「歯ぐきの治療なのに、どうして血糖値を聞かれるの?」と不思議に思う方もいるでしょう。歯周病と糖尿病は、お口と体という場所の違いを越えて、互いに影響する関係にあります。そのつながりを知ることは、歯を守るだけでなく、安心して治療を続けるためにも役立ちます。
歯ぐきの炎症と血糖値はつながっています
歯周病は、歯垢の中の細菌によって歯ぐきなどに炎症が起こる病気です。進行すると歯を支える骨が失われます。一方、糖尿病で高血糖が続くと、感染に対抗する働きや傷を治す働きが低下し、歯周病が進みやすくなります。
逆に、歯周病による炎症に関わる物質は、血糖値を下げるホルモン「インスリン」の働きを妨げることがあります。お口の炎症を整えることが、血糖管理を支える理由はここにあります。ただし、歯ぐきから血が出るだけで糖尿病と決まるわけではありません。
歯周病を治せば、糖尿病も治る?
歯周病のある2型糖尿病の方では、歯周治療によって血糖管理の改善が期待できます。ただし、効果には個人差があり、歯科治療が食事・運動・薬による糖尿病治療の代わりになるわけではありません。自己判断で薬を減らしたり、中止したりしないでください。
検査結果で見かける「HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)」は、過去1〜2か月の平均的な血糖の状態を映す指標です。採血した瞬間の血糖値とは意味が異なります。歯科でも最近の検査結果を共有すると、体の状態を踏まえた治療の相談に役立ちます。
歯科へ持っていきたい3つの情報
受診時には、お薬手帳、最近の血糖値やHbA1cがわかる検査結果、糖尿病の主治医・通院先の情報を用意しましょう。「薬の名前が思い出せない」というときも、手帳があると正確に伝えられます。治療内容が変わったときは、その都度知らせてください。
また、低血糖を起こした経験や、食事を十分にとれない日があることも大切な情報です。抜歯などの後に食べにくくなる場合は、薬と食事をどうするか、あらかじめ主治医と歯科に相談しましょう。来院のために自己判断で食事を抜いたり、薬を変えたりせず、必要な指示を確認してください。
治療後の定期受診にも意味があります
歯周治療の基本は、毎日の歯みがきで歯垢を取り除くことと、歯科で歯石などを除去することです。歯ブラシが届きにくい場所や、自分に合う歯間の清掃方法も確認しましょう。口をすすぐだけで、歯垢を十分に落とすことはできません。
歯ぐきが落ち着いても、歯周病は再発することがあります。治療後の安定した状態を保つための継続的な管理が「SPT」です。単に歯をきれいにするだけでなく、出血や歯周ポケットの変化、磨き残しを確認し、必要なケアを続けます。受診間隔は、お口と血糖の状態に応じて歯科医師と相談して決めます。
歯みがきで出血する、歯ぐきが腫れる、歯が揺れるなどの変化があれば、次の定期受診を待たず相談してください。「いつから、どこが気になるか」を伝えると診察の助けになります。お口の情報と体の情報をつなぎ、毎日のケアと定期受診で、食べる楽しみを守っていきましょう。
参考資料
- 日本糖尿病学会:糖尿病診療ガイドライン2024 第16章 糖尿病と歯周病
- 糖尿病情報センター:歯周病と糖尿病の深い関係
- 厚生労働省 e-ヘルスネット:ヘモグロビンA1c / HbA1c
- 日本歯科医師会:歯医者さんに行く前に
- 日本歯周病学会:糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン2023 改訂第3版(CQ8)


