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矯正のリスクと、あごの骨の手術を伴う矯正

矯正は体の反応を利用して歯を動かす治療です。よいことだけでなく、起こりうることと、その備えも先にお伝えします。

①矯正のデメリットと、起こりうること

歯の根が短くなる、歯ぐきが下がる、ホワイトスポットができるなどが起こりえます。
多くは軽度で、確かめながら進めます。

相談室で、女性の矯正歯科医が装置のついた歯の模型を手に、30代の女性に穏やかに説明している
起こりうることを、先にお伝えします

矯正は、骨が溶けて作り直される体の反応を利用する治療です。だからこそ、起こりうることを先にお伝えし、予防と早めの対応で備えます。

主なものを先に並べます

  • 歯の根が短くなる(歯根吸収)
  • 装置のまわりにホワイトスポット(初期むし歯)ができる
  • 歯ぐきが下がる、歯を支える骨が減る
  • 外すとき、エナメル質に細かな傷がつく
  • 金属アレルギー(多くはニッケル)
  • 治療後の後戻り

起きやすさが、はっきりしているもの・していないもの

研究で確かめられていること

  • 前歯の根は、多くの人でわずかに短くなる
  • 治療中に新しくホワイトスポットができるのは、約3人に1人
  • アレルギーの報告の多くはニッケルによる

関連が示されていないこと

  • 矯正をしたことと、顎関節症
研究の数字です。

割合や程度は、歯並び・年齢・動かす量・毎日のお手入れで変わります。

②歯の根が短くなること(歯根吸収)

出っ歯の治療後、前歯の66〜98%に何らかの根の吸収がみられます。
多くは4mm未満の軽いものです。

正常な長さの根と、先が少し短くなった根の断面の比較
多くは軽い、根の短縮

8つの研究のまとめでは、出っ歯の治療後、前歯の65.6〜98.1%に何らかの吸収がみられました。

治療後に、前歯の根に何らかの吸収があった割合(研究のまとめ)

前歯(8研究の幅)65.6〜98.1%
0%100%

研究ごとの最小〜最大

出っ歯を手術なしで治療した場合の研究の数字です。

多くは軽く、気づかない程度です

ほとんどは4mm未満、根の3分の1未満でした。この程度で、ふだん歯がぐらつくことはまれとされています。

  • 期間が長いほど増える傾向
  • 前歯の根を大きく動かすほど増える傾向
  • 男女差はみられなかった

確かめながら進めます

治療前と治療中の節目に、レントゲンで根の状態を確かめます。変化が大きいときは、力を弱める・少し休ませるなどで調整します。

③歯ぐき・骨・歯の表面のこと

ホワイトスポットは、毎日のケアと定期的なクリーニングで防ぎます。
歯ぐきが下がることや、外すときの細かな傷も起こりえます。

診療室で、矯正歯科医が壁の画面のレントゲン画像を指さしながら患者さんに説明している
レントゲンで、根と骨を確かめます

ホワイトスポット(初期むし歯)

57の研究のまとめでは、治療中に新しくホワイトスポットができた人は約3人に1人(34.2%)でした。裏を返せば、多くの方は作らずに治療を終えています。

治療期間が長いほど増え、マウスピース型は固定式より少ないと報告されています。毎日のケアで、できるだけ防ぎます。

歯ぐきが下がる(歯肉退縮)・骨が減る

歯を支える骨の高さがわずかに下がったり、歯ぐきが下がって根が見えたりすることがあります。歯周病があると起きやすいため、先に歯周病の治療をしてから始めます。

歯の表面と、金属アレルギー

  • 外すとき、接着剤を取る際にエナメル質に細かな傷がつくことがある
  • アレルギーの多くはニッケルによる。皮膚科での検査が先で、金属を使わない装置もある

歯みがきと食事の工夫は「矯正中の歯みがきと予防」で詳しくご紹介しています。ホワイトスポットは元に戻りにくいため、予防がいちばんの備えです。

④顎関節症との関係

矯正と顎関節症に、関連は示されていません。
ただし研究の確実性は低く、言い切れる段階ではありません。

横顔の輪郭の中の、あごの関節の位置を示す図
顎関節症との関連は、示されていません

5つの研究・6,971人のまとめでは、矯正をしたことと顎関節症に関連はみられませんでした。

ただし、研究の確実性は「非常に低い」とされています。治療中にあごの音や痛みが出たら、遠慮なくお伝えください。

成人で噛み合わせの面の傾きを大きく変えると、筋肉とあごの釣り合いに合わなくなるおそれがあるという見解もあります。データで確かめられたものではありません。

⑤受け口・出っ歯の手術を伴う矯正(外科矯正)

あごの骨のずれが大きい場合は、手術を伴う矯正が適していることがあります。
当院では、まず手術を伴わない方法で整えられないかを一緒に考えます。

相談室で、矯正歯科医が病院への紹介状の封筒を患者さんに渡している
手術が必要な方は、病院へご紹介します

受け口や出っ歯の原因があごの骨の位置にあると、歯を動かすだけでは整いきらないことがあります。その場合は、あごの骨を動かす手術と矯正を組み合わせる方法(外科矯正)があります。

まず、手術を伴わない方法から考えます

当院では、できるだけ外科矯正を行わずに済む矯正治療を心がけています。歯の動かし方や始めどきを工夫して、手術を伴わずに整えられないかを、まず一緒に考えます。

ただ、骨格のずれが大きい場合は、手術を伴う方法が適していることもあります。検査の結果をもとに、それぞれの見通しを率直にお伝えします。

手術が必要な場合は、
大学病院へご紹介します

手術が必要と判断した場合は、基本的に提携する大学病院の口腔外科へご紹介し、連携して進めます。紹介先や手順は、ご相談のときにご説明します。

いつ受けられるか

あごの成長が止まってからが望ましく、目安は高校卒業のころです。成長が残っていると、手術のあとに噛み合わせが変わることがあるためです。

手術のあとは口の中の広さが変わり、歯並びが広がった例も報告されています。術後も保定と経過の確認を続けます。

参考文献(7件)
  1. 中島榮一郎『歯列矯正 これなら安心』講談社 健康ライブラリー。5章(歯が動く仕組み p.205-206、歯槽骨・歯ぐき・エナメル質 p.132, 169-170、歯みがき p.154)、外科矯正 p.189-190、金属アレルギー p.202
  2. Tieu LD, Saltaji H, Normando D, Flores-Mir C. Radiologically determined orthodontically induced external apical root resorption in incisors after non-surgical orthodontic treatment of class II division 1 malocclusion: a systematic review. Prog Orthod. 2014;15:48.PMID: 25139200
  3. Hussain U, Wahab A, Kamran MA, et al. Prevalence, Incidence and Risk Factors of White Spot Lesions Associated With Orthodontic Treatment - A Systematic Review and Meta-Analysis. Orthod Craniofac Res. 2025;28(2):379-399.PMID: 39717964
  4. Raghavan S, Abu Alhaija ES, Duggal MS, Narasimhan S, Al-Maweri SA. White spot lesions, plaque accumulation and salivary caries-associated bacteria in clear aligners compared to fixed orthodontic treatment. A systematic review and meta-analysis. BMC Oral Health. 2023;23(1):599.PMID: 37635207
  5. Lang X, Guo G, He Z. Correlation between temporomandibular disorders and the history of orthodontic treatment: A systematic review and meta-analysis. Medicine (Baltimore). 2026;105(27):e49626.PMID: 42410842
  6. Amato A, Martina S, De Benedetto G, Michelotti A, Amato M, Di Spirito F. Hypersensitivity in Orthodontics: A Systematic Review of Oral and Extra-Oral Reactions. J Clin Med. 2025;14(13):4766.PMID: 40649141
  7. 三谷英夫『矯正治療のためのアトラス ── 咬合と顎顔面頭蓋のバイオメカニクス』p.21(手術後に舌圧で歯列が広がった例)、p.69(筋と肩こりの推論)、p.99(成人の咬合平面)。著者自身が「データではなく生体構造からの推論」と明記
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後戻りと保定

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