①ワイヤー矯正の仕組み
バンド・ブラケット・ワイヤー
歯につけた小さな装置にワイヤーを通し、その力で歯を動かします。

歯に小さな装置(ブラケット)をつけ、通したワイヤーの力で動かします。一番奥の歯には、輪の金具(バンド)を使うことがあります。
歯が動く仕組み
押された側の骨が吸収され、引かれた側に新しい骨ができる。この繰り返しで、歯はゆっくり移動します。
だから、健康な歯ぐきと骨が前提です。歯周病がある方は、先にその治療をします。
ワイヤー矯正の3つの部品
- バンド一番奥の歯に巻く輪の形の金具。ワイヤーの支えになります。
- ブラケット一本一本の歯につける小さな装置。金属製と、白・透明のものがあります。
- ワイヤーブラケットの溝に通す針金。これが歯を動かす力の源です。
- ゴム・小さなネジ(補助)上下の歯にかけるゴムや、骨に打つ小さなネジを支えにすることがあります。
治療中はワイヤーを替えていく

細くやわらかいワイヤーから、太いものへ替えていきます。通院のたびに調整するのはこのためです。
②表側の装置
白い装置と「速い装置」
金属も白いブラケットも、働きは同じです。
「期間が短くなる装置」は、研究では差が示されていません。
金属か、白い装置か


金属製と、白や透明のセラミック・プラスチック製があります。働きは同じで、見え方と丈夫さが違います。
- 金属:丈夫で、汚れが見つけやすい
- 白・透明:目立ちにくいが、丈夫さは金属に譲る
「セルフライゲーション」で期間は短くなるか
ワイヤーを自分で留める「セルフライゲーション」は、「期間が短い」「痛みが少ない」と宣伝されることがあります。
しかし研究のまとめでは、痛み・通院回数・期間とも、ふつうの装置と差がありませんでした。
「期間短縮」とは言い切れません
根拠が示せないため、この記事では「期間短縮」とは言い切りません。
歯型から作るカスタム装置(インシグニア)

歯型から、一人ひとりの歯に合わせてブラケットを作る方法です。費用は料金表でご確認いただけます。
期間が約4か月短いとする分析と、差が無いとするまとめがあり、結果は一致していません。
③裏側(舌側)の矯正
見えにくさと、話しにくさ
正面からは見えにくい装置です。
慣れるまでは、話しにくさや舌の痛みが出やすくなります。


歯の裏側につけるので、正面からは見えにくいのが特長です。
話しにくさと、舌の痛み
8研究の分析では、表側に比べて話しにくさが約9倍で、舌の痛みや歯みがきの難しさも多い結果でした。
慣れてきても、話しにくさは続きやすいとされます。
表側と裏側の違い
- 正面から装置が見える
- 話しにくさは少ない
- 歯みがきは裏側より楽
- 正面からは見えにくい
- 話しにくさが約9倍、舌が痛みやすい
- 歯みがきが難しい
裏側は歯みがきに時間がかかります。磨き方は「矯正中の歯みがきと予防」をご覧ください。
④子どもの時期だけ使える装置
あごを広げる装置などは、成長の力を使う装置で、大人には使えません。

成長が残る子どもには、あごの形や位置に働きかける装置があります。
- あごを広げる装置:上あごのつなぎ目を広げ、並ぶ場所をつくる
- フェイシャルマスク:上あごが小さい受け口に。8〜9歳より前に効果が大きい
- 取り外し式の装置(床装置):使った時間だけ効く
効果が残りやすいもの、戻りやすいもの
上あごのつなぎ目は15歳前後で骨になり、それ以降は広げられません。子どものうちに広げた効果は残りやすいとされます。
下あごの成長を押さえる装置は、やめると戻りやすいとされます。
合う装置は、歯並びと年齢で変わります。
Q&A
参考文献(8件)
- 中島榮一郎『歯列矯正 これなら安心』講談社 健康ライブラリー 5章「治療の実際」。固定式装置(バンド・ブラケット・ワイヤー)、白いブラケットと金属の働きは同じ、歯列弓拡大装置(3か月で骨が埋まる)、床装置、フェイシャルマスク、ヘッドギア、顎間ゴム、歯が動く仕組み
- Ata-Ali F, Ata-Ali J, Ferrer-Molina M, Cobo T, De Carlos F, Cobo J. Adverse effects of lingual and buccal orthodontic techniques: A systematic review and meta-analysis. Am J Orthod Dentofacial Orthop. 2016;149(6):820-9.PMID: 27241992
- Johal A, Dunne B, Bolooki H, Sandler C. Oral Health-Related Quality of Life (OHRQoL), Pain and Side Effects in Adults Undergoing Different Orthodontic Treatment Modalities: A Systematic Review and Meta-Analysis. Healthcare (Basel). 2025;13(24):3317.PMID: 41464384
- Čelar A, Schedlberger M, Dörfler P, Bertl M. Systematic review on self-ligating vs. conventional brackets: initial pain, number of visits, treatment time. J Orofac Orthop. 2013;74(1):40-51.PMID: 23299650
- Maizeray R, Wagner D, Lefebvre F, Lévy-Bénichou H, Bolender Y. Is there any difference between conventional, passive and active self-ligating brackets? A systematic review and network meta-analysis. Int Orthod. 2021;19(4):523-538.PMID: 34629309
- Bardideh E, Kerayechian N, Ghorbani M, Younessian F, Shafaee H. The efficacy and effectiveness of customized CAD/CAM brackets in fixed orthodontic treatment: a systematic review and meta-analysis. Eur J Orthod. 2024;47(1):cjae075.PMID: 39868686
- Yassir YA, Sofar MK, McIntyre GT, Bearn DR. Clinical effectiveness of customized versus noncustomized orthodontic appliances: A systematic review. J Orthod Sci. 2024;13:26.PMID: 39450227
- 三谷英夫『矯正治療のためのアトラス ── 咬合と顎顔面頭蓋のバイオメカニクス』9章。急速拡大は15歳前後で縫合が骨になると使えず効果は維持される/チンキャップは中止後に戻る(一卵性双生児1組の観察)。著者自身が「推論」と明記

