①「30歳を過ぎると歯周病」は本当か
「30歳を過ぎると歯周病で歯を失う」は、昔からある思い込みです。
実際には、何歳でも、歯を失ういちばんの原因はむし歯です。
むし歯歯周病大規模な調査でわかったこと
- 歯科医療をほとんど受けられない地域でも、主因はむし歯
- 歯周病による抜歯は、むし歯よりはるかに少なかった
- 医療が行き届いた国でも、むし歯とその続発症が主因
抜歯の理由の研究のまとめでは、むし歯が36〜55%、歯周病が25〜38%でした [1]。研究の数字です。
大人の歯を抜いた理由(研究のまとめ)
むし歯36.0〜55.3%
歯周病24.8〜38.1%
根の先の病気(神経の感染が進んだもの)7.3〜19.1%
けが0.8〜4.4%
0%60%
3つの研究・4,396本の抜歯で、理由ごとの割合の幅
②修復サイクル
治した歯が、また悪くなる
辺縁の新しいむし歯と再治療が重なると、歯は少しずつ減ります。
この流れには、途中で止める手立てがあります。

詰め物やかぶせ物の辺縁には、また新しいむし歯(二次う蝕)ができることがあります。
再治療のたびに少し大きく削り、最後は神経の治療や抜歯に至ります。これを修復サイクルと呼びます。
再治療の繰り返し(修復サイクル)
- 小さなむし歯を削って詰めるここからが、歯を長く守るスタートです。
- 詰め物の辺縁に、またむし歯辺縁は汚れが残りやすく、二次う蝕ができやすい場所です。
- 前より大きく削り直す再治療の70%で、詰め物の面は前より増えていました [2]。
- 神経の治療(根管治療)むし歯が神経に達すると、神経を取り、かぶせ物にします。
- 歯が破折する・根の先が化膿する神経を取った歯は破折しやすく、再治療を繰り返すことがあります。
- 抜歯残せなくなった歯を抜き、入れ歯・ブリッジ・インプラントへ。
「一回削るごとに、歯の寿命は縮む」
再治療の判断1,337件を調べた研究では、70%で詰め物が前より大きくなっていました [2]。
だから治療では、削る量をできるだけ少なくして、次の治療を遠ざけることを大切にしています。
③詰め物はどのくらいもつのか
詰め物にも寿命があります。
主な原因は、辺縁のむし歯と破折です。

奥歯の樹脂の詰め物は、研究のまとめで年1〜3%が失われていました [3]。
再治療する理由の1位は「辺縁のむし歯」
9,805個の再治療の理由では、どの材料でも二次う蝕が1位、次が破折でした [5]。
詰め物は「治った印」ではなく、手入れが要る場所の印です。
しみる・ひっかかる・黒ずむ前に確かめる価値があります。
④では、何が歯を守るのか
削る回数と量を減らすこと、治したあとにメンテナンスを継続することが大切です。
主役はご自身で、私たちはそれを支えます。

削る回数と量を減らす
- 初期のむし歯(C0)は、削らずに様子を見られることがある
- 削るときは、極細のバーと拡大した視野で健康な部分を残す
- 神経を残せる場合がある(MTAセメント)。歯の状態による
治したあとに通う
むし歯のコントロールの主体は患者さんご自身で、医院は支える側です。
参考文献(5件)
- Broers DLM, Dubois L, de Lange J, Su N, de Jongh A. Reasons for Tooth Removal in Adults: A Systematic Review. Int Dent J. 2022;72(1):52-57.PMID: 33648772
- Brantley CF, Bader JD, Shugars DA, Nesbit SP. Does the cycle of rerestoration lead to larger restorations? J Am Dent Assoc. 1995;126(10):1407-13.PMID: 7594013
- Demarco FF, Corrêa MB, Cenci MS, Moraes RR, Opdam NJ. Longevity of posterior composite restorations: not only a matter of materials. Dent Mater. 2012;28(1):87-101.PMID: 22192253
- Opdam NJ, van de Sande FH, Bronkhorst E, et al. Longevity of posterior composite restorations: a systematic review and meta-analysis. J Dent Res. 2014;93(10):943-9.PMID: 25048250
- Mjör IA, Moorhead JE, Dahl JE. Reasons for replacement of restorations in permanent teeth in general dental practice. Int Dent J. 2000;50(6):361-6.PMID: 11197194

