歯科医院で名前や治療する歯を繰り返し確認され、
「さっきも伝えたのに」と感じたことはありませんか?
実は、そのひと手間には、患者さんの大切な歯と体を守る意味があります。
今回は、歯科の医療安全に関する専門誌の記事をもとに、
確認や対話がなぜ大切なのかをお伝えします。
「気をつける」を仕組みにする
歯科治療は、狭いお口の中で、小さな器具を使って行う繊細な医療です。
治療する歯の取り違えや、器具・被せ物の飲み込みなどを防ぐ配慮が欠かせません。
経験のある医療者でも、
思い込みや見落としを完全になくすことはできません。
だからこそ、注意力だけに頼らず、
カルテやエックス線写真を照合し、
スタッフ同士で確かめる仕組みが重要です。
一つの確認で見逃しても、次の確認で気づけるよう、複数の対策を重ねます。
名前と「今日治療する歯」を確かめる理由
お名前や生年月日を伺うのは、
ご本人と診療情報を正しく結びつけるためです。
また、歯は形が似ていて、左右や場所の認識が食い違うこともあります。
処置前に「今日はどの歯を、何のために治療するのか」を共有することが、
取り違えの予防につながります。
説明された場所が気になる歯と違う、
前回聞いた話と違うと感じたら、
遠慮なくお知らせください。
患者さんの気づきは、
医療者が再確認する大切なきっかけになります。
説明を聞いて、納得して選ぶ
治療前には、期待できる効果だけでなく、
起こりうる不利益や別の方法についても理解することが大切です。
説明を受け、理解したうえで治療に同意することを
「インフォームド・コンセント」といいます。
同意書への署名だけで終わるものではありません。
「なぜ必要ですか」
「ほかの方法はありますか」
「治療後に何に気をつけますか」と、
わからない点はその場で確かめてください。
質問することは迷惑ではなく、
ご自身の治療を考えるための大切な時間です。
お薬や体調の変化も、遠慮なく
安全な診療には、お口以外の情報も役立ちます。
受診時は、お薬手帳などを使い、
服用中のお薬や通院中の病気、アレルギー、
過去の治療で具合が悪くなった経験を伝えましょう。
前回から薬や体調が変わった場合も、
その都度お知らせください。
治療中のつらさや不安を伝える方法も、
始める前に相談しておくと安心です。
話しにくい内容はメモにして持参してもかまいません。
うまく説明できるか心配なときも、
まずは「気になることがある」とお伝えください。

お薬・体調の共有が、安心につながります。
小さな気づきを、次の安全へ
事故にならずに済んだ「ヒヤリとした出来事」も、
医療者が記録し、原因を振り返り、
スタッフで共有することが再発防止に役立ちます。
安全を守る責任は医療を提供する側にあり、
患者さんにミスを見つける責任を負わせるものではありません。
そのうえで、患者さんの疑問や違和感も受け止め、
確認に生かすことが大切です。
繰り返す確認と、遠慮のない対話。
その積み重ねが、安心して治療を受けるための土台になります。
参考資料
- 飯田征二.歯科における医療安全~human errorと医療安全の基本~.日本歯科医師会雑誌.2026;79(6):415–423.
- 世界保健機関(WHO).Patient safety(2023年9月11日)
- 世界保健機関(WHO).World Patient Safety Day 2023: Practical advice for stakeholders


