「歯ぎしりは、噛み合わせが悪いからでしょうか?」。
歯ぎしりや食いしばりが気になると、歯の並びを思い浮かべる方もいるでしょう。
今回は、ブラキシズムに関する2本の論文を手がかりに、
原因の考え方と歯を守る方法をお伝えします。
歯ぎしりには、起きている時と眠っている時がある
ブラキシズムとは、歯をこすり合わせたり、
食いしばったりする顎の筋肉の活動です。
歯を接触させずに顎へ力を入れる動きも含まれます。
起きている時の「覚醒時」と、
眠っている時の「睡眠時」に分けて考えます。
音がしない食いしばりもあるため、
ご家族から指摘されなくても、
気づかないうちに行っている場合があります。
原因は、噛み合わせだけでは説明できません
2001年と2008年の総説が示す大切な点は、
歯や顎の形だけでなく、
脳・神経の働きや睡眠の仕組みに目を向けることです。
睡眠中には、本人が気づかない短い覚醒反応が起こり、
その前後に心拍や呼吸、顎の筋肉の活動が変化します。
睡眠時ブラキシズムは、こうした反応と関連すると考えられています。
ストレスや不安のほか、飲酒、喫煙、一部の薬なども関連する要因です。
ただし、全員に同じ原因があるわけではなく、
「ストレスをなくせば必ず治る」とは言えません。
噛み合わせが原因だと決めつけ、
歯を削れば歯ぎしりが治ると考えるのも適切ではありません。
大切なのは、歯や顎への影響を調べること
その後の国際的な合意では、
健康な人にみられるブラキシズムを、
一律に病気とはみなさない考え方が示されています。
一方で、
歯のすり減りや欠け、
しみる症状、顎の痛み・疲れがある場合は
確認が必要です。症状の強さや、
お口に生じている変化に応じて対策を考えます。
歯ぎしりがあるというだけで、
すべての方に装置や治療が必要になるわけではありません。
歯のすり減りだけで、
現在の歯ぎしりの程度を断定することはできません。
歯科では、お口の状態に加え、
症状が出る時間帯やご家族の気づきなどを合わせて評価します。
受診前に「朝は顎がだるい」「作業中に力が入る」などをメモしておくと、
相談の手がかりになります。
日中は気づく工夫を、夜間は歯を守る相談を
日中の食いしばりには、
机などに目印を置き、
気づいたら上下の歯を離して顎の力を抜く工夫があります。
まずは仕事や家事の合間に、
お口の緊張を確かめてみましょう。
睡眠のリズムを整え、
飲酒やカフェインの摂り方を見直すことも、
生活面でできる対策です。

必要に応じて使うナイトガードは、
主に歯へのダメージを減らすための装置です。
とはいえ、装着すれば歯ぎしりそのものが必ずなくなる、
というものではありません。
適合や症状を歯科で確認しながら使うことが大切です。
装置を作った後も、歯や装置のすり減り、顎の状態を定期的に確認しましょう。
歯ぎしりを自分の意志の弱さと結びつける必要はありません。
気になる症状が続く時は、ご相談ください。
原因を一つに決めず、歯と顎の状態から必要な対応を考えていきましょう。
参考資料
- Lavigne GJほか:Bruxism physiology and pathology: an overview for clinicians(2008)
- Lobbezoo F, Naeije M:Bruxism is mainly regulated centrally, not peripherally(2001)
- Lobbezoo Fほか:International consensus on the assessment of bruxism: Report of a work in progress(2018)
- 米国国立歯科・頭蓋顔面研究所(NIDCR):Bruxism(2025年3月レビュー)
- NIDCR/Hosam Alraqiq:Ask The Expert: Bruxism (Tooth Grinding)(2025年3月レビュー)


