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歯根端切除術
根の治療で治らないときの手術

根の治療を続けても、根の先の膿がなかなか治らない。そんなとき、歯を残すためのもう一つの方法が歯根端切除術です。

①歯根端切除術とは

歯ぐきの側から、膿の原因になっている根の先を取り除き、歯を残す手術です。
当院では前歯から小臼歯を中心に行います。

前歯の断面の模型。根の治療をした歯の、根の先の骨の中に、小さな丸い膿の袋がある
根の先に残った、小さな膿の袋

根の治療は、歯の頭の側から根の中をきれいにする治療です。歯根端切除術は、届きにくい根の先を、歯ぐきの側から直接きれいにします。

根の先を3mmほど取り除き、根の中に細菌が戻らないよう先端を封じます。歯そのものは残るので、かぶせ物もそのまま使い続けられることが多いです。

当院で行う歯と、病院へ紹介する歯

  • 当院では、前歯から小臼歯(前から4・5番目の歯)を中心に行います
  • 奥歯(大臼歯)は根が多く、位置も深いため、提携する病院へ紹介することがあります
  • 根の先が神経や上あごの空洞(上顎洞)に近い歯も、病院での手術をおすすめすることがあります

歯根端切除術は保険診療です。金額は歯の位置や本数などで変わるため、検査のあとにお伝えします。

②どんなときに選ぶか
根の治療のやり直し・抜歯との比べ方

まずは根の治療のやり直しを考えます。
やり直しが難しい歯や、やり直しても治らない歯で、歯を残す方法として選びます。

相談室で、歯科医師がモニターのレントゲンの根の先の影をペンで示し、40代の女性に説明している
レントゲンを見ながら、ほかの方法と比べて決めます

根の先の膿には、まず根の治療のやり直しを考えます。根の中から細菌を減らすのが、基本の考え方だからです。

一方で、根の中からでは届かない、あるいは届かせるために歯を傷めてしまう場合があります。そのようなときに、歯根端切除術が歯を残す方法になります。

歯根端切除術を考えるとき

  • 根の治療をやり直しても、膿や腫れがくり返す
  • 太い土台(コア)や新しいかぶせ物を外すと、歯が割れたり薄くなったりするおそれがある
  • 根の中が石灰化してふさがっている、器具が折れて残っているなど、根の先まで届かない
  • 根の先に袋(歯根嚢胞)があり、取り除いて調べたい

根の先の膿が治らないときの、3つの選択肢

どんな方法か向いている歯知っておきたいこと
根の治療のやり直し歯の頭の側から、根の中をもう一度きれいにするかぶせ物を外しても歯が傷みにくい歯かぶせ物を作り直すことが多い。長い目で見ると、よく治るという報告があります[3]
歯根端切除術歯ぐきの側から、根の先を取り除いて封じるやり直しが難しい歯、やり直しても治らない歯小さな手術で、数日は腫れや痛みが出ます。かぶせ物はそのまま使えることが多い
抜歯歯を抜いて、ブリッジ・入れ歯・インプラントなどで補う割れている歯、支える骨が少ない歯原因を取り除けます。そのあと、歯を補う治療を別に行います
一般的な整理です。どれが合うかは、歯の割れ・支える骨の量・かぶせ物の状態を検査して、一緒に決めます。

根の治療のやり直しと手術を比べたまとめでは、2〜4年では手術が77.8%、やり直しが70.9%でした。4〜6年ではやり直しが83.0%、手術が71.8%と逆になりました [3]。

どちらにも長所があるため、歯の状態に合わせて選ぶことが大切です。歯にひびや割れがある場合は、どちらの方法でも治りにくいことがわかっています [6]。

③手術の流れと、手術のあと

局所麻酔で行い、その日のうちにお帰りいただけます。
腫れは1〜2日目が山で、抜糸は1週間ほどが目安です。

前歯の断面の模型。歯ぐきを開いて、根の先を少し切り取り、膿の袋を取ったあと、切り口を白い材料でふさいでいる
根の先を少し切り取り、切り口をふさぎます

手術は局所麻酔で行い、入院はいりません。手術の前に、レントゲンで根の先の形と広がりを確かめます。

歯根端切除術の流れ

  1. 検査と相談(手術とは別の日)レントゲンで根の先の膿の大きさと位置を確かめ、方法と見通しをご説明します。
  2. 麻酔十分に効いたことを確かめてから始めます。
  3. 歯ぐきを開く根の先がある場所の歯ぐきを切って、骨の上まで開きます。
  4. 根の先と膿の袋を取り除く根の先を3mmほど取り、まわりの膿の袋もきれいにします。取った組織は、必要に応じて検査に出します。
  5. 根の先を封じる根の中に細菌が戻らないよう、先端に詰め物をします。
  6. 縫って終わり歯ぐきを元に戻して縫います。1本ならおおむね1時間前後が目安です。
  7. 1週間ほどで抜糸、その後はレントゲンで経過を見る骨はゆっくり戻るため、数か月から1年ほどかけて確かめます。
一般的な目安です。時間や手順は、歯の位置や根の先の膿の大きさで変わります。

手術のあとの腫れと痛み

自宅のソファで、40代の女性が冷たいタオルを口元に当てて休んでいる
手術の日は、家でゆっくり

痛みは手術の当日から翌日がいちばん強く、腫れは1〜2日目が山です [7]。その後は日ごとに落ち着き、1週間ほどで引いていくことが多いです。

強い痛みが出た方は、翌日でも約6人に1人(17.3%)で、日を追うごとに減りました [8]。痛み止めは、痛みが強くなる前に飲むとよく効きます。

手術の日の過ごし方

  • 冷やすのは、軽く濡らしたタオルを当てる程度にし、冷やしすぎないようにします。
  • 薬は指示どおり痛み止めは、切れる前に次を飲むとよく効きます。
  • やわらかい食事麻酔が切れてから、手術していない側で噛みます。
  • 唇を引っぱって傷を見る縫った糸がゆるみやすくなります。
  • 強いうがい・歯ブラシを傷に当てる手術した場所は、抜糸まではそっとしておきます。
  • 飲酒・喫煙・激しい運動・長風呂当日はお休みすると、出血と腫れを抑えられます。
一般的な注意です。翌日以降のことは、傷の様子を見て担当の歯科医師がお伝えします。

起こりうること

  • 頬や唇の腫れ、皮膚に出る青あざ(内出血)。多くは1〜2週間で消えます
  • 前歯では、歯ぐきの縁が少し下がり、かぶせ物との境目が見えることがあります
  • 下の歯で根の先が神経に近いと、唇やあごにしびれが出ることがあります。このような歯は、病院へ紹介することがあります
  • 経過がよくない場合も、もう一度の手術や抜歯など、次の方法を一緒に考えます

④結果の見通し
研究で報告されている成功率

いまの方法で行う手術は、1年後に約9割が成功と報告されています。
長い経過でも、多くの歯が治った状態を保っています。

研究での「成功」は、症状がなく、レントゲンで根の先の影が治ったことを指します。いまの方法では、1年後に89.0%が成功しました [2]。

歯根端切除術が成功した割合(研究のまとめ)

いまの方法と、以前の方法(21研究のまとめ)

以前の方法59%

2〜13年の長い経過(10研究のまとめ)

ランダム化試験91.3%
前向き研究78.4%
論文の数字で、当院の成績ではありません。上は21研究のまとめ[1]、下は2〜13年の経過を見た10研究のまとめ[4]です。研究によって対象の歯や「成功」の判定のしかたが違うため、数字には幅があります。

方法が改良され、成功率は大きく上がりました [1]。1〜2年目に治っていた歯は、5〜9年後も48本中45本が治った状態を保っていました [5]。

歯が残っている割合は、5〜9年で95.2%でした [5]。抜くことになった32本のうち20本は、手術とは関係のない理由でした [5]。

結果を左右すること

  • 歯にひびや割れがあると、治りにくくなります [6]
  • 根の先の封じ方の確かさ [6]
  • 歯を支える骨や歯ぐきが、しっかり残っているか [6]
  • 喫煙は、治りに影響します [4]

結果には個人差があります。手術のあとも、定期的にレントゲンで経過を確かめます。

参考文献(8件)
  1. Setzer FC, Shah SB, Kohli MR, Karabucak B, Kim S. Outcome of endodontic surgery: a meta-analysis of the literature--part 1: Comparison of traditional root-end surgery and endodontic microsurgery. J Endod. 2010;36(11):1757-65.(21研究のまとめ。以前の方法 59%、いまの方法〔顕微鏡を使う手術〕94%)PMID: 20951283
  2. Tsesis I, Rosen E, Taschieri S, Telishevsky Strauss Y, Ceresoli V, Del Fabbro M. Outcomes of surgical endodontic treatment performed by a modern technique: an updated meta-analysis of the literature. J Endod. 2013;39(3):332-9.(いまの方法で1年後の成功 89.0%)PMID: 23402503
  3. Torabinejad M, Corr R, Handysides R, Shabahang S. Outcomes of nonsurgical retreatment and endodontic surgery: a systematic review. J Endod. 2009;35(7):930-7.(2〜4年:手術 77.8%・やり直し 70.9%、4〜6年:手術 71.8%・やり直し 83.0%)PMID: 19567310
  4. Pinto D, Marques A, Pereira JF, Palma PJ, Santos JM. Long-Term Prognosis of Endodontic Microsurgery-A Systematic Review and Meta-Analysis. Medicina (Kaunas). 2020;56(9):447.(10研究、2〜13年。ランダム化試験 91.3%、前向き研究 78.4%。喫煙・歯の種類などが予後に影響)PMID: 32899437
  5. Huang S, Chen NN, Yu VSH, Lim HA, Lui JN. Long-term Success and Survival of Endodontic Microsurgery. J Endod. 2020;46(2):149-157.e4.(5〜9年。治癒 78.3%、歯の生存 95.2%、1〜2年目に治癒の歯は48本中45本が維持。抜歯32本のうち手術の失敗は6本)PMID: 31879031
  6. Ng YL, Gulabivala K. Factors that influence the outcomes of surgical endodontic treatment. Int Endod J. 2023;56 Suppl 2:116-139.(予後因子:根の先の封鎖の質、骨の状態、歯の割れ・ひび、修復の状態)PMID: 36710526
  7. García B, Larrazabal C, Peñarrocha M, Peñarrocha M. Pain and swelling in periapical surgery. A literature update. Med Oral Patol Oral Cir Bucal. 2008;13(11):E726-9.(痛みは術後24時間以内、腫れは1〜2日目が最大)PMID: 18978715
  8. Malagise CJ, Khalighinejad N, Patel YT, et al. Severe Pain after Endodontic Surgery: An Analysis of Incidence and Risk Factors. J Endod. 2021;47(3):409-414.(173人。強い痛みは1日目 17.3%で、その後減少)PMID: 33359530
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