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歯周病と糖尿病

糖尿病と歯周病は、互いに関係しています。糖尿病があると歯ぐきの病気が進みやすいことと、歯周病の治療で血糖がどう変わるかを、研究をもとにご紹介します。

①糖尿病があると、歯周病になりやすく進みやすい

糖尿病のある方は、歯周病が起きやすく、進みやすいことが分かっています。
定期的な検査で、歯を守ることにつながります。

血糖を測る器具と歯ぐきの断面が、互いに影響しあう関係を表す絵
糖尿病があると、歯周病は進みやすくなります

研究でいちばんはっきりしているのは、糖尿病があると歯周病になりやすく、進みやすいことです。

  • 13の研究のまとめ:歯周病が起きたり進んだりする危険が約1.9倍[1]
  • 7つの研究・約30万人のまとめ:新たに歯周病になる危険が約1.2倍[2]
  • 48件のレビューのうち44件が、糖尿病の影響を報告[6]

なぜ糖尿病だと歯ぐきが弱くなるのか

血糖の高い状態が続くと、炎症を起こす物質が増え、細菌から体を守る力が弱まるとされています[3]。そのため、歯ぐきの炎症が治まりにくくなります。

進みやすいうえに、気づきにくい

歯周病は痛みが出にくい「静かな病気」です[6]。定期的な検査で、早めに見つけましょう。

糖尿病と歯周病について、研究で分かっていること

はっきり分かっていること

  • 糖尿病のある方は、歯周病が起きやすく進みやすい(約1.2〜1.9倍)[1][2]
  • 48件のレビューのうち44件が、糖尿病の影響を報告[6]
  • 歯周病のある糖尿病の方は、ない方よりHbA1cが高い傾向がある[3]

報告はあるが、さらに研究が進められていること

  • 歯周病のある方は、糖尿病を新たに発症する危険がやや高い(約1.3倍)[2]
  • 歯周病の治療で血糖が下がるかどうか(次の節で紹介)[4][5][6]
追跡研究のレビュー[1][2]、国際的な合意文書[3]、歯周治療のエビデンス集[6]をもとに作成。個人差があります。

②歯周病の治療で、血糖は下がるのか

治療から3〜4か月後に、HbA1cが平均0.4%ほど低かったという大きなまとめがあります。
長く続くかどうかは、いまも研究が続いています。

若葉の丘の間で、1本の小道が2つに分かれている風景
研究で、少しずつ分かってきています

歯周病の治療と血糖の関係は、多くの研究で調べられています。

「3〜4か月で、平均0.43%低かった」というまとめ

35の比較試験をまとめた2022年のコクランレビューでは、治療を受けた方は3〜4か月後のHbA1cが平均0.43%低かったと報告されています[4]。

歯周病の治療を受けた方のHbA1c(受けなかった方との差)

治療のあとHbA1cの差(平均)調べた研究
3〜4か月0.43% 低い30の研究・2,443人
6か月0.30% 低い12の研究・1,457人
12か月0.50% 低い1つの研究・264人
Simpson ら、コクランレビュー 2022[4] をもとに作成。治療を受けなかった方との平均の差で、ご自身の値がこれだけ下がるという意味ではありません。

「血糖の改善は見られなかった」というまとめ

歯周治療のエビデンス集では、質の高い比較試験5件で、血糖の改善は報告されなかったとされています[6]。結論の違いは、集めた研究の数の違いによるものです[4][6]。

この数字の受け止め方

0.4%前後の差は、HbA1cが7.5%の方なら7.1%前後にあたります。お薬ひとつ分よりは小さいことが多い差です[4]。

  • 質の高い研究は、35件のうち2件[4]
  • 追跡は3〜12か月まで。その先は、これからの研究で明らかになる[3][4]
  • 食事や運動の影響と分けて考えにくい[6]

糖尿病の治療と、歯周病の治療は並行して進めます。歯周病の治療を理由に、お薬を減らしたり止めたりしないでください。

③歯周病のケアは、歯を守るために

血糖への効果にかかわらず、歯周病のケアはご自身の歯を守るためのものです。
糖尿病のある方こそ、歯ぐきの健康を大切にしましょう。

60代の男性が、家の食卓で野菜の多い食事をゆっくり噛んで食べている
歯を守ることは、噛めることを守ること

糖尿病のある方は歯周病が進みやすいため[1][2]、歯周病のケアはまず歯を守るために行います。

噛める状態を保つこと

歯を失うと、食事がやわらかいものに偏りがちです。食事が土台となる糖尿病の治療でも、よく噛める状態を保つことは大切だと考えています。

糖尿病のある方も、安心して治療を受けられます

歯周病の治療は、糖尿病のある方にも安全に行えるとされています[3][4]。治療の内容は「PMTC(機械的プロフェッショナルケア)とは」の記事でご紹介しています。

  • 出血・腫れ・口臭・ぐらつきが気になったら、早めにご相談を
  • 症状がなくても、定期的に歯ぐきの検査を
  • 毎日のホームケアと歯間の清掃(完璧でなくて大丈夫です)
  • タバコを吸う方は、さらに注意が必要です(「タバコと歯周病」の記事へ)

④主治医と歯科医師の連携
両方にお伝えください

主治医には歯ぐきの状態を、歯科医師には糖尿病のことと最近のHbA1cをお伝えください。

歯科医師が、患者さんが持ってきた検査結果の紙を一緒に見ている
主治医と歯科の、両方に伝えてください

国際的な合意文書では、内科医と歯科医師が互いに受診を勧め合うことが推奨されています[3]。

歯科にお伝えいただきたいこと

  • 糖尿病の種類と治療(飲み薬・インスリンなど)
  • 最近のHbA1cの値
  • 低血糖を起こしたことがあるか
  • ほかの合併症があるか

血糖の状態に合わせて、治療の進め方や外科的な処置ができるかを判断します。お薬手帳と、最近の血液検査の結果をお持ちください。

糖尿病のある方の、歯周病の治療の進め方(一例)

  1. 糖尿病のことを歯科に伝えるお薬手帳と最近のHbA1cがわかるもの(検査結果・糖尿病連携手帳など)をお持ちください。
  2. 歯ぐきの検査歯ぐきの溝の深さ・出血・歯のぐらつきを測り、レントゲンで骨の状態を確かめます。
  3. 必要に応じて主治医に照会血糖の状態や処置ができるかについて、歯科から主治医に手紙でお尋ねすることがあります。
  4. 歯周基本治療歯ぐきの溝の中の汚れと歯石を取り、ホームケアを見直します。糖尿病のある方にも安全に行えるとされています[3][4]。
  5. 再検査と、その後のメンテナンス治り方を確かめて、通う間隔を決めます。糖尿病のある方は進みやすいため、間隔を短めにすることがあります。
  6. 主治医への報告歯ぐきの状態を主治医にもお伝えし、両方で見守ります。
国際的な合意文書[3]と歯周治療のエビデンス集[6]をもとに作成。進め方は血糖の状態・歯周病の程度で変わります。

食事を抜いてお薬だけを飲むと、低血糖になるおそれがあります。いつもどおりに食事とお薬をとってお越しください。気分が悪くなったら、すぐにお知らせください。

参考文献(7件)
  1. Nascimento GG, Leite FRM, Vestergaard P, Scheutz F, López R. Does diabetes increase the risk of periodontitis? A systematic review and meta-regression analysis of longitudinal prospective studies. Acta Diabetol. 2018;55(7):653-667.PMID: 29502214
  2. Stöhr J, Barbaresko J, Neuenschwander M, Schlesinger S. Bidirectional association between periodontal disease and diabetes mellitus: a systematic review and meta-analysis of cohort studies. Sci Rep. 2021;11(1):13686.PMID: 34211029
  3. Sanz M, Ceriello A, Buysschaert M, et al. Scientific evidence on the links between periodontal diseases and diabetes: Consensus report and guidelines of the joint workshop on periodontal diseases and diabetes by the International Diabetes Federation and the European Federation of Periodontology. J Clin Periodontol. 2018;45(2):138-149.PMID: 29280174
  4. Simpson TC, Clarkson JE, Worthington HV, et al. Treatment of periodontitis for glycaemic control in people with diabetes mellitus. Cochrane Database Syst Rev. 2022;4(4):CD004714.PMID: 35420698
  5. Di Domenico GL, Minoli M, Discepoli N, Ambrosi A, de Sanctis M. Effectiveness of periodontal treatment to improve glycemic control: an umbrella review. Acta Diabetol. 2023;60(1):101-113.PMID: 36261746
  6. 内藤徹ほか『知ってて得した!歯周治療に活かせるエビデンス』クインテッセンス出版(Quint Study Club) PART① 病因(糖尿病:レビュー48件中44件、レビュー8件中改善3件、RCT5件で報告なし、交絡の指摘、silent disease)
  7. Cai Y, Lai Y, Peng Z, et al. Evidence-based summary and clinical practice suggestions of health education for diabetes mellitus with periodontitis. BMC Oral Health. 2026;26(1).PMID: 42129713
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