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麻酔の痛みを減らす工夫

「麻酔が一番痛かった」という声もよく伺います。どの痛みを、どの工夫で減らせるのか、研究でわかっている範囲とあわせてお伝えします。

①麻酔の痛みは、2種類ある

針を刺す「チクッ」と、薬が入る「押される」感じです。
工夫はそれぞれ別です。

麻酔の痛みを減らす3つの工夫のアイコン:塗る麻酔の綿棒、細い針、電動の注射器
刺す痛みと、押される痛みに分けて工夫します

痛みの種類と、それぞれの工夫

  • 刺す痛み → 塗る麻酔(表面麻酔)針を刺す場所の粘膜に、ゼリー状の麻酔を塗って感覚を鈍らせます。
  • 刺す痛み → 細い針針が細いほど、粘膜に入るときの刺激が小さくなります。
  • 押される痛み → 電動注射器一定のゆっくりした速さで薬を入れ、組織が急に押し広げられるのを防ぎます。
  • 押される痛み → pHの調整酸性の麻酔薬を中性に近づけると、しみる感じと効き始めが変わるとされます。
研究の報告 [1][2][4][7] をもとに整理。効き方には個人差があり、痛みをすべてなくせるわけではないため、いくつかの工夫を組み合わせて小さくします。

感じ方には個人差があり、緊張や、以前に強く痛んだ経験でも強く感じやすくなります。不安なことは、始める前にお聞かせください。

②塗る麻酔(表面麻酔)

針を刺す「チクッ」を和らげます。

診療台のそばで、歯科衛生士が小さな綿棒を手に、患者さんに声をかけている
刺す前に、塗る麻酔を

22の試験の分析では、表面麻酔は上あごで刺す痛みを減らしていました [1]。

  • 下あごでは、はっきりした差は出なかった [1]
  • 薬が入るときの痛みは、電動注射器などの工夫で補う(表面麻酔では差が出なかった) [1]
  • 塗って1分ほど置くと、刺す痛みが減る報告 [3]

表面麻酔は「チクッ」の対策として、ほかの工夫と組み合わせます。

③細い針

細い針ほど刺す痛みは小さい一方、下あごの奥では太めの針のほうが効く結果もあります。

白い面に並んだ2本の針。細い針と、少し太い針が同じ長さで置かれている
細ければ良い、ではなく、場所で使い分けます

針の太さは「ゲージ」で表し、数字が大きいほど細くなります。

研究では

  • 31ゲージは27ゲージより痛みが少なかった(根の中に打つ麻酔) [2]
  • 下あごの奥の麻酔では、27ゲージのほうがよく効き、痛みも少なかった [5]

打つ場所で使い分けるのが実際で、奥歯の深い麻酔では太めの針を選ぶことがあります。

④ゆっくり入れる電動注射器

薬を一定の速さで入れ、従来の注射より痛みが少ないと報告されています。

ペン型の歯科用電動注射器。充電スタンドに立てた1本と、手前に寝かせた1本
一定のゆっくりした速さで薬を入れます

薬を急に入れると、組織が押し広げられて痛みます。電動注射器は一定のゆっくりした速さで入れます。

20の試験・973人の分析では、0〜100の痛みの点数が従来より約9点低い結果でした [6]。

  • 痛みが少し和らぐ程度で、ゼロにはならない [6]
  • 脈拍や血圧には差がなかった [6]
  • 不安が減るかは、まだ結果がそろっていない [6]

表面麻酔・細い針と組み合わせて、痛みをできるだけ小さくします。痛むときは、いつでもお知らせください。

⑤そのほかの工夫と、静脈鎮静という選択肢

pHを調整した麻酔薬は、効き始めが早まる報告があります。
不安が強い方には静脈鎮静もあります(自費)。

明るい診療室で、点滴をつけた患者さんが目を閉じてリラックスし、専門の医師がモニターを見守り、歯科医師が準備をしている
点滴でうとうとした状態で受ける、静脈鎮静法

pHを調整した麻酔薬

麻酔薬は酸性で、しみる原因の一つとされます。中性に近づけた薬では、下あごで効き始めが約1分早い結果でした(刺す痛みの差ははっきりしません) [8]。

レーザー

診療室に置かれた歯科用レーザーの機器
歯科用レーザーの機器

弱いレーザーを当てることで、針を刺す痛みが和らぐという分析もあります [10]。
まだ研究が少ない段階のため、当院では麻酔と組み合わせ、より楽に受けていただく工夫のひとつとして考えています。

静脈鎮静法(注記)

不安や嘔吐反射がとても強い方には、点滴でうとうとした状態にする静脈鎮静法があります。
自費診療で、専門の医師と日程を合わせる必要があります。
詳しくは静脈鎮静法についてをご覧ください。

⑥麻酔はいつ切れる? 何時間後に食べてよい?

しびれは2〜3時間ほど残ることが多く、食事はしびれが取れてからにすると安心です。

成人では、下唇のしびれが戻るまで約170分でした [11]。

  • 唇や頬のしびれは、歯の感覚より長く残る [11]
  • 打つ場所・量・薬で長さは変わり、人によって前後する

しびれている間に気をつけること

  • 食事はしびれが取れてから。唇や頬・舌を噛むことがある [11][12]
  • 熱い飲み物は冷ましてからにすると安心(やけどに気づきにくいため)
  • お子さんが唇を噛んだり触ったりしないよう見守る [12]

詰め物によっては、固まるまで硬いものを避けると長持ちにつながります。治療のあとにお伝えします。

参考文献(12件)
  1. Maia FPA, Araujo Lemos CA, de Souza Andrade ES, et al. Does the use of topical anesthetics reduce the perception of pain during needle puncture and anesthetic infiltration? Systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Int J Oral Maxillofac Surg. 2021;51(3):412-425.PMID: 34391592
  2. Suresh N, Koteeswaran V, Natanasabapathy V, Kasabwala K, Kowsky D. Needle Gauge Influences Pain Perception During Intrapulpal Anaesthesia - A Randomized Clinical Trial. Eur Endod J. 2020;5(3):191-198.PMID: 33353913
  3. Hindocha N, Manhem F, Bäckryd E, Bågesund M. Ice versus lidocaine 5% gel for topical anaesthesia of oral mucosa - a randomized cross-over study. BMC Anesthesiol. 2019;19(1):227.PMID: 31842771
  4. Sneharaj N, Sharma A, Siddaiah MK, Subramaniam P. Pain perception in 4-6-year-old children following intraoral dental injection with 26 and 31-gauge needles: a randomized controlled trial. J Dent Anesth Pain Med. 2024;24(2):101-108.PMID: 38584757
  5. Al-Moraissi EA, Al-Selwi AM, Al-Zendani EA. Do length and gauge of dental needle affect success in performing an inferior alveolar nerve block during extraction of adult mandibular molars? A prospective, randomized observer-blind, clinical trial. Clin Oral Investig. 2021;25(8):4887-4893.PMID: 33469717
  6. Libonati A, Nardi R, Gallusi G, et al. Pain and anxiety associated with Computer-Controlled Local Anaesthesia: systematic review and meta-analysis of cross-over studies. Eur J Paediatr Dent. 2018;19(4):324-332.PMID: 30567452
  7. Shirani M, Looha MA, Emami M. Comparison of injection pain levels using conventional and computer-controlled local anesthetic delivery systems in pediatric dentistry: A systematic review and meta-analysis. J Dent. 2025;157:105770.PMID: 40254248
  8. Aulestia-Viera PV, Braga MM, Borsatti MA. The effect of adjusting the pH of local anaesthetics in dentistry: a systematic review and meta-analysis. Int Endod J. 2018;51(8):862-876.PMID: 29377171
  9. Tirupathi SP, Rajasekhar S. Buffered versus unbuffered local anesthesia for inferior alveolar nerve block injections in children: a systematic review. J Dent Anesth Pain Med. 2020;20(5):271-279.PMID: 33195805
  10. Nascimento MFDS, Almeida JES, Gomes MCM, et al. Preemptive photobiomodulation therapy for reducing pain during local anesthetic needle puncture in dental and craniomaxillofacial procedures: a systematic review and meta-analysis of randomized clinical trials. J Dent. 2026;173:106823.PMID: 42259468
  11. Michaud PL, Flood B, Brillant MS. Reversing the effects of 2% Lidocaine: A randomized controlled clinical trial. J Dent. 2018;72:76-79.(成人36人・下あごの伝達麻酔〔2%リドカイン・1:100,000アドレナリン 1.8ml〕。対照群でしびれが戻るまで 下唇170分・舌134分。歯の感覚より唇・頬のしびれが数時間長く続くと記載)PMID: 29571953
  12. Tavares M, Goodson JM, Studen-Pavlovich D, et al. Reversal of soft-tissue local anesthesia with phentolamine mesylate in pediatric patients. J Am Dent Assoc. 2008;139(8):1095-104.(4〜11歳152人。対照群で唇の感覚が戻るまでの中央値135分。治療後の唇・舌のかみ傷に触れている)PMID: 18682624
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