①子どもの歯並びが乱れる原因
鍵は「乳前歯の噛み合わせ」
0歳からの追跡調査では、癖よりも、乳前歯が生えた時点の噛み合わせが大切な手がかりになっていました。

歯並びの乱れ(不正咬合)は、頬杖や指しゃぶりなどあとからの癖で起きると考えられてきました。
熊本県の歯科医院が0歳から子どもを追った調査では、上下の乳前歯が生えた時点で、噛み合わせの型がほぼ決まっていました [1]。
どのくらいの子に歯並びの乱れがあるか
同じ医院の調査では、中学生の5人に4人に、歯の重なり・深い噛み合わせ・受け口などが見られました [1]。めずらしいことではないので、気になったら気軽にご相談ください。
歯並びの乱れは、どのくらい多いか(ひとつの医院の調査)
80歳で20本以上の歯を残した方は、8割以上が正常咬合か叢生でした [1]。整った噛み合わせは、歯を長く保つことと関わっている可能性があります。
②乳前歯が生えたときの噛み合わせが、その後を左右する
先どうしで合う「切端咬合」はその後も歯並びが整いやすく、深く噛み込む型は続きやすいという報告です。

上下の前歯が先どうしで合う状態を「切端咬合」といいます [1]。
切端咬合で生えた子は乳歯のあいだそれを保ち、永久歯が生える場所も確保されていました [1]。
深く噛み込む型は、早めに気づくと安心
生えた時点で上の前歯が下を深く覆う「過蓋咬合」の子は、その後も過蓋咬合が続いていました [1]。
乳前歯が生えたときの、2つの噛み合わせ
- 乳歯のあいだ、切端咬合が保たれる
- 永久歯が生えるスペースが確保されやすい
- 上あごが前へ成長しやすい
- その後も過蓋咬合が続きやすい
- 下あごを前に出して気道を確保する子が多い
- 反対咬合のように見えることがある
0歳で決まり始めるのは土台で、ここから育てていけます。すでに過蓋咬合と言われたお子さんにも、一緒にできることがあります(下の節へ)。
③深く噛み込む子は、息をしやすくするために下あごを前に出している
過蓋咬合の子は、気道を確保するため下あごを前に出し、受け口に見えることがあります。

過蓋咬合の子どもは、気道を確保するために下あごを前に出す位置をとっていると報告されています [1]。
受け口に見える子も、あごの位置を誘導すると実は過蓋咬合だった例が多かったとされます [1]。
あごの骨は、どちらも後ろ寄り
頭のレントゲン(セファロ)でも、上下のあごが後ろに下がる傾向が見られました [1]。呼吸とあごの成長がつながっている可能性があります。
- 口がぽかんと開いている、いびきをかく
- 前歯を使わず、丸飲みに近い
- 受け口に見えるが、日によって違う
こうした様子があれば、呼吸と口の使い方も一緒に拝見します。気軽にお声がけください。
④飲み方と、かじり方が土台をつくる
噛むように飲む哺乳と、前歯でかじる習慣が、上あごの成長につながると考えられています。

赤ちゃんは歯ぐきで噛むように母乳を飲みます。この「ラッチオン」が上あごの成長を促し、切端咬合へ導くと報告されています [1][2]。
母乳が出にくいご家庭でも、哺乳びんの選び方や抱き方で工夫できます。
生えてからは、前歯でかじる
前歯でかじる動きは、上あごの前方への成長を促すとされます [1]。
- 海苔で巻いたおにぎり
- 一口大に切らないおかず
- りんごなど、かじり取る食べ物
こうした工夫は、歯科での見守りと並行して進めます。気になる噛み合わせは、歯科で一緒に確かめましょう。
⑤指しゃぶりは、いつまで?
やさしくやめさせる方法
多くの子は自然に卒業していきます。
永久歯が生えるころまでにやめられると、歯並びへの影響を抑えやすいとされます。
指しゃぶりやおしゃぶりは、赤ちゃんが安心するための自然な行動です。続く期間が短いほど、歯並びへの影響は少ないとされます [3]。
やめるのを手伝う方法
ほめて励ます方法や口の中の装置で、やめられた子が多かったと報告されています。確かさはまだ低いとされます [4]。
- しかるより、しなかった時間をほめる
- 手持ちぶさたな時間に、手を使う遊びを
- 苦い液や手袋を使うなら、本人が納得してから
就学前になっても続くときや、前歯のあいだがあいてきたときは、一緒に方法を考えましょう。
Q&A
参考文献(4件)
- 藤原康生「0歳からの保育園調査で分かった過蓋咬合,反対咬合,叢生の原因」日本歯科医師会雑誌 Vol.77 No.12(2025年3月)。中学生の5人に4人に不正咬合、8020達成者70名の8割以上が正常咬合・叢生、乳前歯萌出時の咬合パターンの追跡、過蓋咬合と下顎前方位・セファロ分析、ラッチオン・前歯でかじる工夫
- 仲井(永原)幸恵「妊娠1000日」日本歯科新聞 第362号(2026年2月10日)。哺乳期の口腔育成、母乳育児の期間と不正咬合
- Doğramacı EJ, Rossi-Fedele G. Establishing the association between nonnutritive sucking behavior and malocclusions: A systematic review and meta-analysis. J Am Dent Assoc. 2016;147(12):926-934.e6.(15研究。期間が長いほど不正咬合の危険が高い。おしゃぶりは指しゃぶりより奥歯の交叉咬合が多い)PMID: 27692622
- Borrie FR, Bearn DR, Innes NP, Iheozor-Ejiofor Z. Interventions for the cessation of non-nutritive sucking habits in children. Cochrane Database Syst Rev. 2015;(3):CD008694.(6試験・252人。口の中の装置と、ほめる・励ますなどの方法に効果。証拠の質は低い)PMID: 25825863

