①インプラント手術のリスクを、前もって知る
下あごでは手術直後に100人中13人ほどにしびれが出ますが、多くは戻り、1年後に残るのは3人ほどと報告されています。

6つのリスクを、研究の頻度とともにご説明します。
下あごのインプラント手術のあと、しびれなどの感覚の変化があった人(100人あたり・研究の数字)
手術から10日後13人
手術から1年後3人
感覚の変化があったなかった
多くは、時間とともに戻る
80%が6か月以内に元に戻ったと報告されています[1]。1年を過ぎても残る方もいるため、神経までの距離を測って計画します。
②6つのリスクと、その対策
出血・神経損傷・傷口が開く・感染・誤飲誤嚥・熱による骨の損傷の6つです。
検査・手順・術後の管理を重ねて、起こりにくくします。

主なリスクは次の6つです。
6つのリスクの要点(特徴の整理。頻度は研究の数字)
| どんなこと | 主な対策 | |
|---|---|---|
| 出血 | 手術中・手術後の出血。まれに口の底の血管を傷つけると、腫れで気道が狭くなる重い合併症[4][5] | CTで骨の形と血管の位置を確認。血液をさらさらにする薬の事前申告 |
| 神経損傷 | 下あごの神経に近いと、唇・あごのしびれ。短期で13%、1年後で3%[1] | CTで神経までの距離を測り、1mm以上の余裕を取る[2] |
| 傷口が開く | 縫った歯ぐきが開き、治りが遅れる。研究では2〜3%ほど[7] | 強いうがい・手術した部分の歯みがき・喫煙をお休みする。術後の確認 |
| 感染 | 傷口や骨の感染。インプラントが結合しない原因に | 手術前の抗生物質1回[6]。お口の中を整えてから手術 |
| 器具の誤飲誤嚥 | 小さな部品や器具が喉に落ち、飲み込む・気管に入る。高齢の方に多い[8] | 喉にガーゼを置く、器具に糸を結ぶなどの工夫 |
| 熱による骨の損傷 | 骨を削るときの熱で骨の細胞が傷み、結合しにくくなる | 注水しながら低速で削る。超音波の器具の使用 |
1. 出血
翌日くらいまで、にじむ出血が続くことがあり、多くはガーゼを噛むことで止まります。血液をさらさらにする薬は、自己判断でやめずに事前にお伝えいただければ、続け方を一緒に決めます。
まれに重い出血があり、下あごの前のほうでは腫れで気道が狭くなることがあります[4][5]。CTで血管の位置を確かめて備えます。
2. 神経損傷
下あごの神経(下歯槽神経)に近すぎると、しびれや感覚の鈍さが出ます。頻度と回復は次の節で。
3. 傷口が開く(創部離開)
縫った歯ぐきが開くと治りが遅れ、感染の入り口になります[7]。次のことを数日お休みすると、傷口を守れます。
- 強いうがい
- 手術した部分の歯みがき
- 喫煙
- 傷口を舌で触ること
4. 感染

感染すると薬だけで治すのは難しく、多くは取り外すことになります[6]。そのため、次の2つで前もって予防します。
5. 器具の誤飲・誤嚥
小さな器具や部品が喉に落ち、飲み込む(誤飲)か、気管に入る(誤嚥)ことがあります[8]。
取り出すには入院や処置が必要になるため、喉にガーゼを置く、器具に糸を結ぶなどで防ぎます。
6. 熱による骨の損傷

ドリルの熱で骨の細胞が傷むと、結合しにくくなります。水をかけながら低い回転数で削って防ぎます。
手術用ガイドで熱が上がるという指摘もありますが、骨が傷む温度には届かないことが多いとされます[9]。
③しびれは、どのくらいの割合で、どこまで回復するか
神経までの距離が1mm以上なら0%、1mm未満で68%という分析があります。
距離を測って計画することがいちばんの備えで、出ても多くは一時的です。

インプラントと下あごの神経の管との距離と、感覚の変化が出た割合(研究の数字)
分かれ目は「神経までの距離」
平面のレントゲンでは距離は正確にわかりません。歯科用CTで測り、長さと位置を決めます[2]。
もし出た場合は
多くは一時的で、6か月間は定期的に確かめます[1]。
1年を過ぎても残る方が100人中3人ほどいます[1]。その場合も専門の医療機関での治療につなぎ、早い対応ほど回復しやすいとされます[10]。
しびれに気づいたら、すぐご連絡ください。早めの対応が回復を助けます。
④検査と計画で、減らせること
CTで骨と神経・血管を確かめ、持病とお薬をうかがう。
この検査と計画で、出血・神経損傷・熱の損傷を減らせます。

欧州のインプラント学会は、画像診断を「治療計画に欠かせない要素」とし、CTは少ない線量で使うべきとしています[3]。
手術の前に確かめること
- 持病とお薬をうかがう血液をさらさらにする薬、骨粗しょう症の薬、糖尿病、高血圧など。自己判断で薬をやめず、お薬手帳をお持ちください。必要があれば主治医に照会します。
- 歯科用CTで三次元に見る骨の高さ・幅・奥行き、骨の硬さ、神経の管と血管の位置を確かめ、インプラントの長さと位置を決めます。
- 神経・血管からの距離を測る下あごでは神経の管まで1mm以上の余裕を取り、骨の内側を突き抜けない向きと長さを選びます。
- お口の中を整える歯石取りと歯周病の治療で、感染の原因となる細菌を減らしてから手術に進みます。
- 手術中は全身の状態を見守る血圧・脈拍・血中の酸素を測る生体モニターをつけて手術を行います。
- 手術後の確認数日後に傷口を確かめ、しびれや腫れの変化をうかがいます。気になることがあれば早めにご連絡を。
検査から術後まで、備えを重ねる
出血のしやすさや傷の治りは、CTだけでは分かりません。検査・計画・手術・術後の管理を重ねて、リスクを小さくします。
⑤静脈鎮静法について
点滴でうとうとした状態で受ける方法で、緊張がやわらぎます。
自費で、専門の医師との日程調整が必要です。
鎮静そのものにもリスクがあります。

手術が怖い方の選択肢です。点滴でうたた寝のような状態にし、呼びかけには答えられます。
研究で報告されていること

不安が減り、満足度が上がったと報告されています[11]。脈拍と血圧が安定するともされます[12]。
鎮静そのもののリスクと、受けるときの準備
鎮静の薬には呼吸が浅くなる作用があり[12]、歯科麻酔を専門とする医師がモニターで見守りながら調節します。
- 手術の前は数時間の絶飲食
- 当日の運転はお休み
- 効くまで・戻るまで各10〜15分
- 保険がきかず自費
- 専門の医師との日程調整が必要で、少し先の日程になることがある
効き方には個人差があり、鎮静そのものにもリスクがあります。持病や体調を含め、歯科医師と一緒に決めましょう。
Q&A
参考文献(12件)
- Lin CS, Wu SY, Huang HY, Lai YL. Systematic Review and Meta-Analysis on Incidence of Altered Sensation of Mandibular Implant Surgery. PLoS One. 2016;11(4):e0154082. doi:10.1371/journal.pone.0154082PMID: 27100832
- Peña-Cardelles JF, Markovic J, Akhondi S, et al. Inferior alveolar nerve damage related to dental implant placement. A systematic review and meta-analysis. Med Oral Patol Oral Cir Bucal. 2025;30(4):e578-e589. doi:10.4317/medoral.27125PMID: 40192114
- Harris D, Horner K, Gröndahl K, et al. E.A.O. guidelines for the use of diagnostic imaging in implant dentistry 2011. A consensus workshop organized by the European Association for Osseointegration at the Medical University of Warsaw. Clin Oral Implants Res. 2012;23(11):1243-1253. doi:10.1111/j.1600-0501.2012.02441.xPMID: 22432473
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