①お口に入る器具は、一人分ずつ
ミラーやピンセット、歯を削る道具まで、一人分ずつ袋に入れて滅菌します。
袋は患者さんの前で開けます。

歯科の器具は、唾液や血液に触れます。だから当院では、お口に入る器具を一人分ずつ滅菌パックに入れて滅菌し、次の方に使い回すことはしません。
袋のまま保管し、患者さんの前で開けます


洗浄した器具は袋に入れて滅菌し、袋のまま保管します。袋を開けるのは、診療の直前、患者さんの前です。滅菌した器具は袋のまま、乾いた清潔な場所で保管することが推奨されています[1][4]。
- 基本のセット(ミラー・ピンセット・探針など)は、一人分をまとめて袋に入れます
- 歯を削るバーは小さく種類も多いですが、これも一本ずつ袋に入れて滅菌します
- 歯を削るハンドピース(手に持つ切削器具)も、袋に入れて滅菌します
器具が患者さんの前に戻るまで
使った器具は、洗浄 → 滅菌パックに封入 → 高圧蒸気滅菌 → 袋のまま保管 → 患者さんの前で開封、という順に進みます。途中で袋を開けることはありません。
②滅菌の方法
高圧蒸気と、専用の滅菌器
袋に入れた器具は高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)にかけます。
ハンドピースは専用の滅菌器で、毎回滅菌します。
滅菌とは、熱や圧力で微生物を取り除く処理のことです。消毒(薬液で菌を減らすこと)とは区別して、当院では器具の種類ごとに方法を分けています。
高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)


袋に入れた器具は、高圧の蒸気で滅菌します。当院の滅菌器は、ヨーロッパの規格(EN13060)でクラスBに分類されるものです。滅菌の前と乾燥のときに真空の状態を何度も作り、袋に入れたままの器具や、中が空洞の器具にも蒸気を行き渡らせます。真空を作らない方式では、細い管のある器具の中まで蒸気が届かない例が報告されています[2]。
ハンドピース専用の滅菌器


歯を削るハンドピースは、内部に細い管が通っていて、ほかの器具と同じ扱いがしにくい道具です。当院ではハンドピース専用の滅菌器(クラスS相当)を使い、高圧蒸気で毎回滅菌してから次の方に使います[1]。クラスBやSの滅菌器なら袋のままでも滅菌できたと、国内のレビューで報告されています[3]。
酸化電位水と次亜塩素酸水

水を電気分解して作る酸化電位水(EO水)を院内に備え、器具や環境の消毒に使っています。アルコール消毒に加えて、次亜塩素酸水による消毒も行っています。電解水は幅広い微生物を減らすと系統的レビューで報告されていますが、研究の質にはばらつきがあります[7]。
器具の扱い方の分け方
| 扱い | 例 | |
|---|---|---|
| くり返し使うもの | 洗浄 → 一人分ずつ袋に入れて滅菌 | ミラー、ピンセット、バー、ハンドピース |
| 一度で捨てるもの | 患者さんごとに新しいものを使用 | 手袋、紙コップ、エプロン、注射針 |
③空気と水
口腔外バキューム、換気、診療台の水
削るときに飛び散る粉や水しぶきは、お口の外に置いた口腔外バキュームで吸い取ります。
あわせて定期的に換気します。

歯を削るときは、高速で回る器具を使います。削った歯や詰め物の粉、水しぶき、唾液がどうしても周りに飛び散ります。
口腔外バキューム

お口の中で吸い取る口腔内バキュームだけでは、飛び散るものをすべては受け止めきれません。そこで当院は、お口の外に大きな吸い込み口を置く口腔外バキュームを使い、飛び散る粉やしぶきを手前で吸い取ります。模型を使った国内の研究では、口腔内と口腔外のバキュームを合わせると飛び散りの約98%が減ったと報告されています(研究の数字です)[5]。
換気と、診療台の水
④使い捨てにしているもの
手袋、紙コップ、エプロン、マスクは患者さんごとに新しいものを。
注射針と麻酔の薬は一度使ったら捨てます。


滅菌してもくり返し使いにくいものは、使い捨てにしています。患者さんごとに新しいものを開け、使い終わったら捨てます。
- 治療用のゴム手袋、マスク
- 紙コップ、エプロン
- 注射針と麻酔の薬(カートリッジ)。少し残っていても、次の方には使いません
医療廃棄物の処理
使い終わった針や、血液に触れたものは医療廃棄物として分け、専門の業者に処理を委託しています。
⑤スタッフの手洗い・手袋・マスク
器具を滅菌しても、手が汚れていては意味がありません。
患者さんごとに手を洗い、手袋を替えて診療します。
感染対策の基本は、器具の処理だけではありません。手指の衛生と、手袋・マスクなどの防護具の着用を、スタッフ全員が日ごろから守っています。米国CDCのガイドラインでも、患者さんごとの手洗いと手袋の交換が基本とされています[1]。
- 患者さんごとに手を洗い、新しい手袋に替えます
- 診療中はマスクを着けます。必要に応じてゴーグルやフェイスシールドも使います
- ご来院のときは、入口で手指の消毒をお願いしています
器具の扱いや消毒について気になることがあれば、スタッフに遠慮なくお尋ねください。見学だけでも、どうぞ。
参考文献(9件)
- Kohn WG, Collins AS, Cleveland JL, et al. Guidelines for infection control in dental health-care settings--2003. MMWR Recomm Rep. 2003;52(RR-17):1-61.PMID: 14685139
- Winter S, Smith A, Lappin D, et al. Failure of non-vacuum steam sterilization processes for dental handpieces. J Hosp Infect. 2017;97(4):343-347.PMID: 28903057
- Sasaki JI, Imazato S. Autoclave sterilization of dental handpieces: A literature review. J Prosthodont Res. 2020;64(3):239-242.PMID: 31416709
- Brusca MI, Nastri N, Mosca CO, et al. Long-term sterility of orthodontic-surgical appliances. Acta Odontol Latinoam. 2004;17(1-2):23-27.PMID: 15584258
- Watanabe J, Iwamatsu-Kobayashi Y, Kikuchi K, et al. Visualization of droplets and aerosols in simulated dental treatments to clarify the effectiveness of oral suction devices. J Prosthodont Res. 2024;68(1):85-91.PMID: 36823102
- Cao R, Qiu P, Xu B, et al. Effectiveness of interventions to reduce aerosol generation in dental environments: A systematic review. Prev Med Rep. 2023;35:102383.PMID: 37680854
- Cárdenas AM, Campos-Bijit V, Di Francesco F, et al. Electrolyzed water for the microbiologic control in the pandemic dental setting: a systematic review. BMC Oral Health. 2022;22(1):579.PMID: 36494635
- Bayani M, Raisolvaezin K, Almasi-Hashiani A, Mirhoseini SH. Bacterial biofilm prevalence in dental unit waterlines: a systematic review and meta-analysis. BMC Oral Health. 2023;23(1):158.PMID: 36934281
- Wu M, Shi Z, Yu X, et al. Disinfection methods of dental unit waterlines contamination: a systematic review. J Med Microbiol. 2022;71(6):001540.PMID: 35670283

