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紅葉の日本庭園を散歩する夫婦

骨が少ない場合

「骨が足りない」と言われた方へ。骨を増やす処置や、増やさずにすむ方法から、合うものを一緒に選べます。

①なぜ骨が足りなくなるのか

歯を失うと、その部分の骨は使われなくなりやせます。
上の奥歯では、空洞(上顎洞)が近づくことも関係します。

上の奥歯を抜いた直後と数か月後の断面を2コマで比べ、骨がやせて低くなり、上の空洞(上顎洞)が近づく様子
歯を失った場所の骨は使われなくなり、少しずつやせる

インプラントには骨の幅と高さが必要です。抜いたあとの骨はやせ、とくに最初の数か月の変化が大きいとされます。

骨がやせやすい方・場所

  • 歯周病で歯を失った方
  • 入れ歯を長く使っていた方
  • 上の奥歯:上顎洞(鼻につながる空洞)が広がり、高さが足りなくなりやすい
  • 下の奥歯:神経との距離に気を配る

骨は何ミリ必要か
CTで測る

あごの骨をCTで撮った画像を、画面に断面ごとに並べて表示している様子
CTの画像で、骨の高さと幅を測ります

必要な量はインプラントの長さと太さで変わるため、お一人ずつ測って確かめます。

当院では歯科用CTで、骨の幅・高さ・奥行きと、神経・上顎洞の位置を3次元で確かめます。

CTで測ると、増やさずに入れられる場合や、短いインプラントで対応できる場合があります。

②骨を増やす3つの処置

幅や高さを足すGBR、上顎洞の底を上げるサイナスリフト、抜歯時にやせを抑えるソケットプリザベーションです。

骨を増やす3つの処置を並べた断面。GBRで横と上に材料を足す、上顎洞の底を持ち上げて材料を入れる、抜いた穴に材料を入れる
GBR・サイナスリフト・ソケットプリザベーション

どれも骨の足場になる材料を置き、ご自身の骨が数か月かけて育つのを待つ処置です。

骨を増やす3つの処置(場面と特徴)

GBR(骨誘導再生)サイナスリフトソケットプリザベーション
どんなとき骨の幅や高さが足りないとき(上下どちらも)上の奥歯で、上顎洞までの骨の高さが足りないとき抜歯と同時に、骨のやせを抑えたいとき
何をする骨のもとを置き、膜で覆って、骨が育つ場所を守る上顎洞の底の膜を持ち上げ、できた空間に骨のもとを入れる抜いた穴に骨のもとを入れ、ふたをして治るのを待つ
待つ期間の目安数か月〜半年以上。インプラントと同時に行えることもある横から開ける方法で半年前後。小さく持ち上げる方法は同時に入れることが多い4〜6か月ほど待ってからインプラントを入れる
主な負担腫れ・痛みが増える。膜が露出することがある上顎洞の膜が破れることがある。鼻の症状が出ることがある通常の抜歯より少し腫れる程度のことが多い
期間と負担は目安です。骨の状態、処置の範囲、お身体の状態によって変わります。出典:Avila-Ortiz ら 2019[7]、Esposito ら 2014[2]。

GBR
骨の幅や高さを足す

幅を足す場合は比較的安定し、インプラントと同時に行えることもあります。

高さを足す場合はより繊細な処置になり、合併症は12.1%と報告されています [5]。

サイナスリフト
上の奥歯の高さを足す

上顎洞の底にある薄い膜を持ち上げ、できた空間に骨のもとを入れます。

とくに大切に守るのがこの膜です。破れると生存率が下がる関連が示されているため、丁寧に持ち上げます [6]。

ソケットプリザベーション
抜歯のときに骨を守る

抜歯だけの場合と比べ、やせる量を幅で約2.0mm減らせたとされます [7]。

ただしやせをすべて防げるわけではなく、あとの骨造成が不要になるかは、まだ確かめられていません [8]。

③骨を増やすと、何が変わるか

骨を増やした場合も、残る割合は増やさない場合と大きく変わらないとされます。
そのぶん期間・費用・腫れは増えるため、両方を並べて選びます。

水平に釣り合った天秤。片方の皿に砂時計と氷のう、もう片方の皿に骨にしっかり支えられたインプラントが乗っている
増える期間と負担、得られる骨の支え。天秤にかけて決める

残る割合は、大きく変わらない

研究のまとめでは、骨造成をした場合も生存率は大きく変わらないとされます。当院の成績ではありません。

骨を増やした場合と、増やさなかった場合の生存率

骨造成なし94〜97%
GBR併用92〜96%
サイナスリフト併用90〜95%
ソケットプリザベーション93〜97%
85%100%

インプラントが口の中に残っている割合(生存率)。研究ごとに追跡期間が異なります

「残っている」ことと「問題なく機能している」ことは同じではありません。研究の数字であり、当院の成績ではありません。

ただしサイナスリフトを併用した場合は合併症が多い傾向があり、丁寧に計画します [3]。

術式と歯ぐきの扱いが、結果を支えます

骨造成は術式・材料・歯ぐきの扱いで結果が左右されやすく、成功率は研究によって61.5%から100%まで幅があります [1]。

途中で合併症が起きると増やした骨が減ることもあり、経過をていねいに確かめます [9]。

骨造成のデメリット:期間・費用・腫れが増えます

④骨を増やさない選択肢

骨を増やさずにすむ方法もあります。
短い・細いインプラントや、角度をつけて入れる方法です。

骨を増やさずに入れる3つの方法を並べた断面。短いインプラント、細いインプラント、上顎洞を避けて角度をつけたインプラント
短い・細い・角度をつける。骨を増やさない入れ方もある

短いインプラント(6〜8mm程度)

上の奥歯では、サイナスリフトを併用した長いものと生存率に差がなく、腫れや合併症が少ないとされます [10]。

サイナスリフト側で合併症が約4.8倍多いとするレビューもあります [2][11]。

上の奥歯で骨の高さが足りないとき:2つの考え方

サイナスリフト+長いインプラント
  • 骨の高さを足してから、標準的な長さのインプラントを入れる
  • 長い追跡データがあり、まわりの骨を厚く確保できる
  • 期間・費用・腫れが増え、上顎洞の膜が破れることがある[2][3]
短いインプラント
  • 残っている骨の中に、短いインプラントを入れる
  • 手術が1回で済み、腫れや上顎洞の合併症が少ない[10][11]
  • 5年を超える長期の成績は、まだ長いものより少し劣る可能性がある[12]
どちらが優れているかではなく、特徴の違いです。残っている骨の高さや、噛む力、全身の状態で選び方が変わります。出典:Esposito ら 2014[2]、Yan ら 2019[10]、Alenezi ら 2025[11]、Xu ら 2020[12]。

短いインプラントで気をつけたいこと

5年以上では、長いものより生存率がやや低い可能性があります(とくに上あご)。かぶせる歯の破折・ゆるみもやや多い報告があります [12]。

そのほかの選択肢

どれが合うかは、CTで測った骨の量・噛み合わせ・全身の状態・ご希望で決まります。

参考文献(12件)
  1. Clementini M, Morlupi A, Canullo L, Agrestini C, Barlattani A. Success rate of dental implants inserted in horizontal and vertical guided bone regenerated areas: a systematic review. Int J Oral Maxillofac Surg. 2012;41(7):847-52.PMID: 22542079
  2. Esposito M, Felice P, Worthington HV. Interventions for replacing missing teeth: augmentation procedures of the maxillary sinus. Cochrane Database Syst Rev. 2014;(5):CD008397.PMID: 24825543
  3. Romero-Millán J, et al. Implants in the Posterior Maxilla: Open Sinus Lift Versus Conventional Implant Placement. A Systematic Review. Int J Oral Maxillofac Implants. 2019;34(4):e65-e76.PMID: 30807622
  4. Valente NA, Marchio V, Troiano G, et al. Narrow-diameter versus standard-diameter implants placed in horizontally regenerated bone in the rehabilitation of partially and completely edentulous patients: A systematic review. Int J Oral Implantol (Berl). 2022;15(1):11-33.PMID: 35266665
  5. Urban IA, Montero E, Monje A, Sanz-Sánchez I. Effectiveness of vertical ridge augmentation interventions: A systematic review and meta-analysis. J Clin Periodontol. 2019;46 Suppl 21:319-339.PMID: 30667522
  6. Lee CT, Choksi K, Shih MC, Rosen PS, Ninneman S, Hsu YT. The Impact of Sinus Floor Elevation Techniques on Sinus Membrane Perforation: A Systematic Review and Network Meta-analysis. Int J Oral Maxillofac Implants. 2023;38(4):681-696.PMID: 37669518
  7. Avila-Ortiz G, Chambrone L, Vignoletti F. Effect of alveolar ridge preservation interventions following tooth extraction: A systematic review and meta-analysis. J Clin Periodontol. 2019;46 Suppl 21:195-223.PMID: 30623987
  8. Atieh MA, Alsabeeha NH, Payne AG, Ali S, Faggion CM Jr, Esposito M. Interventions for replacing missing teeth: alveolar ridge preservation techniques for dental implant site development. Cochrane Database Syst Rev. 2021;4(4):CD010176.PMID: 33899930
  9. Alotaibi FF, Buti J, Rocchietta I, Mohamed Nazari NS, Almujaydil R, D'Aiuto F. Premature Bone Resorption in Vertical Ridge Augmentation: A Systematic Review and Network Meta-Analysis of Randomised Clinical Trials. Clin Oral Implants Res. 2025;36(7):787-801.PMID: 40116110
  10. Yan Q, Wu X, Su M, Hua F, Shi B. Short implants (≤6 mm) versus longer implants with sinus floor elevation in atrophic posterior maxilla: a systematic review and meta-analysis. BMJ Open. 2019;9(10):e029826.PMID: 31662363
  11. Alenezi AT, et al. Effectiveness of Short Implants Versus Long Implants With Sinus Floor Elevation in Patients With Atrophic Posterior Maxilla: A Systematic Review and Meta-Analysis. Cureus. 2025;17(7):e89103.PMID: 40747176
  12. Xu X, Huang J, Fu X, et al. Short implants versus longer implants in the posterior alveolar region after an observation period of at least five years: A systematic review and meta-analysis. J Dent. 2020;100:103386.PMID: 32479956
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