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ワイヤー矯正(表側・裏側)と装置の種類

ワイヤー矯正には、表側・裏側・子ども用など、いくつもの種類があります。それぞれに向くことと向かないことを、研究の数字とともにお伝えします。

①ワイヤー矯正の仕組み
バンド・ブラケット・ワイヤー

歯につけた小さな装置にワイヤーを通し、その力で歯を動かします。

ワイヤー矯正の3つの部品:奥歯に巻くバンド、歯の表面につけるブラケット、それらを通るワイヤー
バンド・ブラケット・ワイヤー

歯に小さな装置(ブラケット)をつけ、通したワイヤーの力で動かします。一番奥の歯には、輪の金具(バンド)を使うことがあります。

歯が動く仕組み

押された側の骨が吸収され、引かれた側に新しい骨ができる。この繰り返しで、歯はゆっくり移動します。

だから、健康な歯ぐきと骨が前提です。歯周病がある方は、先にその治療をします。

ワイヤー矯正の3つの部品

  1. バンド一番奥の歯に巻く輪の形の金具。ワイヤーの支えになります。
  2. ブラケット一本一本の歯につける小さな装置。金属製と、白・透明のものがあります。
  3. ワイヤーブラケットの溝に通す針金。これが歯を動かす力の源です。
  4. ゴム・小さなネジ(補助)上下の歯にかけるゴムや、骨に打つ小さなネジを支えにすることがあります。

治療中はワイヤーを替えていく

奥歯の歯ぐきに打った小さなネジ(アンカースクリュー)と、そこからワイヤーにかけた装置。画像の中に「インプラント」の文字と矢印
骨に打つ小さなネジを、歯を動かす支えにする例

細くやわらかいワイヤーから、太いものへ替えていきます。通院のたびに調整するのはこのためです。

②表側の装置
白い装置と「速い装置」

金属も白いブラケットも、働きは同じです。
「期間が短くなる装置」は、研究では差が示されていません。

金属か、白い装置か

歯の模型につけた金属のブラケットとワイヤー
金属の装置
歯の模型につけた透明(白)のブラケット
白い装置(透明のブラケット)

金属製と、白や透明のセラミック・プラスチック製があります。働きは同じで、見え方と丈夫さが違います。

  • 金属:丈夫で、汚れが見つけやすい
  • 白・透明:目立ちにくいが、丈夫さは金属に譲る

「セルフライゲーション」で期間は短くなるか

ワイヤーを自分で留める「セルフライゲーション」は、「期間が短い」「痛みが少ない」と宣伝されることがあります。

しかし研究のまとめでは、痛み・通院回数・期間とも、ふつうの装置と差がありませんでした。

「期間短縮」とは言い切れません

根拠が示せないため、この記事では「期間短縮」とは言い切りません。

歯型から作るカスタム装置(インシグニア)

コンピューターで設計した、上下の歯の列のブラケットとワイヤーの立体の図
歯型から設計するカスタム装置の画面

歯型から、一人ひとりの歯に合わせてブラケットを作る方法です。費用は料金表でご確認いただけます。

期間が約4か月短いとする分析と、差が無いとするまとめがあり、結果は一致していません。

③裏側(舌側)の矯正
見えにくさと、話しにくさ

正面からは見えにくい装置です。
慣れるまでは、話しにくさや舌の痛みが出やすくなります。

上の歯の列を下から見た口の中の写真。すべての歯の裏側にブラケットがつき、細いワイヤーでつながっている
上の歯の裏側の装置
下の歯の列を上から見た口の中の写真。すべての歯の裏側にブラケットがつき、細いワイヤーでつながっている
下の歯の裏側の装置

歯の裏側につけるので、正面からは見えにくいのが特長です。

話しにくさと、舌の痛み

8研究の分析では、表側に比べて話しにくさが約9倍で、舌の痛みや歯みがきの難しさも多い結果でした。

慣れてきても、話しにくさは続きやすいとされます。

表側と裏側の違い

表側
  • 正面から装置が見える
  • 話しにくさは少ない
  • 歯みがきは裏側より楽
裏側
  • 正面からは見えにくい
  • 話しにくさが約9倍、舌が痛みやすい
  • 歯みがきが難しい
優劣ではなく、何を優先するかで選びます。慣れ方には個人差があります。

裏側は歯みがきに時間がかかります。磨き方は「矯正中の歯みがきと予防」をご覧ください。

④子どもの時期だけ使える装置

あごを広げる装置などは、成長の力を使う装置で、大人には使えません。

子どもの時期だけ使える3つの装置のアイコン:あごを広げる装置、ヘッドギア、フェイシャルマスク
成長の力を使う装置

成長が残る子どもには、あごの形や位置に働きかける装置があります。

  • あごを広げる装置:上あごのつなぎ目を広げ、並ぶ場所をつくる
  • フェイシャルマスク:上あごが小さい受け口に。8〜9歳より前に効果が大きい
  • 取り外し式の装置(床装置):使った時間だけ効く

効果が残りやすいもの、戻りやすいもの

上あごのつなぎ目は15歳前後で骨になり、それ以降は広げられません。子どものうちに広げた効果は残りやすいとされます。

下あごの成長を押さえる装置は、やめると戻りやすいとされます。

合う装置は、歯並びと年齢で変わります。

参考文献(8件)
  1. 中島榮一郎『歯列矯正 これなら安心』講談社 健康ライブラリー 5章「治療の実際」。固定式装置(バンド・ブラケット・ワイヤー)、白いブラケットと金属の働きは同じ、歯列弓拡大装置(3か月で骨が埋まる)、床装置、フェイシャルマスク、ヘッドギア、顎間ゴム、歯が動く仕組み
  2. Ata-Ali F, Ata-Ali J, Ferrer-Molina M, Cobo T, De Carlos F, Cobo J. Adverse effects of lingual and buccal orthodontic techniques: A systematic review and meta-analysis. Am J Orthod Dentofacial Orthop. 2016;149(6):820-9.PMID: 27241992
  3. Johal A, Dunne B, Bolooki H, Sandler C. Oral Health-Related Quality of Life (OHRQoL), Pain and Side Effects in Adults Undergoing Different Orthodontic Treatment Modalities: A Systematic Review and Meta-Analysis. Healthcare (Basel). 2025;13(24):3317.PMID: 41464384
  4. Čelar A, Schedlberger M, Dörfler P, Bertl M. Systematic review on self-ligating vs. conventional brackets: initial pain, number of visits, treatment time. J Orofac Orthop. 2013;74(1):40-51.PMID: 23299650
  5. Maizeray R, Wagner D, Lefebvre F, Lévy-Bénichou H, Bolender Y. Is there any difference between conventional, passive and active self-ligating brackets? A systematic review and network meta-analysis. Int Orthod. 2021;19(4):523-538.PMID: 34629309
  6. Bardideh E, Kerayechian N, Ghorbani M, Younessian F, Shafaee H. The efficacy and effectiveness of customized CAD/CAM brackets in fixed orthodontic treatment: a systematic review and meta-analysis. Eur J Orthod. 2024;47(1):cjae075.PMID: 39868686
  7. Yassir YA, Sofar MK, McIntyre GT, Bearn DR. Clinical effectiveness of customized versus noncustomized orthodontic appliances: A systematic review. J Orthod Sci. 2024;13:26.PMID: 39450227
  8. 三谷英夫『矯正治療のためのアトラス ── 咬合と顎顔面頭蓋のバイオメカニクス』9章。急速拡大は15歳前後で縫合が骨になると使えず効果は維持される/チンキャップは中止後に戻る(一卵性双生児1組の観察)。著者自身が「推論」と明記
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