①目標は「完璧なゼロ」ではありません
汚れを完全に無くす必要はありません。
汚れが残る歯の面を2割以下に保てば、歯ぐきは長く安定するとされます。

目安は「汚れが残る面が2割以下」
汚れが残っている歯の面の割合をPCRと呼び、日本では20%以下が目標です [1]。歯ぐきの手術を考えるときは10%以下が目安です [1]。
汚れが残っている歯の面の割合(PCR)の目安
治療を終えたメンテナンス期には、20〜40%まで許容する考え方もあります [1]。
全部を落とそうとしなくてよい
目標は「完璧にゼロ」ではありません [1]。強くこすると歯ぐきを傷めることがあるので、やさしく続けてください。
みがくのをやめると、どのくらいで腫れるか
②正しい歯磨きの仕方
回数・時間・当て方
1日2回・2分以上、毛先を歯と歯ぐきの境目に当てて小さく動かします。
力は要りません。

道具より、当て方が先
効果に影響するのは、大きい順に①回数と方法、②歯ブラシの交換頻度、③毛先の硬さとされます [1]。高い歯ブラシより、当て方が先です。
毎日の歯みがきで確かめたい5つの点
- 1日2回、2分以上ヨーロッパの歯周病学会は、フッ化物入りの歯みがき剤で1日2回・2分以上を勧めています。歯周病の治療中の方は、2分では足りないことが多いとされます [4]
- 毛先は歯と歯ぐきの境目に汚れは歯と歯ぐきの境目にたまります。毛先を境目に軽く当て、1〜2本ずつ小さく動かします
- 力は入れない強くこすっても汚れは落ちやすくなりません。毛先が広がらない程度の軽い力で十分です
- 順番を決めるみがき残しは「いつも同じ場所」に出ます。右上の奥から、と順番を決めると抜けが減ります
- 歯ブラシは1か月をめやすに交換毛先が広がった歯ブラシは汚れが落ちにくくなります。交換の頻度は、みがく回数・方法の次に影響が大きいとされています [1]
みがき残しは「いつも同じ場所」に出る

みがき残しの場所は、人によってほぼ決まっています。
- 利き手側の糸切り歯のあたり
- いちばん奥の歯のうしろ側
- 下の前歯の裏側
- 歯と歯の間(毛先は届かない)
残りやすい場所を意識して当てれば十分です。歯と歯の間は「フロスと歯間ブラシ」の記事へ。
③電動歯ブラシは手みがきより良いのか
研究の平均では電動のほうが汚れと炎症を減らします。
差の意味はまだ不確かなので、手みがきで十分なら替えなくて構いません。

研究の平均では、電動がわずかに上
56の研究のまとめでは、電動歯ブラシのほうが3か月超で汚れを21%多く減らしました [5]。ただ、この差が臨床的にどれほど重要かは、はっきりしません [5][6]。
手みがきと電動歯ブラシの違い
- 当て方が正しければ、汚れは十分落ちる
- 力加減と動かし方を自分で調整する必要がある
- 安価で、どこでも手に入る
- 歯周病の方は2分では足りないことが多い [4]
機種による差があります
研究の多い回転往復型では、効果が確かめられています [5]。すべての機種が手みがきより優れるわけではありません [1]。
みがき過ぎで歯ぐきが下がることがあります
誤ったみがき方で、歯ぐきが下がったり根元がすり減ったりすることがあります [1]。関係するとされるのは次の要素です [7]。
- みがく回数と時間
- 横にごしごしこする動かし方
- 毛先の硬さ
- 歯ブラシの交換頻度
証拠はまだ決定的ではありません [7]。硬い毛よりやわらかい毛のほうが傷が少ない傾向です [8][9]。
歯ぐきが下がった、根元がしみると感じたら、みがき方が原因のこともあります。自己流で変える前に、メンテナンスのときに一緒に確かめましょう。
④洗口剤と薬用歯みがき剤にできること、できないこと
洗口剤は、歯みがきを助ける補助です(固まった細菌の膜は壊せません)。
フッ化物入りの歯みがき剤は、むし歯を減らすと確かめられています。

うがい薬で、歯みがきは減らせない
汚れは時間がたつと、薬が届きにくい細菌の膜(バイオフィルム)になります [10]。この膜を壊せるのは、歯ブラシやフロスによる機械的な清掃だけです [1]。
洗口剤にできること、できないこと
研究で確かめられていること
- 歯みがきに加えて使うと、汚れの量が減る(クロルヘキシジン:51の研究) [12]
- 浮いている細菌を減らし、新しい汚れがつくのを遅らせる [1][11]
- 精油配合の洗口剤を加えると、6か月後の歯ぐきの炎症が16%、汚れが28%減った(メーカーの研究のまとめ) [13]
できないこと・注意
- 歯の面に固まった成熟したバイオフィルムを壊すことはできない [1][10]
- 歯ぐきの炎症への効果は、軽い炎症の人で小さく、臨床的に意味があるとは言えないとされる [12]
- クロルヘキシジンは4週間以上使うと歯に着色し、味覚の変化や粘膜の荒れが報告されている [12]
洗口剤の効果を、数字で
クロルヘキシジンの洗口剤は、軽い炎症の人では臨床的に意味があるとは言えない程度でした [12]。4週間以上使うと歯に着色します [12]。
精油配合の洗口剤の報告は、メーカーの研究だけのまとめで、割り引いて読む必要があります [13]。合う製品は、ご相談ください。
フッ素入り歯みがき剤の使い方と、みがいたあとのうがい
フッ化物入りの歯みがき剤は、入っていないものよりむし歯を減らします(96研究のまとめ)[14]。
- みがいたあとはゆすぎ過ぎない。少量の水で1回ほど
- みがいたあと30分ほどは、飲食を控える
- 日本の市販品の濃度の上限は1,500ppm
日本の学会の推奨にもとづく一般的な使い方です。
小さなお子さんが濃度の高い歯みがき剤を飲み込むと、歯に白い斑点(フッ素症)が出ることがあります [14]。年齢に合った濃度と量は、歯科医師・歯科衛生士にご相談ください。
Q&A
参考文献(14件)
- 内藤徹ほか『知ってて得した!歯周治療に活かせるエビデンス』クインテッセンス出版(Quint Study Club) PART③ セルフケア(PCR の目標値:20%以下、歯周外科時10%以下、メインテナンス期20〜40%、5年追跡の根拠。電動歯ブラシの機種差と誤用、影響の順序、洗口剤の位置づけ)
- Löe H, Theilade E, Jensen SB. Experimental gingivitis in man. J Periodontol. 1965;36:177-87.PMID: 14296927
- 内藤徹ほか『知ってて得した!歯周治療に活かせるエビデンス』クインテッセンス出版(Quint Study Club) PART① 病因(Löe 1965 の要点:10〜20日で全員に歯肉炎、再開で10日以内に消失。成熟したバイオフィルムは抗菌剤を浸透させない)
- Chapple ILC, Van der Weijden F, Doerfer C, et al. Primary prevention of periodontitis: managing gingivitis. J Clin Periodontol. 2015;42 Suppl 16:S71-6.PMID: 25639826
- Yaacob M, Worthington HV, Deacon SA, et al. Powered versus manual toothbrushing for oral health. Cochrane Database Syst Rev. 2014;(6):CD002281.PMID: 24934383
- Suvan J, Van der Weijden GA, Slot DE, et al. Management of dental biofilm-induced gingivitis: oral hygiene instruction, behavioural strategies and self-performed mechanical oral hygiene—a systematic review and meta-analysis. J Clin Periodontol. 2026. doi:10.1111/jcpe.70192PMID: 42830706
- Heasman PA, Holliday R, Bryant A, Preshaw PM. Evidence for the occurrence of gingival recession and non-carious cervical lesions as a consequence of traumatic toothbrushing. J Clin Periodontol. 2015;42 Suppl 16:S237-55.PMID: 25495508
- Molina C, Pimentel RP, Oballe HJR, Muniz FWMG, Rösing CK. Influence of manual and powered toothbrushes on gingival lesions: a systematic review and meta-analysis. Int J Dent Hyg. 2026. doi:10.1111/idh.70086PMID: 42071338
- Ranzan N, Muniz FWMG, Rösing CK. Are bristle stiffness and bristle end-shape related to adverse effects on soft tissues during toothbrushing? A systematic review. Int Dent J. 2019;69(3):171-182.PMID: 30152076
- Marsh PD. Dental plaque as a microbial biofilm. Caries Res. 2004;38(3):204-11.PMID: 15153690
- Sekino S, Ramberg P, Uzel NG, Socransky S, Lindhe J. The effect of a chlorhexidine regimen on de novo plaque formation. J Clin Periodontol. 2004;31(8):609-14.PMID: 15257736
- James P, Worthington HV, Parnell C, et al. Chlorhexidine mouthrinse as an adjunctive treatment for gingival health. Cochrane Database Syst Rev. 2017;3(3):CD008676.PMID: 28362061
- Araujo MWB, Charles CA, Weinstein RB, et al. Meta-analysis of the effect of an essential oil-containing mouthrinse on gingivitis and plaque. J Am Dent Assoc. 2015;146(8):610-622.PMID: 26227646
- Walsh T, Worthington HV, Glenny AM, Marinho VC, Jeroncic A. Fluoride toothpastes of different concentrations for preventing dental caries. Cochrane Database Syst Rev. 2019;3(3):CD007868.PMID: 30829399

