2021;47(6):702-708.PMID: 33971681
  4. Fathi W, et al. Postoperative Bleeding Complications Associated With Dental Implant Placement in Patients Receiving Antithrombotic Therapy: A Systematic Review and Meta-Analysis. Cureus. 2025;17(12):e98639.PMID: 41503325
  5. Japanese Allied Committee on Osteonecrosis of the Jaw; Yoneda T, Hagino H, et al. Antiresorptive agent-related osteonecrosis of the jaw: Position Paper 2017 of the Japanese Allied Committee on Osteonecrosis of the Jaw. J Bone Miner Metab. 2017;35(1):6-19.PMID: 28035494
  6. Mirza R, El Rabbany M, Ali S, et al. Dental Implant Failure and Medication-Related Osteonecrosis of the Jaw Related to Dental Implants in Patients Taking Antiresorptive Therapy for Osteoporosis: A Systematic Review and Meta-Analysis. Endocr Pract. 2025;31(9):1189-1196.PMID: 40505730
  7. Stavropoulos A, Bertl K, Pietschmann P, Pandis N, Schiødt M, Klinge B. The effect of antiresorptive drugs on implant therapy: Systematic review and meta-analysis. Clin Oral Implants Res. 2018;29 Suppl 18:54-92.PMID: 30306695
  8. Li JTW, Leung YY. Effect of Antiresorptive Drugs on Osseointegrated Dental Implants: A Systematic Review. J Clin Med. 2024;13(7).PMID: 38610856
  9. Moraschini V, Barboza ES, Peixoto GA. The impact of diabetes on dental implant failure: a systematic review and meta-analysis. Int J Oral Maxillofac Surg. 2016;45(10):1237-45.PMID: 27297836
  10. Al Ansari Y, Shahwan H, Chrcanovic BR. Diabetes Mellitus and Dental Implants: A Systematic Review and Meta-Analysis. Materials (Basel). 2022;15(9):3227.PMID: 35591561
  11. Carra MC, Blanc-Sylvestre N, Courtet A, Bouchard P. Primordial and primary prevention of peri-implant diseases: A systematic review and meta-analysis. J Clin Periodontol. 2023;50 Suppl 26:77-112.PMID: 36807599
  12. Andrade CAS, Paz JLC, de Melo GS, Mahrouseh N, Januário AL, Capeletti LR. Survival rate and peri-implant evaluation of immediately loaded dental implants in individuals with type 2 diabetes mellitus: a systematic review and meta-analysis. Clin Oral Investig. 2022;26(2):1797-1810.PMID: 34586502
  13. Lagunov VL, Sun J, George R. Evaluation of biologic implant success parameters in type 2 diabetic glycemic control patients versus health patients: A meta-analysis. J Investig Clin Dent. 2019;10(4):e12478.PMID: 31638347
  14. Mishra SK, Sonnahalli NK, Chowdhary R. Do antihypertensive medications have an effect on dental implants? A systematic review. Oral Maxillofac Surg. 2024;28(2):459-468.PMID: 37330427
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