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歯を抜く矯正と抜かない矯正

「できれば抜きたくない」は自然なお気持ちです。検査で歯とあごの大きさを測り、抜く場合と抜かない場合の予測を両方お見せしてから、一緒に決めます。

①抜くかどうかは、検査で決めます

歯とあごの大きさの差と横顔のバランスを、検査で測ります。
ご希望と両方の予測をもとに、一緒に決めます。

矯正歯科医が手袋をした手で、上あごの歯の模型の歯の幅を小さなノギスで測っている。奥のモニターには横顔のレントゲン
検査で測ってから決めます

場所が足りないとき、抜いて場所をつくるか、抜かずに歯列を広げるかを選びます。決め手は検査の数字です。

検査で測ること

  • 歯の大きさとあごの大きさの差(どれだけ足りないか)
  • 横顔のバランス(Eラインと唇の位置)
  • あごの成長が残っているか(子ども)

差が大きいほど、抜かずに並べるには大きく広げる必要があり、その量には限りがあります。

両方の予測をお見せします

抜く場合と抜かない場合の歯並びと口元の予測を、両方お見せしてから決めます。

口元の見え方や期間の違いが具体的にわかります。結果は数週間後に、方針・期間・費用と一緒にご説明します。

抜くかどうかを決めるまで

  1. 相談気になるところと、「抜きたくない」などのご希望をうかがいます。
  2. 精密検査歯型、レントゲン(セファロ・パノラマ)、顔とお口の写真を記録します。
  3. 数字で確かめる歯の並ぶ場所がどれだけ足りないか、横顔のバランスはどうかを測ります。
  4. 両方の予測を見る抜いた場合と抜かない場合の歯並びと口元の予測を、並べてお見せします。
  5. ご本人・ご家族と決めるそれぞれの利点と限界を聞いたうえで、ご本人が決めます。
順番や内容は、お口の状態と年齢で変わります。

②抜かずに済む場合と、抜いたほうがよい場合

不足が小さければ抜かずに並べられます。
大きいのに無理に並べると口元が出て戻りやすいため、抜く方法をご提案します。

矯正歯科医が手袋をした手で、下あごの歯の模型を2つ持ち、歯の並ぶ場所の広さを比べている
抜くかどうかは、歯とあごの大きさで決まります

抜かずに並べられる歯並び

子どものうちにあごを広げると、抜歯になる率が下がる可能性があると書籍にあります。効果はお子さんごとに違います。

大人では、歯を動かせる範囲が限られます。

無理に抜かずに並べると、どうなるか

足りないまま並べると、口元が前に出ることがあります。広げすぎた歯列は、唇と舌の釣り合う場所へ戻ろうとします。

474人を6年追った研究では、歯を抜いた治療のほうが後戻りが少ない傾向でした。

抜く矯正と抜かない矯正、それぞれの特徴

歯を抜かない矯正
  • 健康な歯をすべて残せる
  • 場所の不足が小さい歯並びに向く
  • 不足が大きいと、口元が前に出ることがある
  • 広げすぎた歯列は後戻りしやすい
歯を抜く矯正
  • 場所の不足が大きい歯並びに向く
  • 前歯と口元を引っ込めやすい
  • 後戻りが少ない傾向(研究の数字)
  • 抜いたすき間を閉じる分、歯を大きく動かす
優劣ではなく、歯並びによる向き不向きです。

マウスピース矯正で抜く場合

抜く矯正では、ワイヤーのほうが動きを制御しやすいとするレビューがあります。

  • 抜かない軽度〜中等度の歯並び:マウスピースとワイヤーの仕上がりに差なし
  • 抜く歯並び:ワイヤーのほうが歯の動きを制御しやすい

③親知らずを抜けば、前歯のでこぼこは防げるか

防げるとは示されていません。
抜いた群と残した群で、歯列の変化に差はありませんでした。

モニターに映したパノラマレントゲン。下あごの奥の親知らずを、歯科医師がペンで示している
親知らずを抜いても、前歯のでこぼこは防げません

「親知らずが前歯を押す」とよく言われますが、コクランのレビューでは、抜いた群と残した群で歯列の変化に差は無いとされました。

  • 対象は1つの試験・77人で、研究の質は高くない
  • 予防のために抜くべきかは、結論が出ていない
  • 後戻りには、親知らずより保定装置をつけたかが関わる

親知らずは歯並びのためではなく、その歯自体の状態(腫れ・痛み・隣の歯への影響)で決めるのが現在の考え方です。

親知らずの判断は、口腔外科の記事もご覧ください。

参考文献(7件)
  1. 中島榮一郎『歯列矯正 これなら安心』講談社 健康ライブラリー 4〜5章:抜歯の判断基準(歯とあごの大きさの差、横顔のEライン)、抜いた場合と抜かない場合の両方の予測を見せること(p.124, 130-133)
  2. 東京バイオプログレッシブ・スタディ・クラブ編『矯正に強くなる本』クインテッセンス出版 1982 p.87:早期にあごの幅を広げると抜歯症例になる率が減る可能性(VTOで非抜歯の可能性がある場合)
  3. 佐本博「アライナー矯正の事始めよ」Dental Diamond 2022年1月号:ワイヤー矯正とアライナー矯正の歯の動きの得意・不得意(表1:大臼歯の遠心移動はアライナーが得意)
  4. 三谷英夫『矯正治療のためのアトラス ── 咬合と顎顔面頭蓋のバイオメカニクス』p.17-21:歯列は頬・唇と舌の圧力の均衡域に位置し、それを超えて広げた歯列は治療後に安定しない(著者自身が生体構造からの推論と明記)
  5. Zhang X, Wang A, Zhang X, et al. Analysis of predictive factors for post-orthodontic stability: a retrospective cohort study. BMC Oral Health. 2026;26(1). doi:10.1186/s12903-026-08204-xPMID: 41904477
  6. Alhafi ZM, Hajeer MY, Alam MK, Jaber ST. Quality and stability of orthodontic treatment outcomes with clear aligners versus fixed appliances: a systematic review and meta-analysis. Eur J Orthod. 2025;47(6):cjaf091. doi:10.1093/ejo/cjaf091PMID: 41127933
  7. Ghaeminia H, Nienhuijs ME, Toedtling V, et al. Surgical removal versus retention for the management of asymptomatic disease-free impacted wisdom teeth. Cochrane Database Syst Rev. 2020;5(5):CD003879. doi:10.1002/14651858.CD003879.pub5PMID: 32368796
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