押上ファースト歯科03-5819-4825予約・相談
下町の軒先で、スイカを食べながら笑い合う友人たち

インプラント周囲炎

インプラントの周りの歯ぐきと骨に起きる炎症で、メンテナンスが予防につながります。どのくらい起き、どう防ぐかをお伝えします。

①インプラント周囲炎とは

インプラントの周りの歯ぐきの炎症です。
歯ぐきだけなら戻せます。
骨まで減った「周囲炎」は戻りにくいため、早めにケアすることが大切です。

自分の歯とインプラントの断面を並べたイラスト。自分の歯の根の周りには薄いクッションの層があり、インプラントには無い
インプラントには歯根膜が無く、炎症への守りが弱い

インプラントの周りの歯ぐきに汚れ(歯垢)がたまると、炎症が起きます。
炎症は2つに分けて呼ばれます。

  • インプラント周囲粘膜炎:歯ぐきが赤くなり血が出る。汚れを取れば戻せる[1]
  • インプラント周囲炎:骨まで減る。減った骨は元に戻りにくい[1][4]

周囲炎が進むとぐらつき、取り外すこともあります。だからこそ、早く見つけて早く手当てすることが大切です[1][4]。

歯ぐきだけの炎症と、骨まで減った炎症

インプラント周囲粘膜炎
  • 歯ぐきから血が出る
  • 骨は減っていない
  • お手入れと治療で元に戻せる
インプラント周囲炎
  • 歯ぐきから血が出る
  • 周りの骨が減る
  • 減った骨は元に戻りにくい
2017年の国際会議(World Workshop)の分け方にもとづく説明図 [1]。どちらも汚れ(歯垢)がきっかけで起きるとされています。進み方には個人差があります。

ご自分の歯との違い

インプラントには「歯根膜」がなく、炎症への守りが弱いため、歯周病より進みが速い場合があります[4]。

むし歯にはなりませんが、歯ぐきと骨の病気にはかかります。

②どのくらいの確率で起きるか(頻度)

日本の調査では、骨まで減った周囲炎は、およそ10人に1人と報告されています。
誰にでも起こりうるからこそ、予防が大切です。

歯科医院の待合室で、年代の違う数人が落ち着いて座っている。多くの人に関わることを表すイラスト

世界の研究のまとめでは、骨まで減った周囲炎が21%でした[2]。

日本の調査では

メンテナンスに通う人の全国調査では、周囲炎が9.7%でした。通院している人だけのため、低めと考えられます[3]。

インプラントのある人のうち、炎症が見つかった割合

歯ぐきだけの炎症(周囲粘膜炎)

世界46%
日本33%

骨まで減った炎症(周囲炎)

世界は2025年の系統的レビュー(102研究・13,030人) [2]、日本は日本歯周病学会の多施設調査(267人) [3]。いずれも研究の数字です。調べた人の集め方や診断の基準が違うため、そのまま比べることはできません。

年数がたつほど、予防が大切に

新たに起きた割合は、2〜3年目の2%から8〜10年目は7.1%に増えていました[10]。

③起こしやすくするもの

はっきりしているのは、歯周病の経験・汚れの残りやすさ・メンテナンス不足。
糖尿病とタバコも疑われています。

歯科医師が患者の話を聞いている問診の場面。机にはお薬手帳があり、患者が自分のことを伝えているイラスト
歯周病の経験、糖尿病、タバコは先に伝える

国際会議のレビューでは、強い根拠があるものは3つです[4](下の図)。

インプラント周囲炎を起こしやすくするもの

はっきりしているもの

  • 歯周病にかかったことがある
  • 汚れ(歯垢)が残りやすい
  • メンテナンスを受けていない

関係が疑われているもの

  • 糖尿病
  • タバコ
  • かぶせた歯の形や、セメントの残り(お手入れしにくい状態)
2017年の国際会議(World Workshop)のレビュー [4] にもとづく整理。2025年の系統的レビューでは、歯周病・糖尿病・喫煙・飲酒が周囲炎と関連する項目として挙げられています [2]。当てはまる項目があっても、必ず起きるわけではありません。

タバコと糖尿病は、研究が続いている

タバコと糖尿病は「はっきりとは言い切れない」とされます[4]。一方で、関連を挙げるレビューもあります[2]。

「はっきりしていない」は「関係がない」という意味ではないため、できる範囲で整えておくと安心です。

歯周病の経験、糖尿病やタバコに心当たりのある方は、入れる前に歯科医師にお伝えください。それに合わせた予防の計画を一緒に立てます。

④予防はメンテナンスで差が出る

続けた人は続けなかった人に比べ、5年で周囲炎に進んだ割合が半分以下でした。

同じ歯科医院の入口に患者が訪れる様子を、季節の違う3つの場面で並べたイラスト。通い続けることを表す
歯が入ったら終わりではなく、入ってからが始まり

歯ぐきだけの炎症があった人を5年間追った研究です[5]。

周囲炎に進んだ人は、続けた人で18.0%、続けなかった人で43.9%でした[5]。

5年のうちに、周囲炎に進んだ人(100人あたり)

メンテナンスを続けた人18人

続けなかった人44人

周囲炎に進んだ進まなかった

Costa ら 2012年(5年の追跡、80人) [5] の割合を100人あたりに直したもの。歯ぐきだけの炎症がすでにあった人を対象にした研究です。続けた人でも起きることがあり、続ければ必ず防げるわけではありません。

この数字から言えること

  • 続けた人でも5人に1人は進んでおり、必ず防げるわけではない
  • それでも、続けなかった人の半分以下に抑えられた

「入れてからが始まり」とお伝えするのは、このためです。

間隔を一人ひとりに合わせると

起こしやすさに合わせて間隔を決めるほうが、よい状態だったという報告があります。研究の数はまだ限られています[9]。

⑤症状のサインと、治るかどうか(治療の考え方)

歯みがきの出血は炎症のサインのことがあります。
骨の変化は、定期検査のレントゲンで確かめます。

歯科医師がモニターの2枚のレントゲン画像を並べて見比べている。骨の高さを記録と比べる場面のイラスト
骨の変化は見た目では分からず、レントゲンで比べる

周囲炎は痛みが出にくく、骨がかなり減るまで気づかないことがあります[4]。

こんなサインに気をつけましょう

  • 歯みがきのとき、インプラントの周りから血が出る
  • 歯ぐきが赤い、腫れている、膿が出る
  • 口臭や、口の中のねばつき
  • かぶせた歯がぐらつく、噛むと違和感がある
  • 歯ぐきが下がり、金属が見えてきた

骨の減りは、検査で確かめる

骨の減りは見た目では分かりません。溝の深さと出血、レントゲンの骨の高さを、入れた時点の記録と比べます[1]。

歯ぐきだけの炎症なら

汚れを取り除くことと、毎日のお手入れの見直しが中心です[6]。

骨まで減っていたら

まず「手術をしない治療」で汚れを取ります。表面がざらざらしているため、これだけでは効果が限られることも多いと報告されています[7]。

落ち着かないときは、手術や骨を補う処置を検討します。取り外して、次の治療に進むほうがよい場合もあります[6][7]。

出血や腫れに気づいたら、次のメンテナンスを待たずにご連絡ください。ほかの医院で入れたインプラントも拝見します。

参考文献(10件)
  1. Berglundh T, Armitage G, Araujo MG, et al. Peri-implant diseases and conditions: Consensus report of workgroup 4 of the 2017 World Workshop on the Classification of Periodontal and Peri-Implant Diseases and Conditions. J Periodontol. 2018;89 Suppl 1:S313-S318.PMID: 29926955
  2. Galarraga-Vinueza ME, Pagni S, Finkelman M, Schoenbaum T, Chambrone L. Prevalence, incidence, systemic, behavioral, and patient-related risk factors and indicators for peri-implant diseases: An AO/AAP systematic review and meta-analysis. J Periodontol. 2025;96(6):587-633.PMID: 40489307
  3. Ogata Y, Nakayama Y, Tatsumi J, et al. Prevalence and risk factors for peri-implant diseases in Japanese adult dental patients. J Oral Sci. 2017;59(1):1-11.PMID: 27725369
  4. Schwarz F, Derks J, Monje A, Wang HL. Peri-implantitis. J Periodontol. 2018;89 Suppl 1:S267-S290.PMID: 29926957
  5. Costa FO, Takenaka-Martinez S, Cota LO, Ferreira SD, Silva GL, Costa JE. Peri-implant disease in subjects with and without preventive maintenance: a 5-year follow-up. J Clin Periodontol. 2012;39(2):173-81.PMID: 22111654
  6. Herrera D, Berglundh T, Schwarz F, et al. Prevention and treatment of peri-implant diseases—The EFP S3 level clinical practice guideline. J Clin Periodontol. 2023;50 Suppl 26:4-76.PMID: 37271498
  7. Cosgarea R, Roccuzzo A, Jepsen K, Sculean A, Jepsen S, Salvi GE. Efficacy of mechanical/physical approaches for implant surface decontamination in non-surgical submarginal instrumentation of peri-implantitis. A systematic review. J Clin Periodontol. 2023;50 Suppl 26:188-211.PMID: 36550060
  8. Heitz-Mayfield LJA, Heitz F, Lang NP. Implant Disease Risk Assessment IDRA—a tool for preventing peri-implant disease. Clin Oral Implants Res. 2020;31(4):397-403.PMID: 32003037
  9. Mojaver S, Zad A, Sarmiento H, Fiorellini JP. Efficacy of supportive peri-implant therapy in the management of peri-implant mucositis and peri-implantitis: A systematic review. J Am Dent Assoc. 2026;157(2):141-152.e4.PMID: 41204923
  10. French D, Ofec R, Levin L. Long term clinical performance of 10 871 dental implants with up to 22 years of follow-up: A cohort study in 4247 patients. Clin Implant Dent Relat Res. 2021;23(3):289-297.PMID: 33768695
インプラントのページに戻る⑥ 入れたあとが大切
長く保たせるためにできること

あわせて読む