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朝の海辺で、サーフボードを抱えて朝日を見る男性

タバコと歯周病

タバコが歯ぐきにどのくらい悪いのか、なぜ気づけないのか。責めるためではなく、歯ぐきに起きていることを知っていただくための記事です。

①タバコで、歯周病はどれくらい増えるか

米国の1万人超の調査では、吸う人は歯周病が約4倍でした。
本数が多いほど高くなります。

歯と歯ぐきの断面に、1本のタバコから細い煙が流れてきている絵
タバコは、歯ぐきと骨の守りを弱めます

米国の国民健康栄養調査(NHANES III)では、12,329人を歯科医師が検査しました[1]。年齢や収入をそろえても、吸う人は歯周病が約4倍でした[1]。

本数が多いほど、危険性は上がる

  • 1日9本以下でも約2.8倍[1]
  • 1日31本以上では約5.9倍[1]
  • 「少しなら大丈夫」という本数は見つかっていない[1]

吸わない人と比べた、歯周病のなりやすさ(オッズ比)

吸ったことのない人

基準1倍

以前吸っていた人

1.68倍

いま吸っている人(1日9本以下)

2.79倍

いま吸っている人(全体)

いま吸っている人(1日31本以上)

出典:Tomar & Asma 2000、米国 NHANES III(12,329人)[1]。日本人で同じ数字になるとは限りません。

時間を追った研究でも、同じ方向

14研究のまとめでは、喫煙で歯周病が起きたり進んだりする危険性が85%高まると推定されています[3]。日本の研究でも、喫煙は歯を失う予測要因のひとつでした[4]。

②吸わない人も
受動喫煙の影響

吸わなくても、家庭や職場で煙を吸い込んでいる人は、歯周病が約1.5倍と報告されています。

家の形の中に家族3人。窓の外から細い煙が入りかけている絵
吸わない家族にも、煙は届きます

吸わない方にも、関わりがあることがあります。14研究・115,925人の分析では、受動喫煙のある人は歯周病が約1.5倍でした[5][6]。

まだ、はっきりしないこと

  • 受動喫煙と「歯を失うこと」の関係[5]
  • 影響の大きさ(測り方で変わる)[6]
  • 子どもへの影響(研究の確かさはまだ低い)[7]

ご家族に吸う方がいる場合は、検査のときにお知らせください。炎症の出方を読む手がかりになります。

③喫煙者の歯ぐきは「静か」
気づけない理由

ニコチンで血管が縮み、炎症があっても腫れにくく出血しにくくなります。
進んでいても気づきにくいため、検査で確かめます。

同じ汚れがついても、吸わない人は歯ぐきが赤く腫れ、吸う人は腫れにくい、という断面の比較
吸う人の歯ぐきは、炎症があっても目立ちにくい

歯周病のいちばん早いサインは、歯みがきのときの出血です。ところがニコチンで血の巡りが減ると、炎症があっても血が出にくくなります[2]。

出血を感じる人は、吸う人で半分

  • 出血を感じた人:吸わない人51%、吸う人25%[8]
  • 汚れの量は、両者で同じだった[8]

同じ汚れがついても、歯ぐきの見え方が違う

吸わない人の歯ぐき
  • 炎症があると赤く腫れ、歯みがきで血がにじむ
  • 出血が「気づくきっかけ」になる
  • 歯科医院の検査でも、出血が炎症の目安として使える
吸う人の歯ぐき
  • 炎症があっても腫れにくく、血が出にくい(ニコチンの血管収縮)
  • 深いポケット・歯ぐきの下がり・骨の減りは、むしろ多い
  • 出血に頼らず、ポケットの深さとレントゲンで丁寧に見ていく
出典:Preber & Bergström 1986[8]、Lie ら 1998[9][2]。吸う方でも出血する場合はあります。

静かな一方で、中では進んでいる

吸う方は、深いポケットが多く、骨が減り、失う歯も多いことが知られています[2]。「血が出ないから大丈夫」とは限りません。

④禁煙すると、歯ぐきはどうなるか

やめてからの年数が長いほど危険性は下がり、11年以上で吸わない人に近づきます。
治療の効きも少し良くなります。

朝の公園を、40代の男性が気持ちよさそうに散歩している
やめた年数が長いほど、歯ぐきは戻っていきます

良い知らせもあります。やめて0〜2年で約3.2倍、11年以上では約1.2倍まで下がっていました[1]。

禁煙してからの年数と、歯周病のなりやすさ

吸っている約4倍(オッズ比3.97)
0〜2年約3.2倍(3.22)
11年以上約1.2倍(1.15)。吸わない人とほぼ同じ
吸わない人1倍(基準)
出典:Tomar & Asma 2000、米国 NHANES III[1]。一時点の調査のため「やめたから下がった」と証明したものではありません。

禁煙した人は、吸わない人と差がない

6件のまとめでは、禁煙した人の危険性は吸ったことのない人と差がありませんでした[10]。歯石取りのあとの治り方も、少し良いと報告されています[10]。

効果を、大きく見積もりすぎない

禁煙による改善は3〜6か月では見られたものの、12か月では差がはっきりしなくなりました[11]。著者らは「ささやかな改善」と表現しています[11]。

やめられないのは、意志が弱いからではありません

やめられないのは、ニコチンへの依存という病気の面があるからです。禁煙の支援は、歯周病の治療の一部として推奨されています[12]。

禁煙外来のご紹介は、相談時にご説明します。

禁煙の方法やお薬は、ご自身で判断せず、必ず歯科医師・医師にご相談ください。インプラントを考えている方は、手術前の禁煙の目安を対になる記事でお伝えしています。

⑤加熱式・電子タバコなら大丈夫か

紙巻きより影響は小さい可能性がありますが、吸わない人と同じとは言えません。
加熱式はまだデータが足りません。

紙巻きタバコ、加熱式タバコ、電子タバコの3つの形のシルエット
形が違っても、吸わない人と同じとは言えません

加熱式・電子タバコにもニコチンが含まれます[2]。紙巻きより小さいかもしれませんが、吸わない人と同じとは言えません。

紙巻きがいちばん悪く、電子・加熱式は「中間」

31研究のレビューでは、紙巻きがいちばん悪く、電子タバコと加熱式は「中間」でした[13]。

  • 電子タバコ:吸わない人よりポケットが深い[13]
  • 電子タバコ:治療の効きが悪く、紙巻きと同じ傾向[14]
  • 加熱式:研究が少なく、エビデンスは限られている[13]

タバコの種類と、いまわかっていること

はっきりしている

  • 紙巻きタバコは、歯周病の危険性を上げ、治療の効きを悪くする[1][3][10]
  • 吸う本数が多いほど、危険性は高くなる[1]
  • 吸う人の歯ぐきは出血しにくく、サインが隠れる[8][9]

疑われている

  • 電子タバコでも、ポケットが深く、治療の効きが悪い傾向がある[13][14]
  • 受動喫煙でも、歯周病が約1.5倍になる[5][6]

まだ足りない

  • 加熱式タバコ(たばこ葉を加熱するタイプ)の、歯ぐきへの長期の影響[13]
  • 禁煙が歯ぐきをどこまで戻すか(1年を超える効果)[11]
出典は各項目の番号のとおり。「データが足りない」は「影響が無い」という意味ではありません。

「データが足りない」は「安全」とは違います。種類を変えるより、本数を減らしてやめる方向が近道です。

参考文献(14件)
  1. Tomar SL, Asma S. Smoking-attributable periodontitis in the United States: findings from NHANES III. J Periodontol. 2000;71(5):743-51.PMID: 10872955
  2. 内藤徹ほか『知ってて得した!歯周治療に活かせるエビデンス』クインテッセンス出版(Quint Study Club) PART① 病因「喫煙」。NHANES III の罹患率(喫煙者15.6%/過去喫煙者10.5%/非喫煙者4.9%)、喫煙者の口腔の特徴、BoP が少ない理由(ニコチンによる虚血)
  3. Leite FRM, Nascimento GG, Scheutz F, López R. Effect of Smoking on Periodontitis: A Systematic Review and Meta-regression. Am J Prev Med. 2018;54(6):831-841.PMID: 29656920
  4. Furuta M, Honda T, Kageyama S, et al. Development of simple predictive models of tooth loss in the community setting. J Periodontol. 2026;97(8):1795-1806.PMID: 41761788
  5. Ye F, et al. Environmental tobacco smoke exposure and periodontitis in non-smokers: a systematic review and meta-analysis. BMC Oral Health. 2026;26(1).PMID: 41772555
  6. Akinkugbe AA, Slade GD, Divaris K, Poole C. Systematic Review and Meta-analysis of the Association Between Exposure to Environmental Tobacco Smoke and Periodontitis Endpoints Among Nonsmokers. Nicotine Tob Res. 2016;18(11):2047-2056.PMID: 27083214
  7. Oliveira LM, et al. Is secondhand smoke exposure associated with poor periodontal status in children and adolescents? A systematic review and meta-analysis. Eur Arch Paediatr Dent. 2022;23(4):513-525.PMID: 35429295
  8. Preber H, Bergström J. Cigarette smoking in patients referred for periodontal treatment. Scand J Dent Res. 1986;94(2):102-8.PMID: 3458283
  9. Lie MA, Timmerman MF, van der Velden U, van der Weijden GA. Evaluation of 2 methods to assess gingival bleeding in smokers and non-smokers in natural and experimental gingivitis. J Clin Periodontol. 1998;25(9):695-700.PMID: 9763323
  10. Leite FRM, Nascimento GG, Baake S, Pedersen LD, Scheutz F, López R. Impact of Smoking Cessation on Periodontitis: A Systematic Review and Meta-analysis of Prospective Longitudinal Observational and Interventional Studies. Nicotine Tob Res. 2019;21(12):1600-1608.PMID: 30011036
  11. Xie Y, Ma Y, Geng Z, et al. Association between smoking cessation and periodontitis progression: a systematic review and meta-analysis of prospective observational studies. Front Oral Health. 2026;7:1900393.PMID: 42591600
  12. Ramseier CA, Woelber JP, Kitzmann J, Detzen L, Carra MC, Bouchard P. Impact of risk factor control interventions for smoking cessation and promotion of healthy lifestyles in patients with periodontitis: A systematic review. J Clin Periodontol. 2020;47 Suppl 22:90-106.PMID: 31912512
  13. Di Palo MP, et al. Periodontal and Peri-Implant Status Among Users of Different Inhaled Tobacco and Nicotine Products: A Systematic Review. Dent J (Basel). 2026;14(9).PMID: 42782949
  14. Gould SM, et al. Effect of Vaping on Treatment Outcomes in Patients With Gingivitis, Periodontitis, and/or Peri-Implant Disease: A Systematic Review. Clin Exp Dent Res. 2026;12(5):e70456.PMID: 42743382
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