押上ファースト歯科03-5819-4825予約・相談
冬の窓辺で、湯のみを手に微笑み合う夫婦

後戻りと保定装置

装置を外した日は、ゴールではなく折り返しです。どのくらい戻るのか、どう防ぐのかを数字でお伝えします。

①装置を外したあと、歯は戻ろうとします

装置を外して治療は8〜9割。
残りは保定の時間で、戻る力は外して3〜4か月が最も大きいとされます。

歯の模型につけた4種類の保定装置。左からピンクの床とワイヤーの取り外し式、歯列をワイヤーで囲む取り外し式、透明なマウスピース型、下の前歯の裏に細いワイヤーを貼る固定式ホーレー型ラップアラウンド型クリア型固定式
保定装置(リテーナー)には、いくつかの種類があります

残りの1〜2割が、保定装置(リテーナー)の期間です。

骨や歯ぐきの線維が、まだ新しい位置になじんでいないためです。

装置を外してから、戻ろうとする力

0か月装置を外す。その日に保定装置を入れる
3〜4か月戻ろうとする力が最も大きい
2〜3年上あごの保定装置の一般的な目安
終了成長の終わりと親知らずの状態を確認して決める
一般的な目安であり、歯並びと年齢で変わります。

戻りやすいのは、どんなとき

  • 保定装置の時間が足りない、途中でやめた
  • 舌を前に出す癖が残っている
  • 大きく広げた歯列、口元が出た横顔

②なぜ戻るのか
頬・唇と舌の釣り合い

歯並びは、頬・唇と舌の圧力が釣り合う場所に収まります。
筋が慣れるまで、保定装置で支えます。

歯1本の断面を中心に、外側の唇・頬と内側の舌が釣り合っている様子
頬・唇と舌の釣り合う場所に、歯は収まります

歯列は外側を頬と唇、内側を舌が支え、圧力の釣り合う場所に収まるとされます。

釣り合いを超えて動かした歯列は安定しにくく、保定装置は筋が慣れるまでの時間を稼ぎます。

  • 歯の頭の位置は筋に、根の位置はあごの骨に左右される
  • 舌を前に出す癖が続くと、前歯の開きが戻りやすい
  • この説明は構造からの推論と、著者自身が明記

③どのくらいの人が戻るのか
6年で約21%

474人を6年追った研究では21.3%が後戻り。
1年目に終日つけた人は、大きく減っていました。

朝の洗面所で、高校生の女の子が小さなケースを手にしている横顔
保定装置は、決めた時間つけ続けます

100人のうち、6年後に後戻りがあった人

後戻りがあった21人

安定していた79人

後戻りがあった安定していた

研究の数字であり、当院の成績ではありません。

何が後戻りを減らしたか

  • 1年目に終日つけた人は、大きく下がった(オッズ比0.07)
  • 夜だけでも下がった(0.32)
  • 合計2年以上でも下がった(0.35)
  • 歯を抜いた治療は少ない傾向(0.44)

戻りやすい傾向があった人

  • 口元が前に出た横顔
  • あごが下に長く成長する型(ハイアングル)

安定を左右した最大の要因は、保定装置をつけたかどうかでした。

④固定式と取り外し式
違いは小さい

固定式と取り外し式があります。
安定の差は1mm未満で、どちらが優れるかは結論が出ていません。

左は下の前歯の裏側に細いワイヤーを貼りつけた固定式の保定装置、右は透明な取り外し式の保定装置とケース固定式取り外し式
外して終わりではなく、保定が続きます
上の前歯の裏側に、細いワイヤーを貼りつけた固定式の保定装置を下から見た口の中の写真
固定式の保定装置(前歯の裏側の細いワイヤー)

コクランのレビュー(47試験)では、安定の差は1mm未満で小さいとされました。確実性は低〜非常に低いです。

固定式と取り外し式の特徴

固定式(歯の裏に細いワイヤーを接着)
  • つけ忘れが無い
  • 下あごでは、最初の6か月と4年時点で安定しやすい
  • 汚れ(歯垢)や歯石がつきやすく、歯石取りが大切
  • 外れても気づきにくいため、通院で確かめる
取り外し式(マウスピース型・床型)
  • 外して歯みがきができ、歯ぐきの状態が良い
  • 違和感を訴える人が多い
  • つける時間を守れるかで結果が変わる
  • 上あごでは固定式と同等
優劣ではなく、特徴の違いです。

下の前歯は固定式のほうが安定し、上では同等とするレビューもあります。

歯並び・年齢・生活に合わせて選び、組み合わせることもあります。

⑤リテーナーはいつまでつけるか

上あごは2〜3年が一般的な目安です。
終える時期に一律の答えは無く、成長の終わりと親知らずの状態を確認し決めます。

相談室で、矯正歯科医が高校生の女の子と、保定をいつまで続けるかを話している
終える時期は、一人ひとり決めます

保定装置は上下とも、一般に2〜3年が目安とされます。

成長が止まり、親知らずの状態を確認できた時期が、終える目安になります。

成長期に終えた方は、あごの成長が続く間は保定を続けることが多くなります。

保定の期間にすること

  • 決められた時間、毎日つける(特に1年目)
  • 1〜3か月に一度の確認の通院
  • むし歯と歯周病のチェックとメンテナンス
  • 舌とあごのトレーニングを続ける

壊れた・合わなくなった・何日かつけ忘れたときは、そのままにせず早めにご連絡ください。

参考文献(6件)
  1. 中島榮一郎『歯列矯正 これなら安心』講談社 健康ライブラリー 7章 p.164-171:装置を外すことは治療の80〜90%、戻ろうとする力は外して3〜4か月が最大、上顎のリテーナーは2〜3年、保定の終了時期に一律の答えは無い、保定中の通院と習慣
  2. 三谷英夫『矯正治療のためのアトラス ── 咬合と顎顔面頭蓋のバイオメカニクス』p.17-22:歯列は頬筋・口輪筋と舌の圧力の均衡域に位置する、均衡域を超えた歯列は安定しない、歯冠は筋・歯根は骨に支配される、舌の癖(著者自身が生体構造からの推論と明記)
  3. Zhang X, Wang A, Zhang X, et al. Analysis of predictive factors for post-orthodontic stability: a retrospective cohort study. BMC Oral Health. 2026;26(1). doi:10.1186/s12903-026-08204-xPMID: 41904477
  4. Martin C, Littlewood SJ, Millett DT, et al. Retention procedures for stabilising tooth position after treatment with orthodontic braces. Cochrane Database Syst Rev. 2023;5(5):CD002283. doi:10.1002/14651858.CD002283.pub5PMID: 37219527
  5. Bellini-Pereira SA, Aliaga-Del Castillo A, Dos Santos CCO, Henriques JFC, Janson G, Normando D. Treatment stability with bonded versus vacuum-formed retainers: a systematic review of randomized clinical trials. Eur J Orthod. 2022;44(2):187-196. doi:10.1093/ejo/cjab073PMID: 34719722
  6. Basim A, Naoumova J, Leffler K, Johansson K, Persson M, Al-Taai N. Digital analysis of age-related dentoalveolar changes: a 50-year longitudinal study. Prog Orthod. 2026;27(1). doi:10.1186/s40510-026-00643-0PMID: 42726424
矯正歯科のページに戻る⑥ 外して終わりではない
後戻りと保定

あわせて読む