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むし歯の菌は、親からうつる

生まれたときの赤ちゃんのお口に、むし歯の菌はいません。いつ、どうやってうつるのかを知って、ご家族で上手に遅らせましょう。

①むし歯の菌は、どこから来るのか

生まれたときのお口に、むし歯の菌はいません。
お世話をする人の唾液からうつり、歯が生えると住みつきます。

食卓で、父親と幼い女の子がそれぞれ自分のスプーンを持って向かい合っている
スプーンは、それぞれのものを

むし歯の主な原因菌はミュータンス菌です。生まれたばかりの赤ちゃんのお口には、この菌はいません [1]。

菌は、お世話をする人の唾液を通して少しずつうつります。

うつる道筋

  • 同じスプーンや箸で食べさせる
  • 噛んで与える、口移しをする
  • おしゃぶりや哺乳びんの乳首を、大人がなめる
  • 口へのキス

菌はいずれうつるものなので、完璧を目指さなくて大丈夫です。目標は遅らせること・少なくすることです [1]。

②いつうつる? うつりやすい時期は1歳半〜2歳半ごろ

菌が住みつきやすいのは、歯が生えそろっていく1歳半〜2歳半ごろ(生後19〜31か月)です。
2歳まで遅らせると、その後の予防が楽になります。

朝の明るい洗面所で、父親と母親と2歳の子が、それぞれ自分の歯ブラシを持って鏡の前で笑っている
家族みんなで磨くことが、いちばんの予防に

菌は、歯が生えそろっていく時期に住みつきやすくなります。この時期を感染の窓と呼びます [2]。

46組の母子を5歳まで追った研究では、菌が初めて見つかったのは生後19〜31か月に集中し、中央値は26か月でした [2]。

その後の研究では、歯が生える前後や1歳前に菌が見つかる子もいて、時期には幅があることも分かってきました [6][7]。早めにご家族でケアを始めておくと安心です。

むし歯の菌が住みつきやすい時期

0か月生まれたとき。お口に菌はいない [1]
6か月前歯が生え始める
12か月1歳前に見つかる子もいる [7]
19か月感染の窓が開く [2]
26か月初めて検出された年齢の中央値(米国の研究)[2]
31か月感染の窓が閉じる [2]
3歳乳歯が生えそろう頃
出典:Caufield ら 1993、母子46組の追跡 [2]、Alkhars ら 2021 [7]。個人差が大きく、この時期の前後にうつることもあります。

なぜ「2歳まで」なのか

定着を2歳まで遅らせると、その後の予防がぐっと楽になります [1]。早く、たくさんうつった子ほど、むし歯になりやすい傾向があるためです [3]。

すでにうつったかもしれない、と心配な方へ。それはごく普通のことなので、安心してください。磨き方・おやつの回数・フッ素で、むし歯の予防はこれからも続けられます。

③親の菌を減らすと、子の定着が減るという研究

出産後にお母さんがキシリトールガムを噛み続けると、2歳での子への定着が減ったという研究があります。

大人の横顔から子どもの横顔へ流れる細菌の粒が、上段では多く、下段では少ない図
親の菌を減らすと、子へうつる量も減る

妊娠期から親のお口を整え、菌がうつるのを遅らせる考え方をPPP(一次の一次予防)と呼びます [1]。

フィンランドで、唾液中のミュータンス菌が多いお母さん169人を3つのグループに分けた研究があります [3]。

2歳の時点で、子どもにミュータンス菌が検出された割合

お母さんがキシリトールガムを噛んだ(産後3か月から21か月間、1日2〜3回以上)

お母さんにクロルヘキシジンを塗った(6か月ごと)

検出された子28.6%

お母さんにフッ素を塗った(6か月ごと)

検出された子48.5%
出典:Söderling ら 2000、母子169組の無作為化試験 [3]。子ども自身はガムも塗布も受けていません。研究の数字で、当院の成績ではありません。フッ素塗布の群は「6か月に1回だけ」という条件で、フッ素の効果を否定するものではありません。

キシリトールの群では、2歳での定着が9.7%でした [3]。差は6歳まで残り、5歳でのむし歯は約70%少なかったと報告されています [4][5]。

この研究を読むときのポイント

  • 25年前の、ひとつの地域での研究(追試は多くない)
  • 対象は「菌が多いお母さん」。少ない方での効果は、まだわかっていない
  • お母さん自身の菌の量は変わらなかった [3]
  • ガムを1日2〜3回以上、21か月間続けることが前提

④家庭でできること

お世話をする人のお口を整える、食器に少し気をつける、甘いものの回数を減らす。
どれも、できる範囲で大丈夫です。

家庭でできる3つの工夫のアイコン:大人の歯ブラシ、2本の別々のスプーン、小さな時計とおやつ
お世話をする人のお口から、整える

菌を「遅らせる・少なくする」ための工夫

  • お世話をする人のむし歯を治し、歯石を取るお母さんだけでなく、お父さん、祖父母も。菌が多い人からほどうつりやすくなります [1]。
  • お世話をする人がキシリトールを使う研究では1日2〜3回以上、長く続けることが前提でした [3]。製品の選び方は受診時にご説明します。
  • 取り分け用のスプーンを使う噛み与えや口移しは控え、同じスプーンの使い回しもできる範囲で。神経質になりすぎなくて大丈夫です。
  • 甘い飲み物・おやつは、回数を決める砂糖が少ないと、菌は定着しにくくなります。量より回数を減らすほうが効果的です。
  • スキンシップは、これまでどおりたっぷりとほっぺへのキスや抱っこで菌はうつりません。触れ合いを減らす必要はありません。
すべてを完璧に行う必要はありません。できることを、できる範囲で。すでにうつっている子にも、磨き方・回数・フッ素で予防は続けられます。

いちばん大切なのは、菌の入口であるお世話をする人のお口です。ご家族で歯科に通うことが、お子さんへの最初の予防になります [1]。

参考文献(7件)
  1. 仲井(永原)幸恵「妊娠1000日」日本歯科新聞 第362号(2026年2月10日)。PPP(Axelsson 1988)、MS菌の定着を2歳まで遅らせるとその後のう蝕予防が楽になること、妊娠期からの母親の口腔環境の改善
  2. Caufield PW, Cutter GR, Dasanayake AP. Initial acquisition of mutans streptococci by infants: evidence for a discrete window of infectivity. J Dent Res. 1993;72(1):37-45.PMID: 8418105
  3. Söderling E, Isokangas P, Pienihäkkinen K, Tenovuo J. Influence of maternal xylitol consumption on acquisition of mutans streptococci by infants. J Dent Res. 2000;79(3):882-7.PMID: 10765964
  4. Söderling E, Isokangas P, Pienihäkkinen K, Tenovuo J, Alanen P. Influence of maternal xylitol consumption on mother-child transmission of mutans streptococci: 6-year follow-up. Caries Res. 2001;35(3):173-7.PMID: 11385196
  5. Isokangas P, Söderling E, Pienihäkkinen K, Alanen P. Occurrence of dental decay in children after maternal consumption of xylitol chewing gum, a follow-up from 0 to 5 years of age. J Dent Res. 2000;79(11):1885-9.PMID: 11145360
  6. Berkowitz RJ. Acquisition and transmission of mutans streptococci. J Calif Dent Assoc. 2003;31(2):135-8.PMID: 12636317
  7. Alkhars N, Zeng Y, Alomeir N, et al. Oral Candida Predicts Streptococcus mutans Emergence in Underserved US Infants. J Dent Res. 2022;101(1):54-62.PMID: 34018817
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