①インプラント周囲炎とは
インプラントの周りの歯ぐきの炎症です。
歯ぐきだけなら戻せます。
骨まで減った「周囲炎」は戻りにくいため、早めにケアすることが大切です。

インプラントの周りの歯ぐきに汚れ(歯垢)がたまると、炎症が起きます。
炎症は2つに分けて呼ばれます。
周囲炎が進むとぐらつき、取り外すこともあります。だからこそ、早く見つけて早く手当てすることが大切です[1][4]。
歯ぐきだけの炎症と、骨まで減った炎症
- 歯ぐきから血が出る
- 骨は減っていない
- お手入れと治療で元に戻せる
- 歯ぐきから血が出る
- 周りの骨が減る
- 減った骨は元に戻りにくい
ご自分の歯との違い
インプラントには「歯根膜」がなく、炎症への守りが弱いため、歯周病より進みが速い場合があります[4]。
むし歯にはなりませんが、歯ぐきと骨の病気にはかかります。
②どのくらいの確率で起きるか(頻度)
日本の調査では、骨まで減った周囲炎は、およそ10人に1人と報告されています。
誰にでも起こりうるからこそ、予防が大切です。

世界の研究のまとめでは、骨まで減った周囲炎が21%でした[2]。
日本の調査では
メンテナンスに通う人の全国調査では、周囲炎が9.7%でした。通院している人だけのため、低めと考えられます[3]。
インプラントのある人のうち、炎症が見つかった割合
年数がたつほど、予防が大切に
新たに起きた割合は、2〜3年目の2%から8〜10年目は7.1%に増えていました[10]。
③起こしやすくするもの
はっきりしているのは、歯周病の経験・汚れの残りやすさ・メンテナンス不足。
糖尿病とタバコも疑われています。

国際会議のレビューでは、強い根拠があるものは3つです[4](下の図)。
インプラント周囲炎を起こしやすくするもの
はっきりしているもの
- 歯周病にかかったことがある
- 汚れ(歯垢)が残りやすい
- メンテナンスを受けていない
関係が疑われているもの
- 糖尿病
- タバコ
- かぶせた歯の形や、セメントの残り(お手入れしにくい状態)
タバコと糖尿病は、研究が続いている
タバコと糖尿病は「はっきりとは言い切れない」とされます[4]。一方で、関連を挙げるレビューもあります[2]。
「はっきりしていない」は「関係がない」という意味ではないため、できる範囲で整えておくと安心です。
歯周病の経験、糖尿病やタバコに心当たりのある方は、入れる前に歯科医師にお伝えください。それに合わせた予防の計画を一緒に立てます。
④予防はメンテナンスで差が出る
続けた人は続けなかった人に比べ、5年で周囲炎に進んだ割合が半分以下でした。

歯ぐきだけの炎症があった人を5年間追った研究です[5]。
周囲炎に進んだ人は、続けた人で18.0%、続けなかった人で43.9%でした[5]。
5年のうちに、周囲炎に進んだ人(100人あたり)
メンテナンスを続けた人18人
続けなかった人44人
周囲炎に進んだ進まなかった
この数字から言えること
- 続けた人でも5人に1人は進んでおり、必ず防げるわけではない
- それでも、続けなかった人の半分以下に抑えられた
「入れてからが始まり」とお伝えするのは、このためです。
間隔を一人ひとりに合わせると
⑤症状のサインと、治るかどうか(治療の考え方)
歯みがきの出血は炎症のサインのことがあります。
骨の変化は、定期検査のレントゲンで確かめます。

周囲炎は痛みが出にくく、骨がかなり減るまで気づかないことがあります[4]。
こんなサインに気をつけましょう
- 歯みがきのとき、インプラントの周りから血が出る
- 歯ぐきが赤い、腫れている、膿が出る
- 口臭や、口の中のねばつき
- かぶせた歯がぐらつく、噛むと違和感がある
- 歯ぐきが下がり、金属が見えてきた
骨の減りは、検査で確かめる
骨の減りは見た目では分かりません。溝の深さと出血、レントゲンの骨の高さを、入れた時点の記録と比べます[1]。
歯ぐきだけの炎症なら
汚れを取り除くことと、毎日のお手入れの見直しが中心です[6]。
骨まで減っていたら
まず「手術をしない治療」で汚れを取ります。表面がざらざらしているため、これだけでは効果が限られることも多いと報告されています[7]。
落ち着かないときは、手術や骨を補う処置を検討します。取り外して、次の治療に進むほうがよい場合もあります[6][7]。
出血や腫れに気づいたら、次のメンテナンスを待たずにご連絡ください。ほかの医院で入れたインプラントも拝見します。
Q&A
参考文献(10件)
- Berglundh T, Armitage G, Araujo MG, et al. Peri-implant diseases and conditions: Consensus report of workgroup 4 of the 2017 World Workshop on the Classification of Periodontal and Peri-Implant Diseases and Conditions. J Periodontol. 2018;89 Suppl 1:S313-S318.PMID: 29926955
- Galarraga-Vinueza ME, Pagni S, Finkelman M, Schoenbaum T, Chambrone L. Prevalence, incidence, systemic, behavioral, and patient-related risk factors and indicators for peri-implant diseases: An AO/AAP systematic review and meta-analysis. J Periodontol. 2025;96(6):587-633.PMID: 40489307
- Ogata Y, Nakayama Y, Tatsumi J, et al. Prevalence and risk factors for peri-implant diseases in Japanese adult dental patients. J Oral Sci. 2017;59(1):1-11.PMID: 27725369
- Schwarz F, Derks J, Monje A, Wang HL. Peri-implantitis. J Periodontol. 2018;89 Suppl 1:S267-S290.PMID: 29926957
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- Cosgarea R, Roccuzzo A, Jepsen K, Sculean A, Jepsen S, Salvi GE. Efficacy of mechanical/physical approaches for implant surface decontamination in non-surgical submarginal instrumentation of peri-implantitis. A systematic review. J Clin Periodontol. 2023;50 Suppl 26:188-211.PMID: 36550060
- Heitz-Mayfield LJA, Heitz F, Lang NP. Implant Disease Risk Assessment IDRA—a tool for preventing peri-implant disease. Clin Oral Implants Res. 2020;31(4):397-403.PMID: 32003037
- Mojaver S, Zad A, Sarmiento H, Fiorellini JP. Efficacy of supportive peri-implant therapy in the management of peri-implant mucositis and peri-implantitis: A systematic review. J Am Dent Assoc. 2026;157(2):141-152.e4.PMID: 41204923
- French D, Ofec R, Levin L. Long term clinical performance of 10 871 dental implants with up to 22 years of follow-up: A cohort study in 4247 patients. Clin Implant Dent Relat Res. 2021;23(3):289-297.PMID: 33768695

