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顎関節症について

あごの音・痛み・開きにくさは多くの方が経験し、多くは時間とともに軽くなります。自分でできることをお伝えします。

①顎関節症とは
音・痛み・開かない

あごの関節と筋肉の不調です。
音だけで痛みのない方も多くいます。

横顔の頭の骨の図。耳の穴の前にある下顎窩・下顎頭・関節円板を、文字と矢印で示している
耳の前の関節と、クッションの関節円板

耳の前のあごの関節と、噛む筋肉の不調をまとめた呼び名です。主な症状は3つです。

  • 口を開け閉めすると、耳の前で音がする
  • あごや、こめかみ・頬の噛む筋肉が痛む
  • 口が大きく開かない、引っかかる

音だけなら、様子を見て構わないことが多いです。痛みや開けにくさが加わったら、ご相談ください。

どのくらいの人にあるか
国の調査

「あごの音がする」「あごが痛い」と答えた人(国の調査・2016年)

20〜24歳 女性

痛みがある13.9%

20〜24歳 男性

音がする23.5%

60〜64歳 女性

音がする16.4%
厚生労働省 平成28年歯科疾患実態調査 表31・32[1]。あごの音・痛みを尋ねた国の調査はこの回が最新で、2022年・2024年の調査には顎関節の質問がありません。自覚症状の質問への回答で、診断を受けた人の割合ではありません。

20〜24歳の女性では41.7%が「音がする」と答え、「痛い」は13.9%でした [1]。

働く人では、仕事の負担が大きいほど多くなりました [2]。

②原因は一つではない

噛み合わせだけではなく、くいしばり・頬杖・画面作業・ストレスなどが重なります。

自宅のデスクで、30代の女性がノートパソコンに向かい、頬杖をついて肩を丸め、疲れた表情をしている
原因は、ひとつではありません

関節のクッション(関節円板)のずれや、筋肉のこわばりで症状が出ます。原因は一つではありません。

  • 日中のくいしばり、寝ているあいだの歯ぎしり
  • 頬杖、うつぶせ寝、片側で噛むくせ
  • 長い画面作業 [3]
  • 仕事の負担とストレス [2]

歯を削らない方法から始めます

症状のために歯を削って噛み合わせを変えることは、学会が「行わない」と強く勧めています [9]。

削ったあとに悪化した例が多く報告されたためです [9]。当院も、歯を削らない方法から始めます。

③いつ治る?
多くは自然に軽くなる(期間の目安)

治療しなくても、2.5年で43%が無症状、33%が軽くなりました。
音は残っても、痛みは引く傾向です。

朝の窓辺で、40代の女性が湯気の立つマグカップを両手で持ち、肩の力を抜いている
多くは、時間とともに軽くなります

進行していく病気ではなく、多くは時間とともに軽くなります [6]。

治療をせずに2.5年たったとき(40人)

2.5年後

軽くなった33%
変わらず・治療が必要になった25%
論文の数値。愛知学院大学の前向き研究。関節円板が戻らないタイプで、MRIで確かめた40人を治療せずに追跡[4]。初めから関節の変形が強い人は経過がよくありませんでした。

治療せずに追った別の研究でも、18か月で68.2%が改善しました [5]。開く量と痛みは改善し、音は残りました [5]。

誰が長引くかは事前に分からないため、経過を一緒に見ます [4]。

軽くなっていくまでの間も、経過を一緒に見ていくと安心です。3か月続けて改善しないときは、専門医に相談する目安です [8]。

④治し方
自分でできる開口訓練・マッサージと生活の見直し

学会は、指を使う開口訓練と、寝るときのマウスピースを提案しています。

自宅のデスクのそばで、40代の女性が立ち上がって肩を回し、力を抜いている横顔
画面作業の合間に、肩とあごの力を抜く

学会のガイドラインは、初期治療に自己開口訓練と就寝時のマウスピースを提案しています [8]。

推奨の強さは「弱い」とされています。自然に軽くなる分と区別しにくいためです [6][8]。

開口訓練(ストレッチ)のやり方(学会の指針)

自分でできる開口訓練

  1. 正しく診断してから関節円板のずれによる開きにくさに向く方法です。始める前に歯科で診断を受けます[7][8]。
  2. 入浴時など、体が温まったときに親指と人さし指で、上下の歯を押し広げます[7]。
  3. 10秒×10回を、1日4回目標は35mm以上(最大でも男性55・女性50mm)。無理なく、心地よい範囲で広げます[7]。
  4. 痛みが増えたら、いったんお休み無理のない範囲で続けるのがコツです。3か月続けて変わらなければ専門医へ[7][8]。
日本顎関節学会 初期治療診療ガイドライン2(2011)[7]・2023改訂版[8]。やり方は担当の歯科医師と確かめてから始めてください。

痛いときの対処と、生活の見直し

  • 痛むあいだは、やわらかく小さめの食べ物に
  • 上下の歯が触れていたら、あごの力を抜く
  • 頬杖やうつぶせ寝を、少しずつ減らす
  • 画面作業の合間に、肩とあごの力を抜く [3]

マッサージと温めること

筋肉の痛みが主なら、専門家が筋肉をほぐす手技療法が、開く量の改善で上位でした [10]。

  • 頬やこめかみを、痛くない強さでゆっくりほぐす
  • 蒸しタオルで温めてからだと力が抜けやすい
  • 痛みが強くなる、腫れや熱があるときは、お休みしてご相談を

説明と自己管理だけでも、中期以降はほかの治療と同じくらい改善したという分析もあります[11]。

マウスピース(スプリント)

就寝時のマウスピースも提案されています [8]。合わない装置ではかえって負担になり、睡眠中の呼吸を妨げることもあるため、歯科でお口に合わせて作ると安心です [8]。

腰痛やアトピーへの効果は、試験ではまだ確かめられていません [6]。

参考文献(11件)
  1. 厚生労働省『平成28年(2016)歯科疾患実態調査 結果の概要』表31(口を大きく開け閉めした時、あごの音がする)・表32(あごの痛みがある)。性・年齢階級別
  2. Mori N, Miyanaka D, Tokita M, et al. Job demands and temporomandibular disorders: mediating and moderating effects of psychological distress and recovery experiences. J Occup Health. 2024;66(1):uiad001.PMID: 38258933
  3. Zaitsu T, Inoue Y, Oshiro A, Nishiyama A, Kawaguchi Y, Aida J. Association of visual display terminal time with prevalence of temporomandibular disorder among Japanese workers. J Occup Health. 2022;64(1):e12370.PMID: 36350045
  4. Kurita K, Westesson PL, Yuasa H, Toyama M, Machida J, Ogi N. Natural course of untreated symptomatic temporomandibular joint disc displacement without reduction. J Dent Res. 1998;77(2):361-5.PMID: 9465168
  5. Sato S, Kawamura H, Nagasaka H, Motegi K. The natural course of anterior disc displacement without reduction in the temporomandibular joint: follow-up at 6, 12, and 18 months. J Oral Maxillofac Surg. 1997;55(3):234-8.PMID: 9054911
  6. 日本顎関節学会『顎関節症患者のための初期治療診療ガイドライン 1:スタビライゼーションスプリント』(2010)序文と同意説明の項。自然経過でも予後良好な場合が多い、腰痛・アトピー等への効果を示すRCTは無い
  7. 日本顎関節学会『顎関節症患者のための初期治療診療ガイドライン 2:自己開口訓練』(2011)。指による開口訓練、35mm以上を目標(最大でも男性55・女性50mm)、10秒×10セット×1日4回、無理をしない
  8. 日本顎関節学会『顎関節症初期治療診療ガイドライン 2023改訂版』(Minds c00780)。自己開口訓練と上顎型スタビリゼーション口腔内装置を提案(弱い推奨、エビデンスの確実性「非常に低」)、3か月で改善しなければ専門医へ、装置の害と睡眠中の呼吸
  9. 日本顎関節学会『顎関節症患者のための初期治療診療ガイドライン 3:咬合調整』(2012)。症状改善を目的とした咬合調整は行わないことを強く推奨(GRADE 1D)
  10. Zhang L, Liu M, Li X, Zhao C. Comparative effectiveness of nonpharmacological therapies for adult myogenic temporomandibular disorders: a network meta-analysis of randomized trials. BMC Oral Health. 2026;26(1).PMID: 42365270
  11. Ferland G, Vincent R, Desmeules F, Cormier AA, Huon M, Pitance L. Patient Education and Self-Management in Adults With Temporomandibular Disorders: Results From a Systematic Review With Meta-Analysis. J Oral Rehabil. 2026;53(7):1394-1408.PMID: 41858088
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