①何歳から始めるか
2つの時期がある
乳歯と永久歯がまざる第1期と、永久歯がそろってからの第2期があります。

第1期
乳歯と永久歯がまざる時期
前歯が生えかわる6〜8歳ごろから12歳ごろまでで、歯の並ぶ場所をつくる治療が中心です。
- 上あごの幅を広げる
- 受け口や、あごの横ずれを整える
- 指しゃぶり・舌の癖などの習慣を直す
第2期
永久歯がそろってから
12〜14歳ごろ、永久歯がそろってから始めます。歯を一本ずつ動かし、噛み合わせを仕上げます。
第1期と第2期の違い
- あごの成長を使い、歯の並ぶ場所をつくる
- 取り外し式の装置や、あごを広げる装置が中心
- 受け口・横ずれ・癖の修正に向く
- 終わっても、第2期が要ることがある
- 永久歯を一本ずつ動かし、噛み合わせを仕上げる
- ブラケットとワイヤー、またはマウスピース
- 装置をつけている期間は1年半〜2年半が目安
- 終わったあとに保定装置をつける
第1期のあとに第2期が要ることもあります。でこぼこだけなら、永久歯がそろってから1回で治すほうがよい場合もあります。
②「早いほどよい」とは限らない
出っ歯の場合
7〜11歳で始めても、12歳以降に1回で治しても、仕上がりは同じでした。
早ければよいとは限らないため、お子さんごとに時期を考えます。

コクランのレビュー(27試験)では、早く始めた子と12歳以降に始めた子で、仕上がりに差がありませんでした。
早く始めると治療が2回になるため、その分、期間と費用は増えます。
からかわれて辛い、など早く始める理由がある子もいます。お子さんごとに考えます。
③早く診る価値がある歯並び
受け口、あごの横ずれ、場所が足りないでこぼこは、あごの成長を使える時期に診る価値があります。


あごの成長が関わる歯並びには、成長期にしかできないことがあります。
- 受け口
- 噛むと下あごが横や前にずれる
- あごの幅が足りず、並ぶ場所がない
- 前歯のかぶさりが極端に深い
受け口は、日本人に多い
受け口は白人で1.1%、日本人で3.8%と報告されています。下あごは思春期に大きく伸びるため、成長が終わるまで見守ります。
上あごにできること、下あごにできないこと

上あごを広げる・前への成長を抑える効果は、成長後も残りやすいとされます。
下あごの成長を抑える効果は、装置をやめると戻りやすいとされます。
骨格は最後まで変えきれないことがあり、その場合は成長後に手術を伴う矯正を検討します。
④咬合育成(歯並びの予防)とは
歯並びが崩れる兆しを早く見つけ、あごの成長を促して並ぶ場所をつくる自費の処置です。
第1期にあたる処置で、歯並びの悪化を問題が固まる前に減らすことが目的です。
できるのは、生えかわりの時期だけ
7歳ごろに始め、小学校高学年までに終えます。永久歯がそろったあとは、歯を一本ずつ動かす矯正で整えます。
向くお子さん




- あごの幅が足りず、前歯が重なって生えてきた
- 受け口の傾向がある
- 口呼吸や舌の癖で崩れてきている
慎重に考えるお子さん
- 出っ歯だけで、ほかに問題がない(12歳以降でも仕上がりは同じ)
- 装置を決められた時間つけるのが難しい(取り外し式は使った時間だけ効く)
受けても歯を抜かずにすむとは限らず、第2期が要ることもあります。健康保険は使えない自費の処置のため、始める前に見通しをご説明します。
咬合育成の費用は、相談時にご説明します。
Q&A
参考文献(4件)
- 中島榮一郎『歯列矯正 これなら安心』講談社 健康ライブラリー。4章(矯正歯科にかかるには)・5章(治療の実際)・8章(Q&A)。前期治療6〜8歳/後期治療9〜13歳/通常矯正10〜16歳、受け口は思春期前に骨格性か判別しにくい(p.129-130)、取り外し式は使わなければ効果が無い(p.138)、装置期間1年半〜2年半(p.182-183)
- Batista KBSL, Thiruvenkatachari B, Harrison JE, O'Brien KD. Orthodontic treatment for prominent upper front teeth (Class II malocclusion) in children and adolescents. Cochrane Database Syst Rev. 2018;3(3):CD003452.PMID: 29534303
- 東京バイオプログレッシブ・スタディ・クラブ編『矯正に強くなる本』クインテッセンス出版 1982。2章(早期治療が理にかなう場合:機能的なずれ・受け口・あごと歯の大きさの不釣り合い、p.86-87)
- 三谷英夫『矯正治療のためのアトラス ── 咬合と顎顔面頭蓋のバイオメカニクス』。受け口の割合 白人1.1%・日本人3.8%(p.51)、下あごの成長と頭蓋底の補償(p.53-57)、チンキャップの一卵性双生児の観察・上あごの拡大と前方成長の抑制は効果が残る(9章 p.107-119)。著者自身が「データではなく生体構造からの推論」と記す

